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特長
種類名 デンプン液剤
有効成分 ヒドロキシプロピルデンプン・・・5.0%
性状 類白色水溶性粘稠液体
毒性 普通物
安全性 製品安全データシート住友化学(株)へのリンク)
有効年限 満2年
包装 1Lx10本、5Lx2本
粘着くん液剤は化学殺虫成分を含まない、環境にやさしい「ソフト農薬」の1種です。
有効成分に食品であるでんぶんを使用し、安全性が高く、また物理的に殺虫するため、害虫の抵抗性発達のおそれがほとんどありません。
本剤は社団法人日本植物防疫協会を通じた全国の試験研究機関や社内試験での評価から、現在、ミカンハダニやカンザワハダニ、ナミハダニなどのハダニ類をはじめ、オンジツコナジラミ、タバココナジラミ、ワタアブラムシ、モモアカアブラムシなどの難防除害虫への有効性が確認されつつあります。
また、天敵類や有用昆虫などに対しては、本剤が微小サイズのものにしか効果を発揮しないことと、残効性による効果がないことから、悪影響を与えることはほとんどありません。本剤の有するでんぷんを使用したことによる
  • きわめて高い安全性、
  • 物理的機作による抵抗性発達の回避、
  • 天敵など有用動物への安全性の高さなどの特徴は、
いわゆる化学農薬とは一線を画するものであり、現在注目されているIPMなどの流れに沿ったものと考えられます。

  1. 有効成分は食品
    本剤は有効成分として食用デンプンの一種を使用しております。このため、農作物生産者および消費者に対する安全性はきわめて高い防除資材です。また、野菜類、花き類など幅広い作物で収穫の前日まで使用できます。
    粘着くん液剤に使用されるでんぷんの食品への使用例
    食品の種類 食品の具体例 配合割合(%)
    麺類
    冷凍食品
    米菓
    和菓子
    水産製品
    畜肉製品
    餅類
    フライ食品
    ソース、タレ
    スナック類
    ケーキ類
    スープ類
    即席面、冷凍面、餃子の皮
    冷凍コンニャク、冷凍卵焼き
    あられ、せんべい
    大福、かしわ餅
    練り製品、    、珍味
    ハンバーグ、肉団子
    切り餅、きんちゃく餅
    天ぷら、コロッケ、唐揚げ
    中華ソース、タレ類
    コーンカップ、たこ焼き
    スポンジケーキ、バターケーキ
    中華スープ、ポタージュ
    3−12
    2−7
    10−20
    3−7
    0.5−3
    1−3
    5−10
    0.3−3
    1−5
    1−5
    0.5−3
    0.3−3
  2. 抵抗性害虫に有効
    本剤の作用性は(薬液が虫体を被覆することによる窒息やでんぷんの粘着効果)物理的であるため、害虫類が抵抗性を発達させることはありません。また、既存の化学農薬に抵抗性を発達させた害虫にも有効です。
    ナミハダニ
    ワタアブラムシ
    カンザワハダニ
    シルバーリーフコナジラミ
  3. きわだった速効性
    本剤の殺虫効果は薬液が虫を被覆することによる『虫体の捕捉』と『呼吸阻害』の物理的作用によるものです。このため比較的短時間で効果を発揮します。散布後、10〜20分(露地条件)の短時間で散布薬液が乾き、薬液の十分かかった害虫は、乾くまでにすでに死亡しています。
    カンザワハダニの各ステージへの効果
    粘着くんは卵以外のステージのハダニ類に対し、100倍ですぐれた効果を示します。ただし、200倍まで濃度を落とすとその効果は弱まります。
    なすのカンザワハダニ(♀)に対する
    効果の発現パターン
  4. 有用昆虫・天敵に対する影響が少ない
    本剤は微小な害虫類に選択的に効果を示し、大型の天敵昆虫や有用昆虫に対する影響は、ほとんどありません。このため、ミツバチ、マルハナバチなどの花粉媒体昆虫を用いた栽培体系にも使用可能です。
粘着くんの有用昆虫(花粉媒介昆虫)に対する影響(100倍)
種類名 役割 ステージ 試験方法 死亡率(%) 試験者
セイヨウミツバチ いちご、かんきつ、おうとうの交配など ワーカー 直接スプレー 0 三重大
(生物資源)
セイヨウオオマルハナバチ トマトの交配など ワーカー スプレー後放飼 0 住友化学
工業研究部
カイコ 養蚕 4齢幼虫 直接スプレー 0 住友化学
工業研究部
粘着くんの天敵農薬に対する影響(100倍)
種類名 役割 ステージ 試験方法 死亡率
(%)
試験者
ナミヒメハナカメムシ スリップス類の捕食者 成虫 直接スプレー 80 住友化学
工業研究部
スプレー後放飼 0
幼虫 直接スプレー 57
スプレー後放飼 0
チリカブリダニ ナミハダニ、カンザワハダニ
の捕食者
♀成虫 直接スプレー 100 果樹試カンキツ
スプレー後放飼 0
直接スプレー 3
イサエアヒメコバチ
ハモグリコマユバチ
マメハモグリバエの寄生蜂 成虫 直接スプレー 46 住友化学
工業研究部
スプレー後放飼 0
オンシツツヤコバチ オンシツコナジラミ
の寄生蜂
成虫 直接スプレー 92
スプレー後放飼 0
マミー ディッピング 17
粘着くんの土壌天敵類に対する影響(100倍)
種類名 役割 ステージ 試験方法 死亡率(%) 試験者
ナミテントウ アブラムシの捕食者 成虫 直接
スプレー
0 住友化学
工業研究部
0
老齢幼虫 0 信州大(農)
ナナホシテントウ アブラムシの捕食者 成虫 0 住友化学
工業研究部
キアシクロヒメテントウ ミカンハダニの捕食者 0
ケシハネカクシ類 ミカンハダニの捕食者 ディッピング 0 熊本県果樹研
幼虫 16
14
ハイイロハネカクシ 捕食者(生態不明) 成虫 直接
スプレー
0 信州大(農)
アオオサムシ ガの幼虫などの捕食者 0
クロナガオサムシ ミミズなどの捕食者 0
オオヨツアナアトキリゴミムシ クワゴマダラヒトリの捕食者 0 住友化学
工業開発部
ヒメハンミョウ ハエ、小昆虫などの捕食者 0 信州大(農)
オオヒラタシデムシ 腐食者(ネズミの死体など) 0
ノシメトンボ ハエ、カなどの捕食者 20
アキアカネ ハエ、カなどの捕食者 20
オツネントンボ ハエ、カなどの捕食者 0
ハダニアザミウマ ハダニ類の捕食者 44 日植防研
オオカマキリ 広食性捕食者 0 信州大(農)
クロタマゴバチ科の一種 ナガメの卵寄生蜂 0
クロヤマアリ 広食性捕食者 ワーカー 0
ハナグモ 広食性捕食者 成体 0
コハナグモ 広食性捕食者 0
  1. 低い環境負荷
    デンプンは炭素、水素、酸素から構成されており、環境中ではすみやかに水と二酸化炭素に分解されます。また、同系統の物理的防除剤に比べ、有効成分の投下量は少なく、環境負荷は低いと考えられます。

