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キャベツ/秋まき春どり栽培(神奈川県の例)

【資料提供:平成16年3月、神奈川県環境農政部農業振興課】
1. 栽培品種
品種名 特性一覧 備考
早晩性 球重 球形 肉質 耐寒性 品質
金系201 早生 1.4kg 偏円球 品質に優れ、作期が長い。
金系201EX 極早生 1.4kg 偏円球 「金系201」より、そろいがよく一斉収穫に適する。
2. 栽培暦と施肥、病害虫防除時期(秋まき春どり、栽培様式 51cmx33cm、5900本/10a)
凡例 ◎:重点防除(省略できない)、○:通常防除(通常は実施。発生状況により省略可能)、
△:必要に応じて防除、←→:発生時期
3. 施肥の環境保全型農業への移行例化学肥料62%減) N 33.0→12.6kg
施肥期 慣行施肥
資材名
施用量
(kg)
成分量(kg)
環境保全型
代替資材名
施用量
(kg)
成分量(kg) 備考
N P2O5 K2O CaO MgO N P2O5 K2O CaO MgO
苗床 燐加安44号 2 0.3 0.3 0.3

鶏ふん堆肥 15 0.3 0.6 0.4

40m²分(苗7000本)
元肥 牛ふん堆肥 1,500 3.3 13.1 19.7 31.5 9.8 牛ふん堆肥 1,500 3.3 13.1 19.7 31.5 9.8 堆肥は完熟したものを使用する。

定植の1週間以上前に施肥して耕耘する。
三浦春別化成 90 13.5 13.5 9.0
4.5 鶏ふん堆肥 100 1.7 4.1 2.8 12.7 1.8
顆粒タイニー 100


