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「食品安全を守る【特集】」


1. 食の安全独立委1000人・・・2002/4/20 日経
2. 食品衛生法を全面改正・・・2002/5/15 日本農業新聞
3. 食の安全試される独立委・・・2002/5/31 日経
4. 食の安全 独立委員会新設へ・・・2002/6/7 日経
5. 食品虚偽表示早期に公表・・・2002/6/7 日経
6. 食の安全へ独立委・・・2002/6/11 日経
7. 環境省が農薬の登録基準見直し・・・2002/6/12 読売新聞
8. 農薬200種に残留基準・・・2002/7/2 読売新聞
9. 基準超す残留農薬 特定農産物禁輸も・・・2002/7/12日経
10. 食品安全改正案参院へ・・・2002/7/20日経
11. 製造年月日復活を・・・2002/7/30 日経
12. 食品期限表示用語統一を・・・2002/7/30 日経
13. 遺伝子使い調査−厚労省、DNAチップ開発へ・・・2002/8/26 日経
14. 無登録農薬使用に罰則検討−農水省、30都県で販売確認・・・2002/8/28 日経
15. 農薬取締法改正について(案)・・・2002/10
16. 食品安全基本法可決・・・2003/5/16 日経
17. 動き出す食品安全委−消費者の監視欠かせず・・・2003/6/13 日経
18. 品安全委、今日発足・・・2003/7/1 日経
参考ページ『「食」と「農」の再生プラン』の具体化

1. 食の安全独立委1000人・・・2002/4/20 日経新聞
BSE(牛海綿状脳症)問題の教訓を踏まえ、政府・自民党が検討している食品安全を守る新独立機関の原案が明らかになった。
独立委員会を内閣府に置き、民間から委員を登用する。職員数は1000人程度で來夏にも発足させる。新機関は食品の健康への影響を科学的に評価し、各省庁に規制を勧告する。これに伴い、農林水産省の外局の食糧庁は廃止する方向だ。政府は新機関設置を盛り込んだ食品安全の基本方針を定める新法案を今秋の臨時国会に提出する。新機関は公正取引委員会のように独立した行政委員会として内閣府に置く。BSE問題で農水省の対応が生産者の保護に偏ったとの反省を踏まえ、農水省から独立し消費者の立場からの食の安全対策をとられるようにする。
首相が任命する新機関の委員は5人前後とし、政策は合議制で決める。委員には民間の科学者を登用するほか、消費者団体の代表を加える案もある。委員会は調査対象の選択など基本方針を決め、実際の調査は民間の科学者出身の専門委員が当たる。消費者の口に入る食品だけでなく健康に影響を与える農薬や家畜飼料の安全性も評価する。BSEなどの問題を早期に調べ、被害を未然に防ぐ体制を整える。現在は農水省が担当する食品行政の企画機能の一部も新機関に移す。
委員会の下には事務局を置き、農水省や厚生労働賞から食品安全の専門家など1000人程度を移す。安全性評価の実務、海外情報の収集、消費者への情報提供もする。問題企業などを調べる専門の調査班を置くことも検討する。
新機関は安全性に問題がある食品などへの規制づくりを農水省や厚労省などに勧告する。各省庁が勧告に従うように新法で義務づける。新たな行政機関を増やすのは「行政改革の趣旨に反する」との批判が強いため、新機関発足にあわせ、農水省の外局に食糧庁を廃止する案が有力だ。
9600人の職員を抱えコメなどの生産・流通を担当してきた食糧庁はコメの全量管理をめざした食糧管理法の廃止や検査業務の民間開放で役割が低下している。食糧庁廃止後、需給調整などは農水省本省に移管する。
2. 食品衛生法を全面改正・・・2002/5/15 日本農業新聞
自民党厚生労働部会の「食品衛生規制に関する検討小委員会」は2002年5月14日、食品衛生法を全面改正する「食品安全に関する信頼確保のための改革提言」をまとめた。
提言のポイント
国の責務の明確化
食品衛生法の目的を、食品の安全性確保に変更。
基準の整備
農薬の登録と同時に残留基準を設定。
基準未設定の農薬は食品への残留を原則禁止。
食品表示制度の一元的な見直し。
監視
検査の強化。
繰り返しの基準違反は検査せずに輸入禁止。
民間を活用し、輸入食品の監視体制を強化。
農薬残留の基準違反を繰り返す場合は検査せずに輸入禁止することや、残留基準が設定されていない農薬の残留は認めず、その農薬残留がみつかった食品の輸入は原則禁止するなど、輸入食品への監視強化を求めている。食品表示制度の二元的な見直しも促した。15日にも、食品安全行政の大枠を話し合う自民党の「食の安全確保に関する特命委員会」に提出する。
食品安全の「リスク管理」を徹底するため食品衛生法の目的を、食品衛生確保から食品の安全確保に変更。国と地方自治体が食の安全に責任を負うことを明確に出している。
