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岩渕農薬株式会社 代表取締役社長 岩渕 健二

岩渕農薬は1977年、岩渕薬品の農薬事業部を分離独立させる形でスタートした。設立当初、約十億円だった売上規模は、昨年実績で五十二億円まで拡大。農薬に特化した卸としての経営内容は業界の中でも出色の存在だ。
岩渕健ニ社長は、「農薬卸業として常に一歩先を行く経営指標を目指してきたことが、現在の実績に結びついている。“餅は餅屋”を貫き、マンパワーを農薬に集中させて生産性の向上とコストの低減に取り組んできた」と、これまでの経営戦略を振り返る。

商物分離、IT化で高効率を追求

請負防除事業や資材販売を除くと、同社売上の95%は農薬販売が占めている。わが国有数の農業生産額を誇る千葉、茨城両県を主な商圏としているだけに、農薬の種別構成比も水稲除草剤17%、殺虫剤20%、殺菌剤13%、土壌処理剤30%、茎葉処理除草剤20%とバランスがいい。
群を抜いているのが生産性の高さだ。営業マン一人当りの年間売上は、業界平均と比べてほぼ二倍の約二億三千万円。また、販売管理費も6%台と低く、これも業界トップクラスの水準となっている。
さらに、一層の経営効率化を目指して取り組んでいるのが商物分離である。技術営業の充実や一人当りの営業エリア拡大を進める一方で、物流についてはできる限りアウトソーシング化を促進している。ITへの取り組みも早かった。岩渕薬品の電算センターの力を借りて、末端セールスにモバイル端末を導入、受発注や製品情報の提供などにフル活用している。
農薬に特化している同社だけに、技術支援体制の質の向上にはとくに力を注いできた。取引関係のある主な農薬メーカー25社の強力を得て「ひまわり会」を組織。これを活動母体に、顧客を対象にした勉強会を開催して、農薬の知識と技術の普及、啓蒙活動に取り組んでいる。
こうした経営努力を基盤に、「目指すのは販売管理費5%台の達成。商品のプロモーションや物流、金融など、卸本来の機能をメーカー側にアピールしつつ、中長期的に農薬専業卸として生き残っていける経費ラインがその当りの水準では」と岩渕社長は語る。

小売店育成などで新業態を模索

農薬の流通ルートでは従来、系統と商系とが住み分けできていたが、系統のニ段階制移行に伴い、今後はこの構図が大きく様変わりしていくと岩渕社長は予測する。「これまでは一定のパイをめぐる商系同士のシェア競いで済んでいたが、今後はどうか。農薬市場の縮小化傾向、系統の二段階制移行など最近の情勢を見るにつけ、商系卸全体の方向性として新たな業態を確立せざるを得ない大きな転換期に差し掛かっているのではないか。」
同社が進める新業態とは、農家に直結した川下り展開の強化にほかならず、小売店への資本投入や育成、農業自体への参入などで布石を打っている。

請負防除などで農家との接点強化

不耕起乾田直播による水稲の請負作業を開始して農業に参入したのは一昨年から。試行段階の作付け面積は約5fで、徐々に拡大の方向にある。関連子会社、千葉スカイテックの請負防除を通じても、農家との接点は年々密度の濃いものになっているという。農業生産法人の株式会社化などを見据えた長期ビジョンの一環といえそうだ。
「医薬卸ではすでに、営業範囲を全国に広げたナショナルホールセラーや地域ブロックでの再編が現実のものとなっている。農薬卸も同様の流れにあり、当社も関東ブロックを見据えた発想で展開していきたい」と岩渕社長。企業連携の動きが活発化しつつある中、「仮に売上二百億円の農薬卸ができたとしても、規模の拡大だけなら連携の意味はない。商系卸としての機能と存在意義がユーザーに認知されるのかどうかが判断の基準」と業界再編を展望する軸足にいささかのブレもない。

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