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電子荷札「ICタグ」の実用化に向けて

ICタグとは? ・・・2003/07/06 日経
電子荷札規格統一 ・・・2003/06/24 朝日新聞
動き出すICタグ ・・・2003/07/22・23 日経
ICタグ普及の流れ
ユビキタスとは?

ICタグとは?
  1. 一本化で用途拡大
    ICタグ(荷札)は細かな商品情報や流通経路などの情報を簡単につかみ、管理する道具です。専用の読取装置でデータを確認、タグに情報を入力することもできます。物流以外にも幅広い用途が考えられています。
    札に埋め込んだ、ごま粒大(0.4ミリ角〜1ミリ角程度)のICチップに情報を記録。ICには無線通信用のアンテナを付け、電波でデータをやりとりします。
    電機メーカーなどが開発してきましたが、情報の書き込み、通信方式などがばらばらで、普及の妨げになっていました。
    そこで、大手電機や通信、印刷など国内外の百八十社が参加する「ユビキタスICセンター」(東京・品川)は6月、ICタグの統一規格を決めました。
    通信方式などを一本化。
    どのメーカーのタグも一台の読み取り装置で識別できるようにしようとしています。今回は日立製作所のICタグなど三社の製品を標準規格に認定しました。
    従来のバーコードと違って、タグから数メートル離れてもデータを読み取れるのが強み。倉庫の出入荷時に、読み取りゲートにタグ付きの商品を通せば、瞬時に商品の出入りをつかめます。
    複数のタグの情報も一度につかめます。スーパーでかごに入れた商品をすべて一度に清算することも検討しています。
    ブランド品などの偽物をつかむ心配も少なくなります。正規メーカーが入力する本物識別用の情報をタグを使って、チェックできるようになるからです。
  2. 急速に進む小型化
    ICタグの研究に最初に着手したのは、第二世界大戦時の米軍だと言われています。
    戦後、核物質の管理など主に軍事目的に使っていましたが、1970年代に、民間に技術を開放、欧米企業がICタグを商品化しました。日本でも85年から、工場の生産管理などに使ってきました。
    ここにきて多数の企業が規格統一に動くなど普及の機運が急速に高まったのはなぜでしょうか。
    第一に、ここ一、二年でタグの小型化が一気に進んだからです。小さな商品にも札を付けられるようになり、用途が急拡大する見通しになってきたのです。
    特に、技術開発が進んだことで、アンテナ部分が「総じて三年前の三分の一以下」(ユビキタスIDセンター)になったことが大きかったようです。
    現在主流のタグの大きさは、クレジットカード程度ですが、長さ一センチ以下・幅一ミリ以下のタグの実用化も視野に入ってきました。
    また、ICチップの情報容量も三年で五倍以上と急増したことで、使い道も大幅に広がる可能性が出てきました。
  3. 値下げで本格普及
    ユビキタスIDセンターの参加企業は、規格統一を機に月内にも実証実験を始めます。農協などの協力で野菜にタグを付け、使った農薬の種類や量、日時などを記録、流通過程で検知できる仕組みを研究します。
    紙幣の偽造防止など様々な用途が期待されています。
    ただ、本格普及には価格をもう一段下げることが必要です。現在は読み取り・書き込み両方できるタイプで一個100〜500円程度。缶ジュースなどにつけるにはコストが高すぎます。
    関係者からは「市場が飛躍的に伸びるのは一個10円を切ってから」との声が多く出ています。それには、技術開発や量産で生産コストを下げることが必要で、あと3〜5年程度かかるとの見方もあります。
    また、国際的な統一規格ができれば、普及が加速する可能性があります。今回、百八十社が一本化で合意しましたが、ユビキタスIDセンターの規格がそのまま国際標準になるわけではありません。
    米国企業を中心にしたオートIDセンターが別の規格づくりを進めており、経済産業省など日本の関係省庁も国際標準化機構(ISO)準拠の規格をまとめる予定。今後、国際標準をめぐる競争は激しさを増しそうです。
ここがポイント ・・・東京大学教授 坂村 健 氏
現在位置はどこか、この商品はいつ作られたか。あらゆる物にICチップを組み込み様々な情報をコンピューターで認識して生活を便利にする。そんなユビキタス(ラテン語で偏在の意味)社会が目前に迫っています。ICタグは、その基礎になる道具。情報技術の小型化が得意な好機です。
ICタグの普及で消費者も大きな恩恵を受けます。その際、注目すべき点が二つあります。「安全・安心」と「プライバシー保護」です。
安全・安心面ではまず、BSE(牛海綿状脳症)問題などを背景に関心が高まった、食品の安全性を厳しくチェックできるようになります。肉、野菜など生鮮品に付けたタグを通じて生産者や使用農薬・肥料、輸送時の温度などの情報を確認できるからです。