農薬などの安全性では、食品への残留基準を定めなければ使用登録を認めない方針で、残留基準が設定されていない農薬の残留をを原則禁止する制度の創設も打ち出している。習慣的に使って来た天然添加物も安全評価の対象とする。優先的に125品目を評価し、問題があれば即時使用禁止する法規制を求めた。
農水省が管轄する農薬取締法を含めて法改正することを提言している。
輸入食品に対する国の検疫体制の強化も促した。ある国の特定食品が繰り返し安全基準に違反した場合、検査なしにその国の特定食品を輸入禁止する制度の導入。急増する輸入食品に対応するため、民間法人を活用することも求めている。
健康食品の悪影響が懸念される場合に流通を禁止する法整備や紛らわしい健康食品の広告の規制なども打ち出した。
食品表示は、厚労省の食品衛生法と農水省のJAS法で規定し、消費者に混乱をもたらしている。このため提言は、「賞味期限」「品質保持期限」など、消費者が混乱しやすい表示部分を「合理的な範囲で」調整するよう求めた。
提言は厚労省管轄の分野に限ったもので、今後の取り扱いは、食品安全に関する包括法や新たな食品安全機関の設立などを検討している「食の安全確保に関する特命委員会」にゆだねられる。
3. 食の安全試される独立委・・・2002/5/31 日経新聞
政府は2002年5月31日、食品安全行政に関する関係閣僚会談を開き、農水省や厚生労働省に必要な政策を勧告する「独立委員会」の新設を協議する。来年度中に内閣府内に設置。BSEの教訓を踏まえ、国内の事故情報などを分析し、食品行政の監視にあたる。ただ食品流通の監視機能などは既存省庁に残す方向で、部隊なき「司令官」になるおそれもある。
BSE調査検討委の提言と政府の実行状況

提言 実行状況
行政組織見直し 食品の安全性を評価する専門家を中心とした新機関の設置 8月末の概算要求までに食品安全委員会(仮称)の組織、人員規模などを固める。
消費者保護の法整備 消費者保護の優先をうたう包括的な新法の制度と関連法の改正 今秋の臨時国会にも新法を提出。食品衛生法や飼料安全法、家畜伝染病予防法などの改正を検討。
食品の表示制度改革 虚偽表示をした企業への罰則強化 違反企業の罰則強化と企業名の公表早期化を盛り込んだJAS法の改正案を今国会に提出。監視担当者も増員。
新たな「食品安全委員会」(仮称)の設置は、BSEや病原性大腸菌O(オー)157、遺伝子組み換えのように食品を通じて体に影響を与える可能性のある問題を早期に発見し、適切な予防策をとることが目的。
BSEは英国などで広がり、国際機関が警告を発したにもかかわらず、農水省の対応が遅れて発生を防げなかった。
委員は科学者や専門家5〜10人程度で構成し、どんな問題を重点的に調べるかなどの基本方針を決め、実際の評価は新委員会に登録する非常勤の専門学者らが担当する。
新たな規制などの必要があると判断した場合は、農水、厚生労働省などにそれを勧告する。
もしBSE問題前にこの委員会があったなら、BSEが輸入肉骨粉を通じて国内に入り、人体にも影響を与える恐れが大きいと判断。輸入への監視強化や、肉骨粉のえさをあたえないよう農水省に勧告するといった対応が考えられる。「島国だから伝播(でんぱ)しにくい」と、危険性を軽視する事態が避けられる。
委員会には事務局を設けて国内外の情報収集や科学的評価の実務に当たるほか、各省が勧告通りに規制をしているかなど行政の監視もする。
新たな食品安全行政の仕組み
ただ、食品流通の現場調査にもあたり、企業が法令を順守しているかなども監視するという当初の案は、既存の保険所などの機能と重複するとして取りやめになる方向になっている。
1000人以上が有力だった新委員会の規模も数百人程度に縮小される見通しだ。
委員会の事務局も、農水、厚労両省の出向者中心の構成となり、常勤の科学者は委員ら少数にとどまる公算が大きい。
具体的な組織や各省から移す権限は6月に準備事務局を設け、8月までに詰める。専門委員が食品にかかわる危険性を指摘したとしても、流通実態を正確に把握していなければ適切な政策は打ち出せない。出向者が出身省庁の利害にとらわれず、仕事ができる組織にすることも難題だ。
生産者への打撃に配慮して、消費者にとっての危険情報を軽視したことが、BSE問題の教訓。汚名を払拭する新機関になるかどうか、不透明さは残っている。
情報収集能力カギに・・・
編集委員 塩谷 喜雄
つくり手や売り手の論理が優先してきた日本の食品安全行政にとって、消費者の健康を柱に据えたリスク評価委員会の新設は、革命的な出直しの第一歩といえる。BSE問題で露呈した、退廃しきった管の体質を転換する喫機にもなりうる。
課題は二つある。第一は新しい独立委員会がどれほどの情報収集能力と、調査権限を持つのかという点だ。遺伝子組み換えなど新技術が次々に登場し、世界中から多種多様な食材が日本にやってくる今、食品のリスク評価には、情報の量と質が決定的に重要である。
農水省や厚労省など旧来の行政組織から提供される情報に一方的に依存するのであれば、お役所の方針の追認的な仕事に終わる可能性もある。食品の安全に関する包括的な法律の中で、独立委員会の調査権限を明記する必要がある。