34.0 15.0 なたね油粕 100 3.9 2.2 1.3 0.9 0.9
硫酸マグネシウム 40



10.0 ハイマグB重焼燐 20
7.0
2.8 2.0

硫酸マグネシウム 50



12.5
顆粒タイニー 60


20.4 9.0
小計

17.1 26.9 29.0 65.5 39.3

8.9 26.4 23.8 67.1 36.0
追肥@(生育初期) NK化成2号 40 6.4
6.4

NK化成808号 40 7.2
7.2

生育に応じて追肥期を調節する。
追肥A(生育中期) NK化成2号 40 6.4
6.4

NK化成808号 30 5.4
5.4

追肥B(生育後期) NK化成2号 40 6.4
6.4








合計

36.3 26.9 48.2 65.5 39.3

21.8 27.0 36.8 67.1 36.0
4. 防除の環境保全型農業への移行例農薬53%減) 15→7成分・回
時期 主な対象病害虫 慣行防除の
使用薬剤と濃度
環境保全型代替技術 備考
苗床 は種1ヶ月前 8月中旬〜9月上旬 根こぶ病 カスタード微粒剤 20〜30g/10a 太陽熱消毒 種子は普通農薬1成分で消毒されている。
カスタードは処理後に散水し、被覆する。
地温の上昇が足りない時は被覆期間を長くする。被覆処理前に散水する。7〜14日処理後、2〜3回耕耘してガス抜きを行う。
太陽熱消毒は育苗床をビニールで20日間以上密閉被覆し、播種直前にビニールをはぎ、そのまま播種する。ビニールは再利用でよい。地温の上昇が足りない時は被覆期間を長くする。被覆処理前に散水する。
は種後10月上中旬 べと病 ジマンダイセン水和剤 400〜600倍 ジマンダイセン水和剤 400〜600倍 コナガ対策としては、シルバータフベル、寒冷紗#300ル等のトンネル被服により、害虫の飛び込みを防ぐ。育苗床の周囲に防風ネットを張り、コナガコンを設置する方法もある。
苗床での病害虫防除は必ず行い、本畑に病害虫を持ち込まない。
コナガ アファーム乳剤 1000倍 被覆栽培
播種後 菌核病 ベンレート水和剤 2000倍 ベンレート水和剤 2000倍
コナガ、
アブラムシ
ランネート45水和剤 1000〜2000倍 被覆栽培
時期 主な対象病害虫 慣行防除の
使用薬剤と濃度
環境保全型代替技術 備考
本畑 定植前(耕耘時) 雑草 ゴーゴーサン細粒剤F 4〜5kg/10a こまめに土寄せを行う。 菌核病は予防散布(10〜11月)も重要。
病害虫発生予察情報に基づき、初期防除を行う。
害虫
天敵に影響の少ない薬剤の使用を心がけ、在来天敵の活用を図る(BT剤、脱皮阻害剤)。害虫は、発生状況を確認の上薬剤散布する。無理して散布する必要はない。
病気・ナメクジ
こまめに土寄せを行うことで雑草を防除し、通気を良くする。
12月中旬 菌核病 ロブラール水和剤 1000倍 ロブラール水和剤 1000倍
コナガ カスケード乳剤 2000〜4000倍 カスケード乳剤 2000〜4000倍
1月下旬 菌核病 ベンレート水和剤 2000倍 ベンレート水和剤 2000倍
ハスモンヨトウ、ハモグリバエ類 マトリックフロアブル 2000倍 スピノエース顆粒水和剤 2500〜5000倍
2月下旬 菌核病灰色かび病 ロブラール水和剤 1000倍 発生状況により省略できる。土寄せなどで風通しを良くする。
3月下旬 黒腐病 バリダシン液剤5 800倍 発生状況により省略できる。土寄せなどで風通しを良くする。
グリーンベイト 3〜4kg/10a 発生状況により省略できる。周囲の雑草や木の枝など整理し、日照・通風を確保する。
4月中旬 コナガ アファーム乳剤 1000〜2000倍 アファーム乳剤 1000〜2000倍
11月下旬〜 ヒヨドリ 防鳥網の設置(主にヒヨドリによる食害の防除) 防鳥網の設置(主にヒヨドリによる食害の防除)
5. 雑草対策
作業内容 効果 作業内容 備考
中耕・土寄せ 裸地植えの場合、定植後2〜3回実施 日常的に除草に心がけていれば、除草剤に頼らなくても良い。
耕耘・鍬込み 前作の収穫後にプラウ耕による鍬込み
凡例 ◎:効果が高い、○:比較的効果が高い、△:効果あるが不十分、X:効果なし
6. 経営的評価(10a当たりの物財費と投下労働時間の比較
項目 慣行技術 改善議技術 備考
資材名 数量 金額(円) 資材名 数量 金額(円)
肥料費 牛ふん堆肥 1,5t 14,400 牛ふん堆肥 1.5t 14,400
燐加安44号 2kg 162 鶏ふん堆肥 115kg 2,990
三浦春別化成S550 90kg 8,235 なたね油粕 100kg 5,000
顆粒タイニー 100kg 2,500 ハイマグB重焼燐 20kg 1,920
硫酸マグネシウム 40kg 2,860 硫酸マグネシウム 50kg 3,550
NK化成2号 120kg 7,920 NK化成808号 70kg 5,635



顆粒タイニー 60kg 1,500
小計 36,077 小計 34,995
農薬費 カスタード微粒剤 20kg 27,040 ジマンダイセン水和剤 333g 500
ジマンダイセン水和剤 333g 500 ベンレート水和剤 200g 2,072
アファーム乳剤 200ml 4,408 ロブラール水和剤 200g 2,180 (5回使用)
ベンレート水和剤 200g 2,072 カスケード乳剤 50ml 966
ランネート45水和剤 100g 1,440 スピノエース顆粒水和剤 40g 2,220
ゴーゴーサン細粒剤F 4kg 1,880 寒冷紗#300 50m 2,320
ロブラール水和剤 400g 4,360 展着剤(新リノー) 120ml 79
カスケード乳剤 50ml 966 防鳥網 1000m² 5,000
マトリックフロアブル 100ml 760
バリダシン液剤5 250ml 750
グリーンベイト 3kg 1,980
展着剤(新リノー) 240ml 158
防鳥網 1000m² 5,000
小計 51,314 小計 15,337
労働時間 作業名 回数 投下労働時間 作業名 回数 投下労働時間
堆肥・元肥散布 1回 5時間 堆肥・元肥散布・苗床 3回 9時間
化成散布(追肥) 3回 3 化成散布(追肥) 2回 2
薬剤散布 6回 6 薬剤散布 3回 3
中耕・土寄せ 3回 5 寒冷紗被覆 1回 2
苗床(施肥薬散) 2回 2 中耕・土寄せ 2回 3
小計 21時間 小計 19時間

物財費合計(全経営) 105,353円 物財費合計(全経営) 68,294円
投下労働時間合計(全経営) 104時間 投下労働時間合計(全経営) 102時間
7. 栽培のポイント
  1. 病害虫防除関係
    • 適期収穫を行う(この栽培体系よりも遅く収穫したい場合には、他の品種を選定する)。
    • 苗床の太陽熱消毒では、ビニール被覆前に肥料を施用しておく。消毒後は、周囲及び深層土との混和を避ける。
    • 苗床での病害虫防除を徹底し、本畑に病害虫を持ち込まないようにする(農薬使用量の削減につながる)。
    • 苗床及びほ場でフェロモン剤を利用すれば、害虫密度が低減する。
  2. 土壌肥料関係
    • 元肥は有機質肥料主体とし、化学肥料は肥料切れを防ぐため、適期に追肥する。