自給率柱に3兆円・・・農水省、水田活用526億
【農林水産予算概算要求のポイント】
|
- 国内の食料供給力の強化
- 米粉・飼料用米や麦・大豆拡大に助成(526億円)※
- 転作推進に助成(1477億円)
- 耕作放棄地の再生利用に助成(230億円)※
- 国産原材料の供給力強化(80億円)※
- 農林水産分野の原油・肥料・飼料価格高騰対策
- 肥料・燃油高騰分を2分の1補てん(11億円)※
- 肥料を減らす栽培に誘導(12億円)※
- 配合飼料価格安定対策事業(110億円)
- 農山漁村の活性化
- 子供の農山漁村体験を促進(8億円)※
- 鳥獣害防止総合対策(28億円)
|
農水省は8月27日、2009年度農林水産予算の概算要求をまとめた。総額は2兆9967億円で、08年度の当初予算を18.6%上回るが、概算要求ベースでは3.2%減。食料自給率の引き上げに向け、米穀や飼料用など新規需要米や大豆、麦などの作付け拡大に助成金を交付する「水田等有効活用促進対策」に526億円(新規)を計上するなど、国内の食料供給力の強化に重点配分した。ただ、与党から財源が不十分だとして、08年度の補正予算などでの上積みを求める意見が強まっている。
耕作放棄地、再生利用230億円
7月の概算要求基準(シーリング)に食料・資源・エネルギーを重視する考え方が盛り込まれたのを踏まえ、同省は国内の食糧供給力の強化に3025億円(前年度当初予算比1189億円増)を要求した。
水田等有効活用促進対策のほか、産地づくり交付金を衣替えする「産地確立交付金」に1477億円(前年度当初予算並み)、耕作放棄地の再生利用に交付金を交付する「耕作放棄地等再生利用緊急対策交付金」に230億円(新規)などを盛り込んだ。
昨年12月の米政策の見直しでは、生産調整拡大への助成が単年度措置だったことから、生産現場に浸透しなかった。このため、今回は09年度〜11年度の3ヵ年対策として求めている。同省によると、これらの予算措置が認められれば、食料自給率の向上効果は「0.5〜1%程度になる」という。
水田等有効活用促進対策の助成金単価は米粉、飼料用米などの新規需要米は10e当たり5万円、麦、大豆、飼料作物は同3万5千円。麦、大豆は経営所得安定対策相当額を助成する。
耕作放棄地交付金の単価は、障害物除去や深耕などは荒廃の程度に応じて同3万〜5万円、土壌改良は同2万5千円などとしている。
一方、「肥料・燃油高騰対応緊急実証事業」に11億円(新規)を求めている。燃油と化学肥料の使用量をそれぞれ2割以上低減する農業者グループに、燃料費と肥料費の増加分の2分の1を補てんする。
平成21年度 農産安全管理予算概算要求の概要(総括表) |
事 業 名 |
平成21年度要求額
( )内は前年度予算額 |
(事務費) |
|
・農産安全管理対策事務費 |
|
遺伝子組換え農作物実態調査事務費(拡充) |
36,185(14,151) |
|
|
(委託費) |
|
・遺伝子組換え生物リスク管理強化事業委託費(新規) |
41,406(0) |
|
|
(交付金) |
|
【食の安全・安心確保交付金】 |
2,361,877(2,345,184)
の内数 |
・農薬の適正使用等の総合的な推進(拡充) |
・土壌有害物質のリスク管理の推進(継続) |
|
・硝酸塩のリスク管理の推進(継続) |
|
|
|
(委託費)<消費・安全政策課計上>
・食品安全確保調査・試験委託費 |
1,134,160(961,490)
の内数 |
|
農薬の適正使用等の総合的な推進(拡充)
|
- 対策のポイント
農薬使用者・販売者等を対象とした講習会の実施、記帳の指導、農薬の残留状況の確認等、農薬の適正使用を徹底するための取組みを推進するとともに、食の安全の確保に係る行動指針等の策定に向けた原因究明及びリスク管理措置の評価・検証、及び作物残留性試験の信頼性確保に係る適正実施に向けた試験従事者等への研修の取組みを支援します。
- ポジティブリスト制度
食品衛生法に基づき、原則として国内外で使用されている全ての農薬について、残留農薬基準を設定し、基準を超える食品の販売等を禁止する制度です。
農薬については、引き続き、農畜水産物の生産段階において適正な使用や管理を行なうことが重要です。
- 農薬登録試験等の国際調和
農薬は、農薬取締法に基づき登録申請時に薬効、薬害、毒性及び残留性に関する試験成績の提出が必要です。
上記試験の信頼性確保の方法は、国際調和が求められていることから、平成20年4月から作物残留性試験のGLP制度が導入されました。