第二の課題は、科学的で合理的なリスク評価の結果を、リスクマネジメントを担当する役所が、どれだけ尊重するかということである。BSE問題でも、関連委員会の専門家二人が1996年時点で肉骨粉の法的な禁止を提言していたのに農水省はそれを無視した。
いかに科学的な結論でも、それが行政にとって都合が悪ければ握りつぶしておいて、「総合的に検討した結果の判断」などと開き直る。こんなことを許さない仕組みが欠かせない。独立委員会の勧告権と、行政機関側の尊重義務を、法的に明文化すべきではないか。
ドイツ、フランス、欧州連合(EU)などが、相次いで食品リスク評価の独立機関を設けたのは、諸費者の立場に立った安全行政の確立という狙いとともに、遺伝子組み換え食品に代表される対米農業摩擦への対応という意味合いもあると言われている。
安全のためのリスク評価が保護主義の道具と化さないよう、委員会の独立性と評価の透明性を確保することに、細心の注意を払うべきだろう。
4. 食の安全 独立委員会新設へ・・・2002/6/7 日経新聞
食の安全に関する独立委員会の新設がほぼ固まった。既存の農政や衛生行政とは切り離して食品の安全評価を専門に行う機関で、科学者や専門家を中心に構成される。科学を武器にした官の規制は安全確保の有力な手段だが、生産・流通・販売など、供給者側の自律的な倫理や規範の確立も急務だ。
リスクを評価する組織とリスクを管理して日常的に規制を実行する組織を分離する。これが最近の欧州流だ。英、独、仏、欧州連合(EU)などが相次いでリスク評価専門の独立機関を設置している。
米国は食品医薬品局(FDA)という数万の職員を抱える巨大組織がリスク評価とリスク管理に加え、消費者へのリスクコミュニケーションまで受け持っている。科学的な知見が合理的な規制につながり、極めて機動的な対応が可能だ。
評価と管理の分離は、リスク評価から政策的・政治的な配慮を排除する狙いがある。くもりのない科学的な目でリスクを評価し、行政の思惑などで危険が覆い隠されたり見過ごされたりしないようにする。
BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の上陸を、農水官僚の怠慢と失政によってやすやすと許してしまった日本では、評価と管理の分離という選択は当然だろう。
最初の感染牛が見つかる直前まで、日本に危険は無いと言い張り、リスク評価能力を欠いた農水次官が防除の責任者だったのだから、水際でいの危機回避などできるはすもなかった。
独立委員会の設置を提言したのは農相と厚労省の諮問機関だった「BSE問題調査検討委員会」である。その報告書の原案には、独立委員会の新設に加え、農水族議員の影響排除なども盛り込まれていた。食の安全確保には、厳正で科学的なリスク評価のほかに、政官業の負の結合を切る必要があることを、報告書は指摘している。
肉骨粉について欧州や世界保健機関(WHO)から危険性を指摘された時点で、行政が法的規制に踏み切らなかったことは確かに重大な失政で担当者は法的に責めを負うべきである。
そして、危険性が指摘されているのを知りつつ、肉骨粉やその関連製品の回収をしなかったばかりか、生産や販売を続けていた業界の倫理性にも厳しい批判が向けられている。次々に表示の偽装が発覚し、食品産業への不信は広がっている。お上の規制を待つのではなく、国民の健康に直結する産業として自律的・自覚的なリスク管理の仕組みを確立することが急務だ。
全頭検査以前に処理された国産牛肉について電光石火、国による買い取りが決まった。感染牛の発覚を恐れて廃用乳牛の食肉処理が進まないと見るや都道府県や農協で預かる制度が生まれる。さすが日本最強の族議員といわれるだけある。
リスク評価機関の独立は食の安全確保の第一歩、政官業の癒着を断つのが、ゴールである。
5. 食品虚偽表示早期に公表・・・2002/6/7 日経新聞
食品の安全に対する関心の高まりを背景に、農水省など関係省庁が食品を虚偽表示した企業の早期公表に動き始めた。農水省は7月から虚偽表示の事実を確認した段階で、企業名を公表する方針。公正取引委員会も不当表示行為をした企業名の公表に前向きになっている。情報公開の強化によって、虚偽表示をなくす狙いがある。
法律名
(所管官庁)
対象 罰則
改正JAS法
:7月施行予定
(農水省)
すべての飲食料品 1年以下の懲役又は個人100万円以下、法人1億円以下の罰金
食品衛生法
(厚労省)
公衆衛生の見地から表示が必要な食品、食品添加物 営業許可の取り消し、6ヶ月以下の懲役又は3万円以下の罰金
景品表示法
(公取委)
事業者が一般消費者に提供する商品 命令に従わない場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金
食品表示に関連する法律は主に3法ある。所管省庁の縦割りの弊害は残るものの、各省は企業名の早期公表が消費者保護につながると見ている。
