栽培の手引き／植物総合管理＞作物別環境保全型農業栽培の手引き＞トマト

	【資料提供：平成16年3月、神奈川県環境農政部農業振興課】
1.	栽培品種
	品種名 特性一覧 備考 早晩性 草勢 果形 果色 果重 TMV F1 F2 J3 V B CF N ハウス桃太郎 極早 中 豊円腰高 桃 210 Tm-2a ○ Ｘ Ｘ ○ Ｘ Ｘ ○ 完熟向き、食味良 桃太郎J 極早 中 豊円腰高 桃 230 Tm-2a ○ Ｘ ○ ○ Ｘ Ｘ ○ 完熟向き、食味良 サンロード 中早 強 豊円腰高 濃桃 250 Tm-2/Tm-1 ○ Ｘ ○ ○ △ ○ ○ 完熟向き、食味良 ろくさんまる 極早 中 球〜豊円 桃 200 Tm-2a/Tm-1 ○ ○ Ｘ ○ Ｘ ○ ○ 完熟向き、食味良 Tm-1、-2、-2a ：TMV抵抗性因子 CF ：葉かび病 F1、F2 ：萎ちょう病 N ：サツマイモネコブセンチュウ J3 ：根腐萎ちょう病 ○ ：抵抗性あり V ：半身萎ちょう病 △ ：耐病性あり B ：青枯病 Ｘ ：抵抗性・耐病性なし
2.	栽培暦と施肥、病害虫防除時期（促成栽培、栽培様式 125cmx35cm、2100〜2300株／10a）
	凡例 ◎：重点防除（省略できない）、○：通常防除（通常は実施。発生状況により省略可能）、 △：必要に応じて防除、←→：発生時期
3.	施肥の環境保全型農業への移行例（化学肥料75％減）　N29.3→7.4kg
	施肥期 慣行施肥資材名 施用量（kg） 成分量（kg） 環境保全型代替資材名 施用量（kg） 成分量（kg） 備考 N P2O5 K2O CaO MgO N P2O5 K2O CaO MgO 育苗期 バーク堆肥 1,300 2.1 3.3 27.3 11.7 バーク堆肥 1,300 2.1 3.3 27.3 11.7 過リン酸石灰 5 0.9 過リン酸石灰 5 0.9 CDU床土配合 27 0.8 3.5 1.4 CDU床土配合 27 0.8 3.5 1.4 元肥 （定植の10〜7日前） 牛ふん堆肥 2,000 4.4 17.4 26.1 42.0 13.0 牛ふん堆肥 2,000 4.4 17.4 26.1 42.0 13.0 ぼかし肥を用いる。12段取りの施肥設計である。 苦土石灰 60 21.0 6.0 ぼかし肥 なたね油かす 136 5.3 3.0 1.8 1.3 1.2 CDU複合燐加安S555 126 18.9 18.9 19.0 魚かす粉末 170 12.3 13.4 0.0 17.2 0.6 BM苦土重焼燐 20 6.9 4.2 0,9 ロイヤルグアノ 20 0.0 4.6 0.0 0.0 0.0 鶏ふん堆肥 45 0.9 0.7 1.0 3.6 0.5 米ぬか油かす 91 1.4 3.8 1.4 0.4 2.1 小計 24.1 49.8 49.6 94.5 31.6 25.0 50.6 35.3 93.8 29.4 追肥 NK化成2号 60 9.6 9.6 硝安 15 5.2 N成分1kg/回までと生育に応じて追肥期と回数を調整する。 硝酸カリ 11 1.4 5.1 合計 33.7 49.8 59.3 94.5 31.6 31.6 50.6 40.4 93.8 29.4
4.	防除の環境保全型農業への移行例（農薬58％減）　31→13成分・回
	時期 主な対象病害虫 慣行防除の 使用薬剤と濃度 環境保全型代替技術 備考 育苗 は種準備 9月中〜下旬 苗立枯病 種子消毒 クロルピクリン剤 1穴当たり3〜5ml 種子消毒 園芸培養土の購入、又はセル成型苗の購入 購入苗では、場合により病害虫を持ち込む場合があるので注意する。 育苗期間 10月上旬〜11月下旬 コナジラミ類 モスピラン水溶剤 2000倍 モスピラン水溶剤 2000倍 本圃への持込を防ぐことにより、初期からの発生を抑制し、栽培期間全体の農薬使用量を減少させる。 アブラムシ 黄色粘着テープ 2枚 マメハモグリバエ アファーム乳剤 2000倍 スピノエース顆粒水和剤　5000倍 アザミウマ類 ベストガード水溶剤 1000〜2000倍 青色粘着テープ 2枚 葉かび病、疫病 ダコニール1000 　1000倍 ダコニール1000 1000倍 （うどんこ病） 寒冷紗 120m