- 政策目標
農薬の安全かつ適正な使用の確保を通じた農畜水産物の安全の確保
- 事業内容
- 農薬の適正使用・管理の徹底
農薬の適正使用・管理に係る指導を徹底するために実施する取組を推進します。
具体的には、以下の活動に対して支援します。
- 農薬使用者への講習・指導及び使用等実態調査、農薬適正使用アドバイザーの育成、農薬販売者への指導の実施、指導等の進捗状況の管理
- 農薬の飛散状況、農作物及び土壌等への残留状況等の調査
- 埋設農薬の処理に係る行動計画等の管理
- 行動指針等の策定に向けた原因究明及びリスク管理措置の評価・検証
食の安全及び消費者の信頼確保並びに食料の安定的な供給を図る観点から行なう行動指針等の策定のために、土壌調査や農作物のモニタリングによる実態把握及び原因究明、リスク管理技術の評価・検証を行ないます。
- 作物残留性試験の信頼性確保に係る適正実施に向けた試験従事者等への研修
- 事業実施主体・・・都道府県、市町村、農業者団体等
- 交付率・・・定額(1/2以内)
- 事業実施機関・・・平成17〜21年度
- 平成21年度予算概算要求額
食の安全・安心確保交付金・・・2,362(2,345)百万円の内数
|
土壌有害物質のリスク管理対策の強化(継続)
|
- 対策のポイント
農産物の安全性を確保するため、土壌有害物質のリスク低減技術の評価等を行い、産地における適切な対策の実施を推進します。
- カドミウム低減技術の例
- 【吸収抑制技術】
・土壌中の酸化・還元状態やpHをコントロールして農作物のカドミウム吸収を抑制
・カドミウムの吸収量の低い品種の選択・導入
- 【土壌浄化技術】
・カドミウムを吸収しやすい植物を用いて土壌からカドミウムを回収
・薬剤を用いて土壌中のカドミウムを溶けやすい形にして土壌を水で洗浄
- 政策目標
産地における土壌有害物質のリスク低減に向けた取組の拡大
- 事業内容
- 土壌有害物質のリスク低減技術の評価等
- 土壌データに基づく潜在的な農作物の汚染リスクの推定手法の検証
- 恒久対策技術
・カドミウム高吸収植物を用いた土壌浄化技術
・薬剤による土壌洗浄技術
- 営農対策技術
・豆類、野菜類等に係るカドミウム吸収抑制技術
・クリーニング作物とカドミウム吸収抑制技術を組み合わせた作付体系
- 農用地土壌汚染防止法に基づく対策計画策定に当たって必要な調査等の実施
- 事業実施主体・・・@都道府県、市町村、農業者団体等 A都道府県
- 交付率・・・定額(1/2以内)
- 事業実施機関・・・平成17年度〜平成21年度
- 平成21年度予算概算要求額
食の安全・安心確保交付金・・・2,362(2,345)百万円の内数
|
硝酸塩のリスク管理の推進(継続)
|
- 対策のポイント
@地域に適した硝酸塩低減化技術の確立
A消費者等の要望を踏まえたより適切なリスク管理対策の検討
等の地域の取組を支援します。
- 硝酸塩の影響
硝酸塩については、体内で健康に影響を及ぼす亜硝酸性窒素に変化する可能性が指摘されており、野菜に含まれる硝酸塩についてもリスク低減の観点から、収量や品質を損なうことなく硝酸塩を低減化させることが求められています。
- 国のプロジェクト研究で開発された新しい硝酸塩低減化技術の一例
- 【硝酸塩を蓄積しにくい品種の選定(ほうれんそう)】
- 硝酸塩を蓄積しにくい品種は、硝酸塩濃度の高い品種に比べ1/9の濃度
- 【収穫前の低温管理による低減化(こまつな)】
- 通常栽培のものに比べると、硝酸塩濃度は約1/3
- 【施肥技術による硝酸塩低減化】
- ゆっくりと肥料効果が出る肥料や種子直下に施肥する局所施肥の組合せ等により、農産物が窒素分を過剰吸収することを抑制
- 政策目標
@農業者の硝酸塩のリスク管理に対する知識を高める。
A事業実施地区において対象品目の硝酸イオン濃度を慣行栽培より平均10%低減する。
- 事業内容
都道府県等が新たな低減化技術の導入等により、その地域に適した農産物中の硝酸塩を低減化するためのリスク管理対策を確立する取り組みを支援します。
<具体的な取組内容>
- 硝酸塩のリスク管理技術の現地検証
- 硝酸塩のリスク管理に係る学識経験者、消費者等の意見を踏まえた情報交換会の開催
- 事業実施主体・・・都道府県、市町村、農業者団体等
- 交付率・・・定額(1/2以内)
- 事業実施機関・・・平成18年度〜平成21年度
- 平成21年度予算概算要求額
食の安全・安心確保交付金・・・2,362(2,345)百万円の内数
|
|