農水省は従来、虚偽表示した企業の公表について猶予期間を設けていた。虚偽表示の罰則強化を盛り込んだ改正JAS法(農林物資規格化・品質表示適正化法)が7月にも施行されるのに併せ、原則としてすぐに公表する新ルールを導入する。
同省は雪印食品の虚偽表示事件の際、企業側の同意を得て、業務改善指示の段階で企業名を公表した。違反を公表された企業は消費者の強い反発を招く。企業名公表の早期化が虚偽表示の防止につながるとみている。
一方、公取委が2001年度に出した不当表示に対する処分のうち、必ず名前を公表する「排除命令」は前年度より7件多い10件となった。業者の名前を出す場合と出さない場合がある「警告」についても「不当表示によって消費者に謝った認識が広がっている場合には、企業名を公表していかざるを得ない」(経済取引局)という姿勢に変わってきている。
2001年度に出した警告のうち、名前を公表したのは前年度より8件少ない7件にとどまったが、雪印食品の問題が発覚してからは対応のテンポを速めている。雪印食品に排除命令を出した3月8日以降、食品の不当表示に対する排除命令、警告は9件。4月17日に警告を出した熊本県の小売業者については、食肉に不当表示に対する警告で初めて業者名を公表した。
厚生労働省が所管する食品衛生法では公表に関する規定はないものの「原則として違反した企業名を公表している」(監視安全課)。先月末に発覚した「協和香料化学」(東京都品川区)が無認可の添加物を含む香料を出荷していた問題は同省も工場のある茨城県も企業名を公表した。
6. 食の安全へ独立委・・・2002/6/11 日経新聞
政府は11日午前の食品安全行政関係閣僚会議で、食品の安全確保をめざす独立委員会を設置する方針を正式に決めた。
委員会は来年夏までに発足、科学的分析をもとに必要な規制を関係省に勧告する。BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)問題で揺らいだ食品行政の信頼回復が狙い。小泉純一郎首相は同日、食品安全行政見直しの担当閣僚に村井仁防災担当相を任命した。
閣僚会議は委員会を設置する代わりに、役割が低下している農水省の食糧庁を廃止する方針も決めた。中央省庁再編以来の大幅な組織改革。この日は消費者重視の食品行政を進めるための「食品安全基本法案」(仮称)を来年の通常国会に提出することも確認した。
規模200〜300人に
名称は「食品安全委員会」の予定。生産振興行政を担当する既存官庁から独立し、消費者重視の政策を目指すため内閣府に設置する。内外の情報を収集し、食品添加物や農薬、遺伝子組み換えなどが食品を通じて人体に与えるリスクなどを科学的に評価、リスク管理にあたる農水省や厚生労働省に規制を勧告する。
委員は数人で科学者などを充てる。事務局は200〜300人規模で、事務局長は農水、厚労省以外の官僚や民間から起用する案が浮上している。
準備室長は経産省出身
政府は11日付で新委員会設立の準備室を内閣官房に設置した。委員会の権限や組織、基本法案の内容を詰めるほか、委員の人選なども担当する。準備室長には経済産業省出身の小川洋内閣審議官が就いた。
農水省も再編
委員会設立に合わせ農水も組織再編に踏み切る。産業振興を担当する生産局から規制業務を切り離し、委員会の勧告を受けて農家や企業を規制する新たな局を設ける。
食糧庁廃止に伴い備蓄米の管理などは食糧部を新設して引き継ぐ方針。厚労省も組織改革を検討中。
7. 環境省が農薬の登録基準を見直し・・・2002/6/12 読売新聞
人間以外の生き物への目配りを加えた農薬登録基準の見直しが始まった。
環境省の検討会が農薬の登録基準を見直し、野生の生き物や生態系への影響を加味するよう求める報告をまとめた。
化学物質の中でも農薬は工場で管理しながら使うのと違い、大量・多種類の薬剤が広く散布されている。病害虫を防ぐのが目的だから必ず毒性はある。
したがって、農薬は、国に登録しなければ販売できない。登録審査は農薬取締法により農水省が行うが、環境安全性については環境省が「作物残留」「水質汚濁」「土壌残留」「水産動植物に対する毒性」の基準を設けている。
作物残留と水質汚濁は毒性に応じて製品ごとに濃度基準値を決め、土壌残留と水産動植物への毒性は、一律の基準をあてはめる。基準値を超えないよう使うことが、登録の条件となる仕組みだ。農水省によると、現在、5180種類の製品が登録されている。
ただ、作物残留と水質汚濁の基準は、発ガン性など人体への害しか考えておらず、水産動植物への毒性は、1963年に水生生物の中でも比較的丈夫なコイを使った急性毒性試験を導入しただけ。事実上、他の生き物への配慮はしてこなかった。
一方、欧米では農薬審査基準に生態系への配慮を加えており、日本でも自然との共存をうたった環境基本計画が策定された。このため環境省は98年、「農薬生態影響評価検討会」(座長・須藤 隆一 東北工業大客員教授)を設置。99年1月に「生態影響評価を導入する」との中間報告をまとめた後、具体化する方法を検討してきた。
