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たまねぎ/秋まき春どり栽培(神奈川県の例)

【資料提供:平成16年3月、神奈川県環境農政部農業振興課】
1. 栽培品種
品種名 特性一覧 備考
早晩性 収量性 球重 球色 貯蔵限界 べと病 灰色かび病 灰色腐敗病
ソニック やや多 240g 黄褐 8月下旬 首部は細い。べと病、灰色かび病に強い。
七宝早生7号 やや多 240 8月下旬 有機質が不足すると、形や大きさが乱れる。
さつき 300 11月下旬 生育旺盛のため、早まきは避ける。
ターボ 300 12月下旬 べと病、灰色腐敗病に強い。豊円球。
凡例 ◎:耐病性(耐虫性)あり、○:やや強、△:普通、
X:弱い、−:カタログでの記載がないか不明のもの
2. 栽培暦と施肥、病害虫防除時期
(秋まき春どり、栽培様式 普通栽培:54cmx9〜10cm、22000本/10a、マルチ栽培:15cmx15cm、27000本/10a)
凡例 ◎:重点防除(省略できない)、○:通常防除(通常は実施。発生状況により省略可能)、
△:必要に応じて防除、←→:発生時期
3. 施肥の環境保全型農業への移行例化学肥料 窒素成分で54%減) N 19.4→10.5kg
施肥期 慣行施肥資材名 施用量(kg) 成分量(kg)
環境保全型代替資材名 施用量(kg) 成分量(kg) 備考
N P2O5 K2O CaO MgO N P2O5 K2O CaO MgO
苗床施肥
播種の10〜7日前施用
牛ふん堆肥 250 0.5 2.2 3.3 5.3 1.6 牛ふん堆肥 250 0.5 2.2 3.3 5.3 1.6 苗床は、本畑10a当たり0.5a設置。
環境保全型代替資材はマルチ栽培で有機入り配合肥料を利用した例。
良質の完熟堆肥を施用。
リン酸過剰の場合は苦土重焼リンを施用しない。
カリ過剰の場合は適宣カリ成分を減量。
CDU555 5 0.8 0.8 0.8

防散石灰窒素 5 1.0

2.7
苦土石灰 10


3.5 1.0 苦土石灰 5


1.8 0.5
過リン酸石灰 5
0.9


過リン酸石灰 5
0.9


小計

1.3 3.9 4.1 8.8 2.6

1.5 3.1 3.3 9.8 2.1
本圃元肥(定植の10〜7日前施用) 牛ふん堆肥 3,000 6.6 26.1 39.3 63.0 19.5 牛ふん堆肥 2,000 4.4 17.4 26.2 42.0 13.0
CDU555 60 9.0 9.0 9.0

