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農薬登録制度の見直し

平成21年6月25日 日本農業新聞
 2003年に農薬取締法が改正されて5年が経過し、農薬行政の見直し検討が進んでいる。農水省は6月上旬に議論の方向性をまとめた「我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)」を公表。国際基準との整合性や高い安全性確保のため、作物残留試験を充実したり、農薬登録を迅速に進めるための作物のグループ化の拡充などを盛り込んでいる。

登録制度見直し
 改正農薬取締法には施行から5年後に、制度を見直す付則規定が設けられている。農水省消費・安全局長の諮問機関「農薬登録制度に関する懇談会」が2008年12月に発足。
 学者や専門家ら9人を含めた懇談会が計7回の検討を重ねた。今回まとめた「課題と対応方針(案)」は、より充実した農薬行政への方向性を示した。7月3日まで国民に意見を募り、今夏をめどに方向性を固める。検討項目ごとに制度を順次変更していく。

安全性を国際基準に
 農水省が検討の前提とするのは国際水準との整合性だ。これまで日本は食品の国際規格や基準を決めるコーデックス委員会などに出席し、世界と歩調を合わせてきた。しかし、「国内の実態を優先し、施策に十分反映しきれなかった」と農水省は説明する。
 農薬は世界に広く流通し、2007農薬年度の輸出額は1115億円。今後もアジアや南米などの新興国で伸びる可能性がある。また国が農産物輸出を進める中、輸出先の防疫体制や残留農薬基準にも適合する必要がある。
農薬取締法見直し検討の主な項目
検討項目 現状 方向性
国際基準との整合性 国内の実態を優先し、国際基準を施策に反映できず 国際基準の動向を注視しながら、優先課題を検討
作物残留試験の件数 1作物につき一律2件の作物残留試験データが必要 生産量や摂取量などに応じて試験データ数を増加
作物のグループ化 マイナー作物や麦類を中心に14グループを設定 国際基準に沿って主要作物などもグループに設定
マイナー作物の登録拡大 経過措置は終了したが、国や自治体で登録拡大を支援 超マイナー作物は代替データなどで登録を促進
飼料用作物の登録拡大 農薬の移行試験は乳汁(ミルク)だけで、畜産物に設定なし 科学的な知見に基づき、試験項目や必要なデータを設定
 そこで農薬の安全性を確保するため、作物残留試験のデータ件数を、国際水準並みに増やす方向で固めた。従来は適用する作物ごとに2件必要だったのが、30万d以上の主要作物は6件以上、30万d未満〜3万dの準主要作物は3件以上と、生産量に応じて件数を増やし、国際水準並みに引き上げた。
 試験数の増加は農薬メーカーに負担を強いる上、早期の農薬登録を願う産地にもマイナス要因になる。その負担を軽減し、早期の登録を促すため、種類や形状が似た作物を一つのグループ単位で登録できる制度を拡充する方針を打ち出した。既にマイナー作物である14グループを、国際基準に沿って主要作物に広げる考えだ。

迅速な登録めざす
 農薬行政を見直している農水省の懇談会では、農薬の安全性を一層確保するため、作物残留試験件数を国際水準並みに拡充する方針を固めた。しかし、検査する農薬メーカーの負担が増え、収益性の低いマイナー作物などから撤退する動きを加速しかねないとの懸念も強い。そこで、メーカーの負担軽減策の切り札として検討に挙がっているのが、類似作物をまとめて登録できるグループ化(作物群)の拡充だ。欧米で浸透している制度で、農薬の登録や試験データを簡略化できる利点がある。

マイナー作物しわ寄せ懸念
 農薬メーカーは産地の要望に応え、多くの作物に登録の適用を広げる一方、採算性の悪いマイナー作物の適用を取り下げるケースもある。コスト上昇分を価額に転嫁できず、需要が見込める作物に絞り込んでいるからだ。試験件数を増やすだけでは、マイナー作物へのしわ寄せは必死だ。

“作物群”を拡充へ
 食生活を多彩に飾るマイナー作物の安定生産は、地域にとって重要な課題だ。懇談会はマイナー作物での農薬登録促進には、メーカーの負担軽減措置が必要と判断し、種類や形状が似た作物を一つのグループ単位で登録できる制度の拡充に注目する。
 既に、かんきつ類やなばな類、しそ科葉菜類などマイナー作物を中心に14群に分類されている。
 「生産量の多い主要作物も含め、迅速な登録のためにはグループ化の拡充を歓迎する」というのが農薬業界の一致した意見だ。
国内で設定されている14作物群 EUや米国で設定されている作物群の一例
作物群名 含まれる作物 作物群名 含まれる作物
かんきつ類 温州みかん、カボス、キンカン、伊予カン、レモンなど かんきつ類 オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど
小粒核果類 すもも(ブルーン)、あんず、梅 核果類 もも、プラム、さくらんぼ、あんずなど
ベリー類 ブルーベリー、ラズベリー、ハスカップ、ブラックベリーなど ベリー類 ブルーベリー、ラズベリー、プラックベリー、キウイフルーツなど
非結球アブラナ科葉菜類 小松菜、水菜、ルッコラなど 仁果類 りんご、西洋梨
非結球レタス サラダ菜、リーフレタス、ロメインレタス、サンチュなど 豆類(種実) 大豆、小豆、ささげなど
豆類(種実) 大豆、小豆、いんげんまめ、らかせいなど 豆類(未成熟) えだまめ、さやえんどう、さやいんげんなど
豆類(未成熟) えだまめ、さやいんげん、さやえんどう、そらまめなど 鱗茎野菜類 たまねぎ、にんにく、エシャロットなど
なばな類 なばな、オータムポエム、カキナ、チンゲンサイなど 結球アブラナ科野菜 キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなど
うり類(漬物用) しろうり、へちま、とうがん 非結球葉菜類 セロリ、ほうれんそう、リーフレタスなど
とうがらし類 とうがらし、ししとう、甘長とうがらしなど うり科果菜類 きゅうり、メロン、すいか、かぼちゃなど
麦類 小麦、大麦、そのほかの麦類 非うり科果菜類 トマト、ピーマンなど
イネ科細粒雑穀類 ひえ、きび、あわ 根菜類 にんじん、じゃがいも、砂糖だいこん、ラディッシュなど
セリ科葉菜類 セロリ、パセリ、セリ、コリアンダー、みつばなど きのこ類 しいたけ、マッシュルームなど
しそ科葉菜類 しそ、バジル、タイム、レモンバーム、ミントなど ※そのほかにも多数の作物群がある
更新が簡略に残留量が課題
 作物群で登録が取れれば、グループ内の作物全般に薬剤が使え、登録や更新の負担も軽減される。既に欧米ではグループ化を設定し、登録の負担を減らしている。国際的な食品規格や基準を決めるコーデックス委員会でも、根菜類や鱗茎(りんけい)野菜類、きのこ類など28グループを設定。世界の流れに合わせ、国内でも新設の議論を進める考えだ。
 新たなグループ化は、専門家による科学的な知見を踏まえて設定するが課題は残る。例えばトマトとミニトマト、ピーマンとししとうのように、同じ種類の作物でも表面積の違いで農薬残留量に差が出る。これらを同一グループに入れるのが妥当なのか、検討する必要がありそうだ。

  【参照】:農薬登録制度に関する懇談会等の情報について(農林水産省)
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