今回まとまった第二次中間報告では@藻類やミジンコ、メダカでも毒性試験を行い、急性影響濃度を算定A使用条件や分解性などに応じて散布後の環境中濃度を予測し、@の結果と比べて評価B登録ずみの農薬も順次再評価する---などとし、濃度の算定方法や評価の仕組みを示した。
農薬の生態系への影響を厳密に測ることは困難だが、食物連鎖の各段階で、代表的かつ毒性に敏感な生き物を通じて影響を見て、なるべく害を小さくする方向へ規制しようという考え方だ。今後、実施へ向け農業資材審議会と中央環境審議会に諮問される。
人間以外の生き物への目配りは、地球に生きる者の当然の責務であり、遅ればせながら規制要件とすることは評価できる。しかし、慢性の毒性、複数の農薬による複合影響、使用法が守られているかどうかの検証、鳥など水生以外の生き物への影響など、積み残された課題も多い。
検討会では、「危険という科学的根拠が十分でないのに規制するのは疑問」という生産者側委員と、「問題が起きてからでは遅い」と訴える委員との間で激しい議論もあったという。須藤 座長は「今まで農薬の議論はタブーだった。第一歩を踏み出したことに意味がある」と強調する。
現代の農業において、農薬の必要性は否定できない。だが化学物質をめぐっては、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)作用など新たな問題も判明しつつある。生産者、消費者とも、農薬の効用と安全性のバランスを見極めるべき時期に来ている。
8. 農薬200種に残留基準・・・2002/7/2 読売新聞
厚生省方針「3年内、新たに設定
厚生労働省は1日までに、農産物の残留農薬に対する消費者の不安を解消するため、来年度から3年程度で、新たに約200種類の農薬について残留基準を設けることを決めた。これまで残留基準の定めがない農薬が農産物から検出された場合、流通を直ちに止められなかったが、同省は、2006年度をめどに、こうした農産物の流通や輸入を原則禁止する方針だ。
食品衛生法では、農産物ごとに数十種類の農薬の残留基準を定めており、基準値を超えた農産物の流通は禁止される。厚労省によると、増え続ける農薬に対し、国内では残留基準づくりが遅れており、国内外を合わせた約700種類の農薬のうち、残留基準が定められている農薬は229種類にとどまっている。残留基準のない農薬は基本的に検査対象になっておらず、検出されても健康被害の可能性が確認されない限り流通を止められないのが現状。
ただ、同省では、現状のまま新制度を導入した場合、国内の半数の約170種類の農薬が使えなくなるほか、輸入農産物にも違反が相次ぐなどの混乱は必至として、3年間程度の準備期間を設けることにしている。
厚労省では準備期間中に、基準のない国内の登録農薬や国際機関「コーデックス委員会」が定める国際基準のある農薬は、原則として、すべて残留基準を定める方針だ。
また、基準未設定の農薬については、健康に影響のないごく微量の農薬が、隣接地の農薬散布などで意図せずに混入してしまう場合もあるとして、米国などと同様に、一定値以下は違反としないルールを作る。
9. 基準超す残留農薬 特定農産物禁輸も・・・2002/7/12日経新聞
法改正案を与党提出へ
中国産の冷凍ホウレンソウから基準を上回る残留農薬が相次いで検出されている問題で、自民、公明、保守の与党三党は11日までに、違反を繰り返した国の特定品目を包括的に輸入禁止できるよう食品衛生法の改正案を今国会に提出することを決めた。会期末が迫るが、「国民の健康に影響がある」として、超党派の議員立法で成立を目指す。
これまで違反が見つかっても輸入された個別の食品を廃棄したり、返送させる規定しかなかった。中国産の冷凍ほうれんそうを巡っては、厚生労働賞が再三にわたり、中国側に安全性の確認と、輸出の自粛を求めてきたが、効果がなかった。
改正案では、輸入時の検査で、たびたび基準を上回る残留農薬が見つかり、健康被害の恐れがあるとき、安全対策が十分に取られるまで、その国が輸出する同じ品目全てを輸入禁止できるようになる。違反した場合の罰則も強化する方針。
今国会中に成立すれば、早ければ9月上旬にも施行する見通し。
10. 食品安全改正案参院へ・・・2002/7/20
特定の国からの輸入品などで食品衛生法違反が相次いだ場合、特定の品目の輸入を包括的に禁止できる規定を盛り込んだ同法改正案が19日、衆院厚生労働委員会で可決された。
週明けの衆院本会議で可決後、参院に送付されるが、参院厚生労働委員会での健康保険法改正案審議が遅れており、改正案の成立は微妙だ。
11. 製造年月日復活を・・・2002/7/30 日経
食品表示改善で提言へ
