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農林水産航空事業

(社)農林水産航空協会会長 関口 洋一
無人ヘリの活用増加
今年の航空事業は、有人ヘリコプターの利用は、供給機数186機で、対前年2機の減少、利用面積は、全事業で1.8%減の374万fとなった。うち事業の中心となる水稲病害虫防除は、5.6%減の78万f、また、松くい虫防除では、6.5%減の9.4万fとなり、前年に引き続き減少したが、水稲のカメムシ類の多発生に伴い、8月中旬に約5000fの緊急防除が行われた他、いもち病防除に際して、カメムシ用農薬の混用を行うなど、病害虫発生様相の変化に対応した防除が推進された。
一方、無人ヘリコプターについては、7機種、約1400機(対前年比110%)となり、全国43道府県の33.8万f(対前年比121%)で活用された。また、オペレーターは全都道府県7000名に達し、対前年比107%となった。
また、1機当たりの稼動面積も約240fとなり、効率的に運行されていることがわかる。
利用分野については、依然として水稲関係が30万fで約90%を占め、次いで だいず・あずき(2.2万f、同174%)、麦類(1万f、113%)など畑作、特に だいずにおける利用が大きく伸びたほか、そ菜(れんこん、たまねぎ)3.3百f、松くい虫防除(1千f)、水稲直播300fなど多くの作物分野で利用が進展した。
大型無人ヘリについては、今年は七道県の水稲3.4百fで利用され、効率的な防除手段として利用システムの確立が期待される。
機種の組合せで効率連携、低コスト防除も可能に・・・
農業におけるヘリコプターの利用は、効率的かつ経済的な省力技術として、稲作や山林の病害虫防除を中心に生産性の向上に大きく寄与してきた。また、近年では、過疎化の進む農・山林の労働力を補完する省力技術として、防除組織の代行的役割として、大きな力を発揮している。
しかしながら、最近では、地上要員の確保や地域のコンセンサス不足などから、実施に困難を来している面もあるが、経営規模の拡大や高齢化が大幅に進む中で、病害虫防除など管理作業を担う重要な手段として将来とも大切にしていきたい技術である。
航空防除は、
1. 傾斜度など地形や田水面の有無に左右されず、広域一斉防除が実施できるため、効果が高い。
2. 使用できる農薬は、一般に使用されている農薬の中から、特別な試験を重ね、航空防除用として登録された低毒性のものに限られ、飛行速度、吐出量が一定かつ調節可能なため、散布量が適正かつ均一である。
3. 病害虫防除専門家の指導によって進められるため、農薬安全使用が徹底され、かつ、薬剤抵抗性害虫や耐性菌の発生防止にも配慮農薬の選定が行われているなどの利点を有している。
航空機による農薬散布は、コストの上から、ある程度の地域のまとまりが必要であるが、転作による他作物や特殊な栽培ほ場の混在、住宅の農村部への進出、一部の反対グループの活動などにより、実施地区の取りまとめに困難をきたしている例も少なくない。
特に、有機認証制度の発足により、各地で有機栽培が行われる可能性も有り、航空事業の推進に当たっては、事前に地域のコンセンサスを得ることが重要な手続きとなってくるものと考えられる。
したがって、今後は実施地域の広がりも考慮し、有人ヘリと大型無人ヘリ、大型無人ヘリと小型無人ヘリなど、機種の効率的な組合せによる連携防除を推進することにより、低コストかつ周辺住民の理解を得やすい航空防除事業を推進するほか、機種の持つ特性を考慮した水稲直播(播種、雑草防除、施肥など)、果樹、林野などにおける利用の推進が重要と考えられる。
このためには、使用する農薬の種類、作物、適用病害虫・雑草の種類を拡大することが必要であるのは当然として、さらには、使用できる農薬の希釈倍率、散布量を機種間共通のものとすることが絶対条件であり、適用病害虫の種類なども同一であることが不可欠である。
無人ヘリ用農薬の適用拡大を促進へ
現在の農薬登録状況から航空防除実施可能な作物を見ると、有人ヘリでは水稲、麦類、とうもろこし、さとうきび、だいず、桑、レンコン、キャベツ、かんきつ、くり、かき、林木の11作物(分野)、無人ヘリでは水稲、麦類、さとうきび、だいず、あずき、れんこん、たまねぎ、しょうが、やまのいも、アスパラガス、だいこん、キャベツ、くり、かんきつ、林木の15作物(分野)となっており、有人・無人それぞれの特性に合わせた利用分野が確立されつつある。
また、対象病害虫・雑草の種類などを機種別、作物別にみると、水稲、林野に偏り、畑作、野菜、果樹など他作物での利用範囲はきわめて狭い。
さらに、水稲の重要病害虫については、有人ヘリ・無人ヘリ用共通の希釈倍率・散布量のメニューがかなりの程度整備されており、連携防除が可能であるが、他の作物分野については欠落が多く、それが困難であることを示している。この欠落はとくに無人ヘリについて顕著となっている。
特に、近年、本作に位置付けられている だいず、麦類を対象とした無人ヘリ用農薬の登録数が少なく、生産者やオペレーターからは早急な適用拡大が望まれている。
これらの問題点を解決するため、(社)農林水産航空協会では、関係者の要望をお聞きし、とくに登録農薬が少ない無人ヘリ用農薬について、無人ヘリ製造メーカーの協力と農薬メーカーとの緊密な連携によって解決するため、「無人ヘリコプター用農薬の登録促進事業」を推進しているので、関係の皆様のご理解と積極的なご協力をお願いしたい。
自給率の向上を図りつつ、低コスト高品質安定生産という社会的要請の中で、農林水産航空事業は幅広い作業分野を担い、わが国農林水産の発展に大きく寄与することを要請されている。
そのためには、安全かつ信頼される多様な技術の提供が基本であることを意識させたこの一年であった。
農林技術新報 H12/11/25