	時期 主な対象病害虫 慣行防除の 使用薬剤と濃度 環境保全型代替技術 備考 本畑 耕転前 ネコブセンチュウ、褐色根腐病 クロルピクリン剤又はD-D等 20〜30�g/10a潅注、 ネマトリン粒剤 20〜30kg/10a土壌混和 熱湯消毒、又は、太陽熱消毒：ビニールで20日以上密閉被覆、 コブトリソウ、ギニアグラス等を栽培 抵抗性台木（ドクターK、マグネット等）に接木 90℃、300t/10aの熱湯で2日間被覆 定植時 11月下旬 アブラムシ、コナジラミ類 アドマイヤー1粒剤又は、オルトラン粒剤 1〜2g/株・植穴施用 チェス粒剤 1g/株・植穴施用 粒剤の植穴施用により、初期からの害虫発生を抑制し、栽培期間全体の農薬使用量を減少させる。 薬剤は、病害虫防除所の予察に基づき選択し、病害発生前から、定期的な予防散布に重点を置く。 マルハナバチを導入する場合は、導入1週間前までに害虫を防除して置く。 天敵を導入する場合は、病害虫防除所、農業改良普及センターの指導により導入計画を立てる。 イオウフロアブルは、天敵に影響があるため、マイネックス91使用前に散布する。 12月上旬〜 コナジラミ類 モレスタン水和剤 2000倍 チェス水和剤 3000倍 マメハモグリバエ カスケード乳剤 2000〜4000倍 カスケード乳剤 2000〜4000倍 灰色かび病 フルピカフロアブル 2000〜3000倍 ボトキラー水和剤 1000倍 1月 コナジラミ類 ベストガード水溶剤 1000〜2000倍 エンストリップ 50枚/10a/回、又はボタニガードES 500倍 葉かび病、疫病 ダコニール1000 1000倍 ビスダイセン水和剤 800倍 2月 コナジラミ類 モスピラン水溶剤 2000倍 エンストリップ 50枚/10a/回・2回、又はボタニガードES 500倍・2回 ハダニ類（サビダニ） マイトコーネフロアブル 1000倍 コロマイト乳剤 1500倍又はイオウフロアブル 400倍 灰色かび病、葉かび病 ベルクート水和剤 3000〜6000倍 ボトキラー水和剤 1000倍 3月 コナジラミ類 アプロード水和剤 1000〜2000倍 チェス水和剤 3000倍 エンストリップ 50枚/10a/回、又はボタニガードES500倍 チェス水和剤 3000倍 マメハモグリバエ アファーム乳剤 2000倍 マイネックス91　1〜2瓶/10a・2回、又はコロマイト乳剤 1500倍 4月 コナジラミ類 サンマイトフロアブル 1000〜1500倍 アプロード水和剤 1000〜2000倍 アザミウマ類 ベストガード水溶剤 1000〜2000倍 スピノエース顆粒水和剤 5000倍 灰色かび病 ゲッター水和剤 1000〜1500倍 フルピカフロアブル 2000〜3000倍 ボトキラー水和剤 1000倍 葉かび病 トリフミン水和剤 3000〜5000倍 トリフミン水和剤 3000〜5000倍 5月〜6月 コナジラミ類 モスピラン水溶剤 2000倍 チェス水和剤 3000倍 アブラムシ オルトラン水和剤 1000〜2000倍 省略可 灰色かび病、葉かび病 ゲッター水和剤 1000〜1500倍 ゲッター水和剤 1000〜1500倍 ホルモン処理 トマトトーン 50〜100倍、又は、トマトラン 500〜1000倍 マルハナバチの放飼
5.	雑草対策
	作業内容 効果 作業内容 備考 土壌消毒 ◎ 太陽熱消毒あるいは熱湯消毒 太陽熱消毒・熱湯消毒は十分に地温が上昇することが必要。 緑色マルチが特に有効。全面マルチは、灰色かび病などの発生やマメハモグリバエの羽化の抑制にも有効。 マルチ被覆 ○ 定植前に被覆 手取除草 △ 必要に応じて除草 凡例 ◎：効果が高い、○：比較的効果が高い、△：効果あるが不十分、Ｘ：効果なし
6.	経営的評価（10a当たりの物財費と投下労働時間の比較）