食品表示の改善を探る農水、厚生労働両省の懇談会は「食品の製造年月日表示が望ましい」とする提言(中間とりまとめ)を30日まとめる。食品メーカーは現在は品質保持期限を表示しているが、書き換えが相次いで発覚、消費者の信頼が揺らいでいる。製造年月日の表示義務は1995年に撤廃したが、消費者の関心の高まりで、復活の動きが広がりそうだ。
農水省と厚労省は、現在は加工食品に、おいしく食べることができる「品質保持期限(賞味期限)」と、衛生面から見て食べることが可能な「消費期限」の表示を義務付けている。両省は製造年月日の表示を再び法律で義務づける考えはないが、懇談会では「消費者への情報提供を充実するために併記した方がいい」との意見が強まっている。
懇談会は農水省が農林物資規格化・品質表示適正化法(JAS法)、厚労省が食品衛生法で食品表示を担当する縦割り行政の問題も議論してきた。両省は両法の一本化について中間取りまとめでは結論を先送りし、8月までに方針を決める考えを示す。
12. 食品期限表示用語統一を・・・2002/7/30 日経
農水・厚労省懇談会が中間報告書---法律・組織一本化は先送り
食品表示行政の改善を探る農水、厚生労働省の懇談会は30日午前、消費者の混乱を避けるため「縦割り」行政を改めるよう提言する中間報告書をまとめた。「賞味期限」「品質保持期限」などと役所によって異なっている食品の期限表示については用語を統一するとともに、相談窓口も一本化するよう求めた。
食品表示の規制は農水省の担当する農林物資規格化・品質表示適正化法(JAS法)と、厚労省の食品衛生法で内容が異なっており、事業者や消費者の混乱を呼んでいる。だが法律や行政組織の一本化に関しては両省の強い抵抗もあって結論を先送りした。
食品の製造年月日については、1995年に表示の義務付けを撤廃している。
報告書では「現行の制度でも可能」として、義務づけの復活ではなく、任意表示の方法を指摘した。しかし、「実際の運用については慎重な意見があった」として、任意表示自体も不要とする考え方を併記した。
おいしく食べることができる期間について、現行では、農水省が「賞味期限」、厚労省が「品質保持期限」の表示を求めている。二つの用語が混在している状態に対し、懇談会の委員の間では消費者が混乱しないように統一すべきだとの声が多数を占めた。衛生面からみて食べることができる期限を示す「賞味期限」についても両省の告示などで異なる定義を統一すべきだとの声が強く、報告書案は統一を求めている。両省は懇談会で指摘された食品表示に関する法律や行政組織の一本化について、検討した上で8月にも再開する懇談会で両省の考えを提示する構えだ。
13. 遺伝子使い調査−厚労省、DNAチップ開発へ・・・2002/8/26 日経
厚生労働省は食品に含まれる成分の安全性や飲食したときの人体への影響について遺伝子を使って調べるDNA(デオキシリボ核酸)チップの開発に乗り出す。来年度の概算要求の中で健康安全に関する研究項目111億円の中で盛り込む。食品の安全性確保につなげる。
DNAチップは切手大のガラス基板の上に数千個の遺伝子の断片を張り付けており、分析したい試料の中の遺伝子と反応させる。検出された遺伝子の種類から食品中のたんぱく質の働きを推定できる。
食品には、健康促進となる成分のほかにアレルギー物質や発ガン性の疑われる物質などが含まれることも多い。同省ではDNAチップなどで得られた情報をもとに食品の摂取量との関連でリスク評価し、管理するシステムを確立する研究も推進することも決めた。
昨年のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)発生以来、食品の安全性の確保のために科学的な手法を取り入れて正確に管理・判断する要望が急速に高まっている。DNAチップを使うと複数の遺伝子を同時に検出することも可能。成分の効果などを科学的な根拠に基づいて総合的に判定することが期待されている。将来は食品のタンパク質を直接判別するタンパクチップなどへの応用も視野に入れる。
14. 無登録農薬使用に罰則検討・・・2002/8/28 日経
安全性に問題のある無登録農薬が全国で流通している問題で、農水省は27日、農薬取締法を改正し、無登録農薬を使った農家に対しても新たに罰則を設けるなど、規制を強化する方針を固める。
同法では、無登録農薬を販売した業者に対する罰則規定が設けられている。しかし、無登録と知りながら使った農家や輸入業者には法律上の規制がないため、農作物の安全を確保するのに不十分と判断した。
同省はこの日、発ガン性などが指摘され、今回問題となっている殺菌剤の「ダイホルタン」と殺虫剤の「プリクトラン」の二つが、全国の30都県で販売されていたことを確認したと発表した。
取扱業者は既に80に達し、さらに増える可能性が強い。
同省などによると、二つの農薬は輸入されたもので、東京の業者が22都県で販売後、他の地域の業者に転売された。
30都県での販売と、26都県での使用を確認済みという。
15. 農薬取締法の改正について(案)・・・2002/10 農林水産省生産局
1.改正の背景
