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農林水産航空事業の現状と課題

(社)農林水産航空協会副会長 関口 洋一
ヤマハ RMAX TypeUG
 農業におけるヘリコプターの利用は、効率的かつ経済的な省力技術として、稲作や山林の病害虫防除を中心に生産性の向上に大きく寄与してきたが、最近では、他作物の混在や住宅の進出等に伴う周辺地域との調整、地上要員の確保の困難化等により、実施に困難を来たしている面もあるが、経営規模の拡大や生産コストの低減を図る上で、病害虫防除など管理作業を担う重要な手段として将来とも大切にしたい技術である。航空防除は、
@ 傾斜度など地形やほ場の条件に左右されず、
A 一斉防除で評価が高い農薬の中から、さらに、特別な試験を重ね、航空防除用として登録された低毒性のものに限られ、
B 飛行速度、吐出量が一定かつ調節可能なため、散布量が適正かつ均一である、
C 病害虫防除専門家の指導によって進められるため、農薬安全使用が徹底され、かつ、
D 薬剤抵抗性害虫や耐性菌の発生防止にも配慮した農薬の選定が行われている等の利点を有している。
 また、実施に当っては、事前に防除の時期、対象地域、内容などが好評周知され、安全対策の確保に万全を期している。
カメムシ用農薬混用など病害虫発生様相に応じ防除
 本年の農林水産航空事業は、当初はエルニーニョ現象による異常気象も予想され、円滑な実施が危惧されたが、関東や北日本の一部を除き、全般的に天候に恵まれたこともあり、ほぼ順調に推移することができた。また、航空事故は2件発生し、幸いにも人命にかかわることはなかったが、標識旗の的確な設置と事前の現地確認が極めて重要であることが認識された。
 今年の友人ヘリコプターの利用は、稼動機数153機で、前年に比べ8機減となった。
 利用面積は、全事業で1%増の345万4千ha、うち、事業の中心的となる水稲病害虫防除は、8.2%減の65万1千ha、また、松くい虫防除では、11%減の7万6千haとなり、引き続き減少したが、ここ数年多発傾向にある出納の吸汁性カメムシ類が本年も各地で猛威をふるったこともあり、病害防除に際して、カメムシ用農薬の混用を行うなど、病害虫発生様相の変化に対応した防除が推進された。
 また、一部地域では台風による冠水に対応し、防除を前倒しに実施するなど状況に応じた防除が実施された。
 一方、無人ヘリコプターについては、6機種、1687機(対前年比107.7%)となり、東京、神奈川、大阪、沖縄の4都県を除く全国43道府県の44万ha(対前年比111%)で活用された。また、オペレーターは全国で8661名(対前年比110%)に達した。
 1機当たりの稼動面積は年々向上しているが約260ha(対前年比105%)となり、最近5年間で30%以上向上し、効率利用が進んでいる。
 利用分野については、水稲関係が38万2千ha(対前年比112%)で全利用面積の86%を占め、次いで だいず・あずき(3万9千ha、同122%)、麦類(1万9千ha、同133%)となっており、畑作における利用が大きく伸びたほか、そ菜、松くい虫防除、水稲直播など水稲病害虫防除以外の多くの作物分野への利用が引き続き進展している。
 大型無人ヘリについては、今年は4道県の水稲病害虫防除で7千ha(前年比149%)で利用されたほか、だいず(576ha)、麦の直播(195ha)に利用されるなど、効率的な防除手段としての認識が年々高まっている。
実施地域の拡大考慮し、機種の連携で防除推進
 航空機による農薬散布は、コストの上から、ある程度の地域のまとまりが必要であるが、転作による他作物や特殊な栽培ほ場の混在、住宅の農村部への進出、一部の反対グループの活動などにより、実施地区のとりまとめに困難を来たしている例も少なくない。特に、有機栽培ほ場が存在する他区においては、関係行政部局、認証機関などへも問い合わせを行い、事前調査に基づき、ほ場の特定を行うとともに、当該生産者の理解と協力が得られるよう十分な説明と所用の対策が必要である。
 従って、今後は実施地域の広がりをも考慮し、友人ヘリと大型無人ヘリ、大型無人ヘリと小型無人ヘリなど、機種の効率的な組合せによる連携防除を推進することにより、低コストかつ周辺住民の理解を得やすい航空防除事業を推進するほか、機種のもつ特性を考慮した水稲直播(播種、雑草防除、施肥など)、果樹、林野などにおける利用の推進が重要と考えられる。
 航空防除においては、適用農薬の「ある」、「なし」が対象作物を限定することとなる。現在の農薬登録状況から航空防除実施可能な作物をみると、有人ヘリでは水稲、麦類、とうもろこし、さとうきび、だいず、桑、れんこん、キャベツ、かんきつ、くり、かき、林木の12作物(分野)、無人ヘリでは水稲、麦類、とうもころし、さとうきび、ビート、さつまいも、だいず、あずき、ばれいしょ、れんこん、たまねぎ、しょうが、やまのいも、アスパラガス、だいこん、きゃべつ、かんきつ、林木、芝の19作物分野となっている。また、麦の播種が注目を浴びている。
 また、作物別に見ると、水稲については主な病害虫を対象とした薬剤・剤型が揃っており、航空防除のみで防除が完結できる仕組みとなっているが、水稲以外の畑作、野菜、果樹など他作物でのメニューは少なく、航空防除一貫体系は未完成といわざるを得ない。
 さらに、別表(航空防除用農薬一覧)にも示すとおり、水稲の重要病害虫については、有人ヘリ・無人ヘリ用共通の希釈倍率・散布量のメニューがかなりの程度整備されており、連携防除が可能であるが、他の作物分野については欠落が多く、それが困難であることを示している。
 このため、当協会では、本作に位置づけられている 大豆、麦類など主要作物を重点的に、薬剤・剤型の種類を拡大することとし、無人ヘリ製造メーカーの協力をいただき、農薬メーカーとの緊密な連携によって解決を図るべく努力している。
新農薬取締法施行にあわせ的確な散布技術開発へ
 また、新農薬取締法の施行では、農薬使用者としての航空会社、無人ヘリコプター防除従事者など従来に増して農薬の専門知識が要求されることとなるところから、新しい知識の啓蒙や的確な散布技術の開発などに積極的に取り組んでいきたい。
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