	項目 慣行技術 改善議技術 備考 資材名 数量 金額（円） 資材名 数量 金額（円） 肥料費 バーク堆肥 1,300kg 13,000 バーク堆肥 1,300kg 13,000 過リン酸石灰 5kg 219 過リン酸石灰 5kg 219 CDU床土配合 27kg 2,309 CDU床土配合 27kg 2,309 牛ふん堆肥 2t 19,200 牛ふん堆肥 2t 19,200 苦土石灰 60kg 1,590 なたね油かす 136kg 5,780 CDU複合燐加安S555 126kg 15,561 魚かす粉末 170kg 20,825 BM苦土重焼燐 20kg 1,960 ロイヤルグアノ 20kg 2,000 N化成2号 60kg 3,960 鶏ふん堆肥 45kg 1,170 米ぬか油かす 91kg 3,686 硝安 15kg 1,388 硝酸カリ 11kg 1,018 小計 57,799 小計 70,594 農薬費 （殺菌剤） 熱湯消毒費用 リース・設置料 20,167 （3年に1回とし、水道料金は含まない） ゲッター水和剤 800g 12,400 重油代（熱湯消毒） 53,767 トリフミン水和剤 100g 1,212 台木種子 60ml 27,300 ダコニール1000 350ml 1,386 接木クリップ 3000個 14,400 フルピカフロアブル 250ml 5,200 クレハ園芸用培土 66kg 2,838 クロルピクリン 40�g 41,042 モスピラン水溶剤 75g 1,263 （殺虫剤） チェス粒剤 2.3kg 2,768 オルトラン水和剤 300g 2,190 エンストリップ 200枚 23,600 モレスタン水和剤 100g 438 ダコニール1000 350ml 1,386 アドマイヤー1粒剤 4,200g 4,536 チェス水和剤 270g 3,283 サンマイトフロアブル 500ml 6,750 ゲッター水和剤 600g 9,120 アファーム乳剤 175ml 3,857 カスケード乳剤 100g 1,940 モスピラン水溶剤 525g 8,841 トリフミン水和剤 100g 1,238 マイトコーネフロアブル 200ml 1,840 ボトキラー水和剤 650g 12,545 ベストガード水溶剤 550g 4,994 スピノエース顆粒水和剤 120g 6,660 カスケード乳剤 75ml 1,455 コロマイト乳剤 200g 1,848 アプロード水和剤 250g 1,490 アプロード水和剤 250g 1,490 ベルクート水和剤 150g 1,125 ビスダイセン水和剤 500g 1,200 チェス水和剤 270g 3,283 マイネックス91 4瓶 22,400 （植調剤） マルハナバチ 1コロニー 30,000 トマトラン 20ml 1,040 黄色粘着テープ 2枚 110 育苗培土 66kg 2,838 青色粘着テープ 2枚 110 寒冷紗 120m 8,328 寒冷紗の耐用年数を5年として計算 小計 105,918円 小計 247,761円 労働時間 作業名 回数 投下 労働時間 作業名 回数 投下 労働時間 マルハナバチ飼育管理全般の合計 農薬散布 11回 26時間 農薬散布 4回 9.7時間 元肥施肥 1回 6 ぼかし肥作成 1回 1.5 温度管理・追肥・かん水 98 接木 1回 12 ホルモン処理 24回 47 天敵放飼・交換 4回 1.2 元肥施肥 1回 7 温度管理・追肥・かん水 99 マルハナバチ設置・交換等 - 4 小計 177時間 小計 133.4時間 物財費合計(全経営) 1,837,680円 物財費合計(全経営) 1,632,458円 投下労働時間合計(全経営) 1,084時間 投下労働時間合計(全経営) 1,024時間 【備考】慣行技術はガラス温室、環境保全型技術は硬質フィルムハウスを採用している。
7.	環境保全型農業技術のまとめ「ポイントとなる技術」
	病害虫防除関係 耕種的防除 抵抗性台木の利用 物理的防除 育苗ハウスの寒冷紗被覆 熱水土壌消毒 化学的防除 病害虫ともに、密度の低い早期のスポット散布が有効 天敵農薬の利用と、害虫のみに有効性の高い選択性薬剤の利用 土壌肥料関係 牛ふん堆肥の利用による土壌改良 ぼかし肥の利用 的確な土壌診断による施肥設計、追肥量の削減