粘着くん液剤の製品ページへ
(製造・販売元 住友化学(株)へのリンク)

適用害虫と使用方法
作物名 適用病害虫 希釈倍数 使用方法 使用時期 本剤の使用回数 散布液量 デンプンを含む農薬の総使用回数
野菜類 うどんこ病 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
アブラムシ類 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
コナジラミ類 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
ハダニ類 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
かんきつ ミカンハダニ 100倍 散布 収穫後〜萌芽前まで - 200〜700L/10a -
りんご アブラムシ類 100倍 散布 収穫前日まで - 200〜700L/10a -
もも ハダニ類 100倍 散布 収穫前日まで - 200〜700L/10a -
花き類・観葉植物 ハダニ類 100倍 散布 発生初期 - 150〜300L/10a -
らっかせい ハダニ類 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
かんしょ ハダニ類 100倍 散布 収穫前日まで - 150〜300L/10a -
カンザワハダニ 100倍 散布 摘採前日まで - 400L/10a -
たばこ モモアカアブラムシ 100倍 散布 収穫3日前まで 2回以内 25〜180L/10a 2回以内


使用上の注意
  1. 使用に際しては、容器をよく振ってから使用してください。
  2. ボルドー液を散布した後に本剤を散布すると薬害を生ずるおそれがあるので、使用をさけてください。
  3. 本剤は散布液が直接害虫にかからないと効果がないため、害虫にむらなく薬液がかかるよう葉の表裏にていねいに散布してください。
  4. 本剤は害虫の卵に効果がなく、残効も短いため、夏期高温時など害虫の増殖や圃場外からの飛び込みが活発なときには、5〜7日間隔の連続2回散布や他剤との輪番で使用してください。
  5. 本剤をかんきつに使用する場合は、果実に薬害を生ずるおそれがあるので、果実のある時期は使用をさけてください。
  6. みずなすに使用する場合は、果実に薬害を生ずるおそれがあるので、果実のある時期は使用を避けてください。
  7. 散布量は対象作物の生育段階、栽培形態および散布方法に合わせ調節してください。
  8. 展着剤は加用の必要はありません。
  9. 直射日光をさけ、密栓して保管してください。なお、低温度(0℃以下)で保管すると凍結し、溶解後効果が低下するので、このような条件下では保管しないでください。
  10. 適用作物群に属する作物又はその新品種に本剤をはじめて使用する場合は、使用者の責任において事前に薬害の有無を十分確認してから使用してください。 なお、農業改良普及センター、病害虫防除所等関係機関の指導を受けてください。
製造: 住友化学(株)