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スイートコーン/露地普通栽培(神奈川県の例)

【資料提供:平成16年3月、神奈川県環境農政部農業振興課】
1. 栽培品種
品種名 特性一覧 備考
熟期 粒色 雌穂重 雌穂長 草丈
ピーター235 早生 黄・白 395g 32cm 170cm かぶりが長く、比較的鳥害・虫害を受けにくい。
キャンベラ86 中早生 420g 31cm 185cm 生育が頑健で、倒伏にやや強い。黄色品種。
ピーター445 中早生 黄・白 440g 31cm 195cm 雌穂が大型になる。
カクテル600 中早生 黄・白 420g 30cm 175cm 草丈低く、作りやすい。
味来390 中早生 350g 25cm 210cm 雌穂はやや小さいが、良食味で消費者の人気高い。
ゆめのコーン 中早生 黄・白 360g 29cm 175cm 先端不稔がほとんどない。
2. 輪作体系
1年目 2年目 3年目
スイートコーン→秋冬だいこん(又はキャベツ) きゅうり→ほうれんそう えだまめ→たまねぎ(葉玉収穫)
科の異なる作物の組み合わせで連作障害を回避する。また、マメ科植物によりチッソ成分を補給する。
3. 栽培暦と施肥、病害虫防除時期(露地普通栽培、栽培様式 うね間135cmx株間30cm、2条値、5,330株/10a)
凡例 ◎:重点防除(省略できない)、○:通常防除(通常は実施。発生状況により省略可能)、
△:必要に応じて防除、←→:発生時期
4. 施肥の環境保全型農業への移行例化学肥料36%減) N19.6→12.6kg
施肥期 慣行施肥
資材名
施用量
(kg)
成分量(kg)
環境保全型
代替資材名
施用量
(kg)
成分量(kg) 備考
N P2O5 K2O CaO MgO N P2O5 K2O CaO MgO
元肥
(定植の10〜7日前、堆肥は3週間前)
牛ふん堆肥 1000 2.2 8.7 13.1 21.0 6.5 牛ふん堆肥 2000 4.4 17.4 26.2 42.0 13.0 有機質肥料の施用は播種の3週間前までに行う。化成肥料は緩効性のCDU複合燐加安等に置き換えてもよい。
苦土石灰 100


35 10 苦土石灰 30


10.5 3.0
燐加安42号 100 14 14 14

なたね油かす 50 2.0 1.1 0.7 0.5 0.5







乾燥鶏ふん 100 2.1 1.5 2.2 7.9 1.2







燐加安42号 50 7 7 7


16.2 22.7 27.1 56.0 16.5
15.5 27.0 36.1 60.9 17.7
追肥(間引き時) 燐加安42号 40 5.6 5.6 5.6

燐加安42号 40 5.6 5.6 5.6

追肥後、土寄せする。
合計

21.8 28.3 32.7 56.0 16.5

21.1 32.6 41.7 60.9 17.7
5. 防除の環境保全型農業への移行例農薬50%減) 6→3成分・回
時期 主な対象病害虫 慣行防除の
使用薬剤と濃度
環境保全型代替技術 備考
購入種子
(種子消毒済み)

種子消毒 種子消毒
本畑 生育期
5月中〜下旬
アブラムシ類 モスピラン水溶剤 2000倍 アルミ蒸着マルチにより被害を回避 ほ場周辺の雑草防除にも努める。
6月中〜下旬 アワノメイガ
(アブラムシ類)
スミチオン乳剤 1000倍 スミチオン乳剤 1000倍
雄穂出穂期 アワノメイガ デナポン粒剤5 6kg 受粉後、雄穂を除去することにより防除 6月中旬までは発生の恐れが少ないので防除作業を省略できる。
雌穂出穂期 アワノメイガ スミチオン乳剤 1000倍 スミチオン乳剤 1000倍 早い時期の播種により6月下旬までに収穫する場合は、防除不要。
6月中〜8月下旬 オオタバコガ アファーム乳剤 2000倍 デルフィン顆粒水和剤 1000倍
6. 雑草対策
作業内容 効果 作業内容 備考
マルチ被覆 播種時に被覆する マルチを利用することで、雑草の発生はほとんど問題にならない。
中耕・土寄せ 生育初期に通路部分を軽く中耕する 生育初期に植え穴の雑草を(発生を見たら)抜き取り、軽く中耕するだけで十分防除できる。
除草剤

凡例 ◎:効果が高い、○:比較的効果が高い、△:効果あるが不十分、X:効果なし
7. 経営的評価(10a当たりの物財費と投下労働時間の比較)
項目 慣行技術 改善議技術 備考
資材名 数量 金額(円) 資材名 数量 金額(円)
肥料費 牛ふん堆肥 1t 9,600 牛ふん堆肥 2t 19,200
苦土石灰 100kg 2,650 苦土石灰 30kg 795
燐加安42号 140kg 10,850 燐加安42号 90kg 6,975



なたね油かす 50kg 2,500



乾燥鶏ふん 10kg 2,450
小計 23,100円 小計 31,920円
農薬費 スミチオン乳剤 1000ml 2,950 スミチオン乳剤 1000ml 2,950 (耐用年数 2年)
モスピラン水溶剤 250g 4,400


デナポン粒剤5 6kg 2,440 アルミ蒸着マルチ 800m 7,980
穴あき黒マルチ 800m 6,960


アファーム乳剤 500ml 11,020 デルフィン顆粒水和剤 500g 4,490
小計 27,770 小計 15,420
労働時間 作業名 回数 投下労働時間 作業名 回数 投下労働時間
堆肥散布 1 4 堆肥散布 1 7
化成散布 1 2 化成有機質散布 1 3
農薬散布(動噴) 4 8 農薬散布(動噴) 2 4
マルチング 1 4 マルチング 1 4
中耕除草 1 3 中耕除草 1 3



雄穂除去 1 6
小計 21時間 小計 27時間

物財費合計(全経営) 81,890円 物財費合計(全経営) 82,610円
投下労働時間合計(全経営) 95時間 投下労働時間合計(全経営) 101時間
8. 環境保全型農業技術のまとめ(ポイントとなる技術)
  1. 病害虫防除関係
    1. 耕種的防除
      • マルチ資材利用により雑草を防除する。
      • アブラムシ等害虫の発生源になりやすい周辺雑草はできる限り除草する。
    2. 物理的防除
      • アルミ蒸着マルチの利用によりアブラムシ類の飛来を防止する。
      • 早めに雄穂を切除することにより、雄穂からのアワノメイガ幼虫の侵入を防ぐ。
    3. 化学的防除
      • 生育初期の殺虫剤散布を控えることにより、天敵を温存する。
      • 害虫の発生を的確に把握して、発生初期の適期防除に努める。
  2. 土壌肥料関係
    1. 有機質肥料
      • 牛ふん堆肥を標準の2倍利用する(10a当たり1→2t)。
      • チッソ成分の一部を化成肥料から乾燥鶏ふん、なたね油かすに置き換える。
    2. 施肥
      • 牛ふん堆肥とともに、元肥施用1ヶ月前までに、乾燥鶏ふん、なたね油かすを混合・堆積し、ボカシ堆肥化するとよい。
      • 的確な土壌診断に基づいて、各資材の施用量を調整する。