ジシアン有機806 150 12.0 15.0 9.0

苦土石灰 100


35.0 10.0 苦土石灰 100


35.0 10.0
苦土重焼リン 30
10.5

1.4 苦土重焼リン 30
10.5

1.4
小計

15.6 45.6 48.3 98.0 30.9

16.4 42.9 35.2 77.0 24.4
追肥@(2月中旬) NK化成2号 30 4.8
4.8


マルチ栽培は追肥不要であるが、生育によっては1月下旬〜2月下旬までに1〜2回マルチの上に追肥。
追肥A(3月上旬) NK化成2号 30 4.8
4.8

合計

26.5 49.5 62.0 107 33.5

17.9 46.0 38.5 86.8 26.5
4. 防除の環境保全型農業への移行例農薬50%減) 20→10成分・回
時期 主な対象病害虫 慣行防除の
使用薬剤と濃度
環境保全型代替技術 備考
苗床 8月中〜下旬 苗立枯病、軟腐病 ガスタードまたはバスアミド微粒剤処理 7〜14日間被覆 太陽熱消毒
育苗床をビニールで20日間以上密閉被覆、又は、太陽熱、石灰窒素併用処理(石灰窒素10kg/aを施用し、ビニールで20日間密閉被覆)
地温の上昇が足りない時は被覆期間を長くする。被覆処理前に散水する。苗床予定地の雑草防除に努め、ネキリムシ、ヨトウムシの密度低下を図る。
は種前 ヨトウムシ、ネキリムシ ネキリトン 1〜3kg/10a
9月中〜10月下旬 べと病、黒斑病 ジマンダイセン水和剤 400〜600倍 ジマンダイセン水和剤 400〜600倍 苗床での防除を徹底する。
軟腐病 スターナ水和剤 1000倍 (雨の多い時)スターナ水和剤 1000倍 雨が多い時に予防的防除を行う。
アブラムシ DDVP乳剤50 1000倍 DDVP乳剤50 1000倍 ねぎ畑の周辺に苗床を設置しない。
時期 主な対象病害虫 慣行防除の
使用薬剤と濃度
環境保全型代替技術 備考
本畑 定植時 乾腐病 ベンレート水和剤 20倍液3分浸漬 ベンレート水和剤 20倍液3分浸漬 移植直前に行う。
アブラムシ、タネバエ ダイシストン又はTD粒剤 4kg/10a ダイシストン又はTD粒剤 4kg/10a タネバエは未熟な有機質資材を施用すると発生が多い。
定植活着後 雑草防除 トレファノサイド粒剤 4kg/10a マルチ栽培の実施(黒マルチを使用) 発生雑草は手取り除草する。
2月中旬〜3月上旬 べと病、黒斑病 ジマンダイセン水和剤 400〜600倍、ダコニール1000 1000倍 ダコニール1000 1000倍 予防的防除を徹底する。
雑草防除 アクチノール乳剤またはナブ乳剤 マルチ栽培の実施(黒マルチを使用) 発生雑草は手取り除草する。
3月中旬〜下旬 軟腐病 サンドファンC水和剤 500倍 (降雨が多い時のみ)サンドファンC水和剤 500倍 降雨が多い場合は畝切りにより排水を促すとともに、予防的防除に努める。
雑草防除 アクチノール乳剤またはナブ乳剤 マルチ栽培の実施(黒マルチを使用) 発生雑草は手取り除草する。
4月上旬〜下旬 べと病、白色疫病 リドミルMZ水和剤 500倍 (べと病発生時に)リドミルMZ水和剤 500倍
アザミウマ モスピラン水溶剤 2000倍 モスピラン水溶剤 2000倍 発生が多い時に散布する。
軟腐病 コサイドボルドー 1000倍またはスターナ水和剤 1000倍 (降雨が多い時のみ)スターナ水和剤 1000倍
5月下旬 べと病、灰色かび病 ジマンダイセン水和剤 500倍、スミレックス水和剤 1000倍 混用 ジマンダイセン水和剤 500倍、スミレックス水和剤 1000倍 混用 収穫前散布の使用基準は、ジマンダイセンが3日前、スミレックスが1日前まで。
5. 雑草対策
作業内容 効果 作業内容 備考
マルチ被覆 定植間に被覆する。 黒マルチを使用する。
中耕・土寄せ 追肥時に実施する。
手取り除草
球肥大期の除草は収量低下の原因になることがある。
除草剤 アクチノール乳剤、ナブ剤等散布。 2月中旬〜3月下旬の早春期処理が効果的。
耕耘・鋤込み 前作収穫後のプラウ耕による鍬込み。
凡例 ◎:効果が高い、○:比較的効果が高い、△:効果あるが不十分、X:効果なし
6. 経営的評価(10a当たりの物財費と投下労働時間の比較)
項目 慣行技術 改善議技術 備考
資材・作業名 数量 金額(円) 資材・作業名 数量 金額(円)
肥料費 牛ふん堆肥 3,250kg 28,800 牛ふん堆肥 2,250kg 19,200
CDU化成555 65kg 8,028 ジシアン有機S806 150kg 12,000
苦土石灰 110kg 2,650 苦土石灰 105kg 2,650
苦土重焼リン 30kg 2,880 苦土重焼リン 30kg 2,880
NK化成2号 60kg 3,990 過リン酸石灰 5kg 214
過リン酸石灰 5kg 214


小計 46,562 小計 36,944
農薬費 カスタード微粒剤 2kg 2,818 防散石灰窒素 5kg 573
ネキリトン 150g 62 ジマンダイセン水和剤 300g 450
ジマンダイセン水和剤 600g 900 ベンレート水和剤 100g 1,036
スターナ水和剤 150g 1,416 DDVP乳剤50 150ml 339
DDVP乳剤50 150ml 339 ダイシストン粒剤 4kg 1,333
ベンレート水和剤 100g 1,036 ダコニール1000 150ml 600
ダイシストン粒剤 4kg 1,333 サンドファンC水和剤 300g 1,476
トレファノサイド粒剤 4kg 2,067 スターナ水和剤 150g 1,416
ダコニール1000 150ml 600 スミレックス水和剤 150g 1,917
アクチノール乳剤 200ml 1,140 展着剤(ニーズ) 850ml 1,496
サンドファンC水和剤 300g 1,476
リドミルMZ水和剤 300g 1,506
スミレックス水和剤 150g 1,917
展着剤(ニーズ) 1000ml 1,760
小計 18,370 小計 10,636
資材費
太陽熱消毒用ビニール 50m 493 幅135cm、透明
マルチフィルム 600m 8,700 幅135cm、7穴、黒ポリマルチ
小計
小計 9,193
労働時間 作業名 回数 投下労働時間 作業名 回数 投下労働時間
追肥散布 2 8 マルチ張り 1 2 マルチ張りはマルチャーを使用
定植 1 38 定植 1 31
動噴 10 7 動噴 7 5
除草・除草剤散布 2 6 手取り助走 2 16
中耕・土寄せ 2 8


収穫・調製 1 95 収穫・調製 1 95
小計 162 小計 187

物財費合計(全経営) 121,158円 物財費合計(全経営) 119,228円
投下労働時間合計(全経営) 185時間 投下労働時間合計(全経営) 220時間
7. 環境保全型農業技術のまとめ(ポイントとなる技術)
  1. 病害虫防除関係
    1. 耕種的防除
      • 耐病性品種を用いることで病害(べと病等)を回避する。
      • ほ場の排水処理を行う。
    2. 物理的防除
      • 太陽熱消毒を利用することで、薬剤散布量を少なくする。
      • マルチを利用することで、雑草の防除を軽減する。
    3. 化学的防除
      • 天敵を温存するために、害虫のみに有効性の高い選択性の薬剤を使用することにより、全体の農薬散布量を少なくする。
      • 病害虫の発生を的確に把握して、発生初期の適期防除に努める。
  2. 土壌肥料関係
    1. 有機質肥料
      • 基肥に化学肥料の代わりに、有機質入り化学肥料を利用する。
      • マルチを利用することで、肥料の流失を防ぎ、化学肥料による追肥を行わない。