薬の処方も安全性が向上。患者が装着したタグに、その人の体質や過去の治療・投薬履歴に関する情報を記録します。このタグと薬につけたタグの情報を読み取り機で照合して副作用が起きる恐れがあれば、警告表示が出るようにすることで、医療事故を防げます。
一方、注意が必要なのは、プライバシー保護の問題です。例えば、洋服の値段や紙幣の中身などを他人が離れた場所から判読できる事態は避けなくてはなりません。こうした情報が悪用される恐れもあります。
商品を売った後は、持ち主以外は情報を読み取れなくする仕組みを法律で義務付けることも検討すべきでしょう。

電子荷札規格統一
野菜の農薬情報/アレルギー食品警告も
細かな商品情報や流通経路などを記録し、消費者が内容をチェックできる電子荷札(ICタグ)の実用会に向けて業界が動き始めた。国内外の有力メーカーなど180社でつくる団体は23日、これまで仕様が異なっていたタグの統一規格を決めた。情報量が現在のバーコードより飛躍的に増え、将来は衣料品の情報を読み取って洗い方を変える洗濯機やアレルギーが出る食品が入ると警告する冷蔵庫、併用すると副作用が出る薬を知らせるといった応用も可能という。7月にも実証実験が始まる。
国内外180社実験へ
規格をまとめたのは「ユビキタスIDセンター」で、規格統一には、国内勢のほか米コンピューター大手サン・マイクロシステムズなど欧米企業や韓国のサムスングループも合意した。統一規格として、まずは日立製作所が開発した0.4ミリ角サイズの「ミューチップ」など3社の製品を認定した。
実用化に向けIDセンターは神奈川県横須賀市の農協などの協力を得て実証実験を始める。コンピューターの基本ソフト(OS)「トロン」の開発者でセンターの代表を務める 坂村 健・東大教授も参加する。
これまで国内の電機メーカーなどが開発してきたが、データを読み取る通信方式などが異なり、普及のためには、どのメーカーのタグでも専用の読み取り機で識別できるようにすることが課題となっていた。
ICタグでは米流通大手などのグループが別の規格づくりを進めているが、IDセンターでは「情報の偽造防止など安全面への配慮などで日本の技術が進んでいる」と国際標準として世界に広げたいと考えた。
ICタグを使えば、商品の一つひとつについて、原材料や使用された農薬などの情報、さらには出荷元や販売先など流通経路、それぞれの日時などを記録できる。従来のバーコードでは、例えば「○X乳業の1g牛乳」程度しか識別できなかったが、ICタグでは何月何日にどこの工場で何本目に作られ、どこに出荷されたかまで判別ができる。
実証実験では、トレーサビリティ(追跡可能性)に主眼を置き、大根やキャベツなどの生鮮野菜に付けたラベルに、使われた農薬の種類や日時、使用量なども記録し、検知できるようにする。
BSE(牛海綿状脳症)問題や食品メーカーの偽装表示などで、消費者の不安を解消する対策を政府やメーカーが迫られたことも、ICタグの実用化を後押ししている。ICタグなら、賞味期限や流通経路の追跡などが可能になるためだ。
紙幣の偽造防止や家電製品などで増えている模造品の防止にも役立つ。また、2005年開催の愛知万博の入場にも採用されることが決まっている。
キーワード
電子荷札(ICタグ)製品情報を記録する極小のIC(集積回路)チップに、無線通信用の超小型アンテナをつけ、データをやり取りすることができる。値札や食品のパックなどに取り付ければ、数十センチ程度離れていても専用読み取り機でデータを確認できる。店頭などで消費者が製品情報をチェックすることも可能になる。今回規格統一したICタグは、現在の標準バーコードよりも記録容量が最大6千倍まで増える。
動き出すICタグ
【日米2規格両にらみ・・・周波数拡大並立は必至】
ありとあらゆるモノに識別情報を組み込めるICタグ(荷札)が実用段階に入ろうとしている。日本でもタグ付きシールを生鮮食品に張り付け、生産履歴追跡(トレーサビリティ)などに利用する実験が本格化する。
日米2標準化団体の違い
規格内容 ユビキタスIDセンター(日) オートIDセンター(米)
発行可能番号数 2の128乗個 2の64乗個(拡大予定)
タグの周波数 2.45ギガヘルツ 915メガヘルツ
バーコードとの関係 バーコードの番号を内包 バーコードを代替
認定タグの種類 読み出し専用型2種類、マイコン搭載型1種類 読み出し専用型2種類
参加企業数 約200社 約80社
主なメンバー企業 NEC、大日本印刷など ウォルマート、ジレットなど
関連業界は2005年を本格普及が始まる年と位置づけ、走り出した。
2003年6月20日、総務省が950MHzの周波数をICタグ用に割り当てると報じられた。「総務省は複数規格の並立で行く決意だな」。日本のICタグ標準化団体、ユビキタスIDセンター(坂村 健 代表)の関係者はこう受け止めた。この割り当ては標準化で競合する米オートIDセンター(マサチューセッツ州)への追い風になるからだ。
オートIDの規格でタグと読み取り装置の無線通信に使う周波数は915MHz。日本の携帯電話用の周波数帯(800〜900MHz)に近く、通信に支障が出る恐れもあったが、950MHzなら多少の修正で導入できる。門前払いの可能性もあった米国版規格が生き残ったのだ。
