「しか」ない技術、商品、情報でアグリビジネスを切り拓く
東海物産株式会社 常務取締役 野村 忠司

「農業は夢や希望に溢れていなければ」をいつも口にする東海物産の代表取締役社長 青木 邦夫 氏。同氏はEC三重支部の支部長を努めている。今年から新潟県にある吉田農事(株)の社長も兼務し多忙なために、代わって常務取締役の野村忠司氏に同社の農家サイドに立ったユニークネス(独創性)かつ環境保全型の取り組みを伺った。

東海物産に「しか」ない独自商品のラインナップを強化

農業の多面的な価値を省みず、劣勢産業や効率の悪い産業として否定的に捉える見方も少なくはない。米の減反、輸入農作物の増大、農産物価格の低迷、また基幹的農業従事者300万人中、60歳以上が5割も占める就農者の高齢化、そして後継者難と、確かに農村や農家を取巻く環境は厳しいものがある。しかし現場においては活性化を目指し、より潤いを求める模索や実践が行われている。そんな農村や農家の「相談に乗る」なかで東海物産は、農薬や様々な資材を扱う卸問屋の枠を越え、農業や農家の総号プロデューサー的な役割を果しつつある。
「農家の悩みを解消しているだけです。」と東海物産・常務取締役の 野村 忠司 氏。いちごの場合、「年内により多くを収穫するため、苗をわざわざ高冷地で育てる作業が煩わしい」という声には、自分の底先で育成できる「冷風冷水水耕式いちご夜冷設備」を中部電力と共同開発した。「土作りの中で雄肥づくりが面倒。屈む姿勢がつらく、腰痛になる」には、デンマーク・グロダニア社の溶液栽培などで用いる岩を原料にした「グロダンロックウール」を高設ベンチ式で提供する。また大粒で日持ちが良く、糖度が高いうえに芳香が強い新品種の「サンエンジェル」(国内の種苗登録を申請中)をイスラエルから持ち帰り、新たないちご産地の形成に乗り出している。一方トマトやナスの「花にホルモン処理を施したり、受粉の手間がかかる」には、ベルギー・バイオベスト社の交配用マルハナバチ「ハニートン」を提供する。ざっとこんな具合だ。
あくまで農家の視点で。何を望んでいるか従事する者の立場になって。だが国が考えるとこうはいかない。ミカンを例に挙げるなら、スピートスプレヤーという機械を導入すれば助成金が出る。「しかしミカン畑の6割が15度以上の傾斜地にあるんです。そんなところでこれを自在に動かすことなど不可能。通路も必要で15アールなら10アール分、2割も耕作地を削るんですよ。おまけにオペレーターが防毒マスクを着け、作業する」。現状や実態をまったく把握、理解していないと言わんばかりに言葉が強まる。そこで東海物産は、「ロータリークラー」をオリジナル製作した。無人で防除、散水、施肥などができ、場所を選ばず設置可能で、きつい労働から解放する。「使い勝手、安全面、経済性、いずれも満たしています。着眼点が違うんです。」
東海物産は我が国で初めて産業用無人ヘリコプターによる農薬の空中散布を手駆けるなど、独創的な商品や事業を打ち出してきた。海外取引先から仕入れた輸入品や、無人防除施設のように企画を立て、製造をアウトソーシングした商品の発売となり、同社に「しか」ない独自商品のラインナップを強化している。「うちだけの技術、商品、情報、経営、ノウハウを確固たるものにし、具体的には総売上のオリジナル品シェア20パーセント以上の達成を目指しています」。

農薬は必要最低限の時代。環境にやさしい商品にシフト。

そもそも農薬の卸問屋として創業し、現在も売上構成比の4割強をそれが占める。農作物を効率よく安定して収穫するために、防疫管理は欠かせない。しかし世の中の傾向は、有機農産物が注目されるなど、必要最小限の農薬の使用にあることは否めない。JAの合併、ホームセンターの台頭など流通の在り方も農薬販売の過渡期に差しかかり、根崩れを起こしてきた。
「東海物産は卸売業で小売りはしないという方針。価格競争に食い込んで行くには限界があります。こうしたなか合併JAなどから必要とされるためにはどうするか。JA市場の分析を行い、地域の問題を作物別に洗い出し、この解決のための具体策を提案する幅広いオリジナル商品、技術、総合力がなければ対応できません」。
商品の特長はユニークネス(独自性)と環境保全の流れをキャッチしたエコロジーなものである。春には地方の新聞などに鈴鹿川への農薬の垂れ流しが記事として取り上げられた。そこで東海物産の農薬廃液処理装置に引き合いが来る。またメスのフェロモンで誘引し、オスを捕獲。繁殖を防ぐことで、殺虫剤の使用を減らすことができる環境保全型防除システム「ルア^トラップ」や、ビニールハウスの温度、湿度をコントロールし、病害の発生を抑え、農薬の使用量を減少することができるハウス内気流発生装置「エアクイーン」などの出番となる。同社の環境部では、焼却機や生ゴミ処理消減機、空缶分別圧縮処理機などリサイクル関連資材や清掃資材も取り扱っている。「社会の現象がビジネスチャンスになるんです」。2005年、臭化メチル全廃に備え、その代替製品である蒸気土壌消毒機も用意している。「環境規制を見定めて素早く対応しないと生き残っていけません」。
同社は53期にわたって一度も赤字は出していない。だが常に危機感を持って先手を打って対応してきたという。そうした精神は社内にも浸透している。社員の意識も高く、ほぼ全員がノートパソコンを使いこなす。一斉に要件を発信し、各々が日報を返信する電子メールのシステムが整っている。利益を重視するため、部門や支店・営業所ごとの月次決算を開始した。業績評価も独自商品をより販売したかにウエートを置いている。「三重県の(農業の)場合、危機意識が希薄なんですね。昭和4、50年代まで上手く機能していた。ところがコメの減反政策への取り組みや、温室ミカン、お茶の二次加工による缶やペットへの対応に遅れ、ナンバーワン産地づくりを怠けた。関西、東海の商圏を擁し、土地も気候も恵まれ過ぎているんですね」。こうした農家や従事する人々の新しい動きを促す力になっていくのが、東海物産である。社長は冊子の「今月農業」7月号で「日本の農業を世界の基準で見つめ直し、(中略)農業を総合プロデュースしていく実績を一つひとつ積み重ねて行きたい」と語っている。「夢と希望にあふれた環境を作り、寄与、貢献するのが役割だ」とも。

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