一方のユビキタスIDセンターには日本のICメーカーなど約200社が参加。総務省の支援も受け、日本版規格として「お墨付き」を得ている。
日米両陣営の規格並立をにらみ関連メーカーは動き出している。凸版印刷は年末までに両陣営の使用周波数に対応する読み取り装置を発売する。
オートIDのICタグを作っている米エイリアン・テクノロジー(カリフォルニア州)はユビキタスのICタグも一台で読み取れる装置を開発済み。
ICタグでもユビキタス陣営が認定した三種類のうち凸版製「T-ジャンクション」(最小一ミリ角のICチップ)は両規格の周波数で使える。ユビキタス認定のICタグで最小の「ミューチップ」(0.4ミリ角)をつくる日立製作所も「一方に肩入れはしない」(同社)と両にらみの戦略だ。
実は両陣営は角突き合わせているばかりではない。今年三月、ユビキタスの坂村代表をオートIDセンターのケビン・アシュトン所長が訪問。「将来の共同研究や連携を話し合った」(アシュトン所長)という。
ただし二規格の並立はICタグや読み取り装置など供給側の論理。技術課題をほぼ克服し普及を急ぐメーカーに対し、最大ユーザーとなる流通業者の事情は複雑だ。
「将来、一つの規格に収れんした場合、負けた側の規格への投資が無駄になるのが心配」(大手スーパーの担当者)。規格の統一問題を当面棚上げにしたメーカーの思惑通りに、ユーザーがついてくるとは限らない。
【流通業界、導入に二の足】
「バーコードの壁は思った以上に厚い」。ICタグ(荷札)メーカーの担当者はつぶやいた。流通システム開発センター(東京・港)が流通業者を対象にした調査で、ICタグを今後導入する予定があると答えた総合スーパーは28社中ゼロだったのである。食品スーパーでも161社中8社にとどまった。
バーコードは現在、ほぼすべての商品に添付され、在庫管理や価格の読み取りに広く利用され入る。スーパーやコンビニエンスストアはバーコードを軸に販売管理システムを構築してきた。
電機の業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)によると、流通業向けの販売時点情報管理(POS)機器の国内市場規模は2002年度で650億円。1998年度から5年間の累計出荷額は3790億円に達し、そのほとんどがスーパーなど小売業の設備需要だ。
こうした投資を回収しきれない段階でのICタグへの移行に、小売業者の抵抗感は強い。新たな投資負担に見合うだけの効果がない限り、ICタグがバーコードの座を奪うことはできない。
「現状ではタグの実力が出ていない」。オンワード樫山の佐竹孝SCM推進部長はアパレル業界が実施した実証実験の結果に厳しい評価を示す。
ICタグの長所のひとつは、複数のタグを一度に読み取れる機能だ。カートに入れた商品の合計金額が表示され、レジに並ばずに勘定をすませるといった使い方もできる。アパレル業界の実証実験も読み取り精度を見極める目的だった。
しかし、倉庫内の検品作業での実験で、一回の読み取りで数%の読み残しが恒常的に発生した。アパレル商品は食品や書籍などに比べ単価が高く、コスト吸収力があるため、早い時期でのICタグ採用が有望視されていた。業界側もICタグを導入すれば、倉庫の検品に要する時間を大幅に短縮できると期待していた。実験で読み取り精度向上という宿題が残った。
米流通大手のウォルマート・ストアーズはジレットと共同で実施する予定だった店頭実験を先週突然取りやめた。消費者団体が「個人の商品購入履歴が第三者に漏れる可能性がある」とICタグ導入に抗議していたことが、実験中止の背景にあると指摘されている。
買った商品についているタグを外さないで入る場合、その消費者がどんな製品をいくらで買ったかといった情報を他人に知られてしまう恐れがある。イタリアの衣料品メーカー、ベネトンも同様の抗議を受け、衣服にICタグを装着する計画を撤回した。
「勘定がすんだ時点で、価格を含む商品情報を自動的に消去する技術はできている」と、ICタグの標準化団体のオートIDセンター日本支部を統括する慶応大学の 村井 純 教授。たが、バーコードと比較にならないほど大量の情報を書き込めるだけに、一度のミスがもたらすリスクも大きくなる。
関連機器を含めたICタグの国内市場規模は2003年に500億円、2005年には3000億円と業界では予測している。
しかし業界内では「今年の需要は予測を下回るのが確実。二年後の数字も下方修正しなければならないだろう」(凸版印刷)と、普及スピードに疑問符を投げかける声も出てきている。
イベントの入退場管理など、ごく限定的な場所での利用が始まったICタグだが、最大ユーザーとなる小売業にバーコードに代わる存在として受け入れられるための道筋はまだ描けていない。
参考 農林水産省消費安全局・トレーサビリティ関係
社団法人農協流通研究所
食品トレーサビリティ協議会

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