7月末以降、一部の業者が、登録のない農薬を輸入、販売していた事態が発覚し、これまで43都道府県で約170の業者が約2800戸の農家に10種類の無登録農薬を販売したことが判明している。この結果、消費者の国産農産物への信頼を著しく損なっただけでなく、農作物の出荷自粛などの事態を招いている。このような事態を踏まえ、
@無登録農薬が輸入されないよう水際での監視を強化するとともに、
A無登録農薬の使用を法的に禁止し、
Bさらに違法な販売などが行われないよう罰則を強化する
必要がある。
2.改正内容

(1)農薬登録制度の見直し
農薬の安全性などの確保のための登録を販売段階でなく、製造、輸入段階で求めることとし、水際の監視の徹底を図る。
(2)無登録農薬の使用の禁止
登録を受けている農薬以外の農薬を、農作物などの病害虫の防除に用いることを禁止する。
(3)罰則の引き上げ
同じ生産資材である飼料などに比べ、農薬に係る法律違反の罰則が低いこと、罰則があるにもかかわらず無登録農薬の違法販売が行われていたことを踏まえ、農薬取締法の罰則を飼料安全法と同等のレベルまで引き上げる。
(例)販売の禁止違反の場合;
飼料安全法・・・3年以下の懲役又は100万円以下の罰金
農薬取締法・・・1年以下の懲役又は5万円以下の罰金
16. 食品安全基本法可決 - 「食品安全委員会の設置」・・・2003/5/16 日経
食品の安全判断一元化
食品が健康に与える影響を評価する「食品安全委員会」の設置を柱とする食品安全基本法が5月16日の参院本会議で可決、成立する。委員会はBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)対策の遅れの原因となった農水、厚生労働両省の縦割り行政を見直し、消費者保護の視点で両省に食の安全策を勧告する権限を付与した。7月1日をめどに内閣府に設置する見通しだ。
同法は第三条で「食品の安全性の確保は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識で行わなければならない」と「生産者寄り」と批判された役所の対応などを見通し、消費者保護を前面に打ち出した。
食品安全委員会の設置
委員会は有職者7人で構成。毒性学や微生物学の専門家のほか、消費者意識や消費行動に詳しい専門家も加え、安全性についての科学的な知見だけでなく、食品を摂取する国民の安全を確保するために総合的な判断を行う。
具体的には食品添加物や遺伝子組み換え食品、健康食品のほか、家畜の飼料、米の肥料、農薬の安全基準などを検討する。
こうした分析には国内外の膨大な情報が必要になるため、それぞれの分野に詳しい学者ら非常勤の専門委員で構成する「専門調査会」を設け、委員の判断を助ける。
委員会は食品の安全性、危険性について評価した結果を農水、厚労両省に勧告する。これまで両省でそれぞれが行っていた安全性に関する判断は両省から切り離され、委員会に一元化する。両省は勧告内容に基づき、省令や通知などを作成、畜産家や食品メーカーなどを監視する。
BSE感染牛の発見など、国内外で突然発生した食の危機に対応できるよう、緊急を要する場合は委員会が暫定的に対処方法を策定できる権限も与えた。
委員会は7月をメドに発足。当面は農水、厚労両省の研究班が「安全性に問題はない」と判断した体細胞クローン牛を食品として流通させるかどうかなどを順次判断していくとみられる。
委員は衆参両院の同意を得て、首相が任命することになっており、人選が注目される。
農水・厚労省 組織改編急ぐ
食品安全基本法の成立をにらみ、縦割り行政を厳しく批判された農水、厚労両省は対応部局の新設や改組を急ぐ。食の安全問題で「信用」が揺らぐことの影響の大きさに気づいた食品メーカーなども、安全管理の徹底に動き出している。
農水省は7月にも職員約300人で構成する「消費安全局」を新設する。
食品安全委の勧告を受けて農家や企業を安全面で規制、管理するのが役割で、食べ物の残留農薬などを検査・監督する「農産安全管理課」、食品表示を監視する「表示・規格課」など6つの課で構成。検査結果を食品安全委員会に報告する。
企業や消費者などからの食品行政への意見や相談を受付け、政策に反映する。「消費者情報官」も新設する。
厚労省も職員を増員し、「食品保健部」の名称を「食品安全部」に改める。同部に「輸入食品安全対策室」を設け、輸入された食品のチェック体制を強化する。
食品業界でも全社的に製品の安全対策に取り組む動きが本格化している。明治乳業は4月に製品の安全性確保・向上を目指した社内横断組織「食品安全委員会」を設けた。外部の有職者を交え残留農薬基準を決めるほか、新製品の成分などの安全性を評価し具体策を取締役会へ勧告する。
日本水産は昨秋、「品質保証委員会」を設置。
月に三度開催し、残留農薬から電力危機対応まであらゆるリスクについて対策を協議する。
17. 動き出す食品安全委−消費者の監視欠かせず・・・2003/6/13 日経
BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)騒動以降、続発した食品を巡る不祥事の反省から7月、内閣府に食品安全委員会が動き出す。食品の安全性を専門的に評価し、それを国民に伝えるのが主な業務だ。消費者の監視の目が一段と欠かせなくなっているものの、委員会の具体像は、なおつかみにくい。その役割や課題を整理すると―。
【リスクの評価と管理を別々に】
「リスク管理と分離して、科学的知見を基にリスク評価をし、リスクを制御する」。
発足の準備にあたる 梅津準士 内閣官房審議官は委員会の役割を説明するが、消費者には言葉からしてピンとこない。
リスクは「健康への悪影響が生じる確率とその程度」のこと。リスク評価は「食品健康影響評価」といい、食品の危険性や安全性を科学的に分析、人体への影響を数値などで示す作業。その評価に基いて食品添加物の摂取基準などの目安を作り、守られているか否かを監視、指導、規制するのが行政のリスク管理だ。
従来は両方を一緒に役所がやっていた。相当していたのは主に農水省と厚生労働省だが、同じような仕事なのに横の連携が乏しかった。一連の不祥事で、評価と管理のあいまいさや不備が明らかになり、縦割り行政の弊害も出た。このため評価は委員会、管理は両省と役割を分担、機能を強化することにした。
両省は今後、新しい食品や添加物、農薬などのリスク評価が必要になったとき、委員会に諮問して、委員会はその評価結果を伝える。すでに評価済みのものでも、新たな危険性が心配される場合にはリスク管理の強化などを勧告できる。両省は食の安全性に関する様々な出来事を委員会に報告して、意見を求めるなど情報交換を蜜にする。
【リスクコミュニケーション狂騒曲】
食品に関する様々な情報を正確、迅速、公平に消費者に提供して意見を開き、対話を繰り返し理解と合意を得る―。委員会のもつ一つの役割はリスクコミュニケーションだ。農水、厚労省と連携して行うが、役所が苦手な分野で、BSEなどでも失敗を重ねた。
農林水産政策情報センターが2003年3月にまとめたアンケート(首都圏の主婦約500人対象)で、BSEの際に「最も信頼できた情報源」を聞くと、「テレビ・ラジオ」が50%と高かった。「新聞」と「(信頼できる情報源が)なかった」が各20%。官公庁の広報誌はわずか三人、ホームページは一人で、合計で1%に満たなかった。
生産者や業界に目を向けて、情報開示が遅れ、不確かな安全宣言を出すなど、消費者軽視の姿勢に終始した結果で、信頼回復は簡単ではない。
委員会の発足に合わせて農水省は「消費安全局」を新設、厚労省は食品保健部を「食品案全部」と解消してそれぞれのリスコミ対策も強化する。地方の農政局や保健所でも「リスコミ研修」が活発だが、職員には「消費者への情報提供のやり方をどう変えればいいのか」と不安の声も多い。
【消費者不在?】
「科学的知見」が不可欠なリスク評価は専門家の仕事だが、リスコミには消費者の出番は多いはず。リスコミを担当する専門調査会には消費者代表を入れることになっているが、創設まであと半月なのに顔ぶれが明らかになっていない。一方、情報交流や消費者意識・消費行動の委員には、すでに学識経験者らの起用が固まっている。
ある消費者団体の幹部は「委員人選の基準を公表してもらいたいのに、明らかになっていない。消費者不在の秘密主義が改善していない」といら立つ。全国消費者団体連絡会の 神田敏子 事務局長も「委員会設置は評価するが、問題は運用。コミュニケーションのあり方を含めて、オープンに消費者参加を進めてほしい」と注文を付ける。
【不透明な部分多く】
問題は数多い。代表的なのが「緊急事態」への対応。BSEやO157の集団食中毒など消費者に強い不安を与え、被害の拡大が確実な事態の発生が予想されるときや、実際に起きた場合、危機管理の主体は中央省庁や自治体なのか、委員会なのか。今のところ「ケースバイケース」としており、議論はこれからだ。
事務局は農水、厚労両省の寄り合い所帯になるため、権益争いが持ち込まれて委員会の独立性が保てなくなるのでは、という心配もある。
日本生協連の品川尚志専務理事は「具体策の詰めは走り出してからだろう。業務に注文も多いが、国民の健康の保護という最重要課題が達成できるかどうか、消費者も自分の問題として考えていくのが大切」と話す。
【関連法の改正など相次ぐ】
食品安全委員会の始動に先立って、食品関連の法律の改正や制定が相次いでいる。これらの法律は従来、主に業界向けで、規制や取締について定める性格が強かった。だが、新たに食品の安全確保や消費者保護を明記するケースが多い。
象徴的なのが5月の食品衛生法の改正。制定以来、半世紀ぶりの抜本改正だ。改正前は「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与する」のが目的で、規制をはじめ国の権限ばかりを定めて、責務はうたっていなかった。
改正法では第一条の冒頭に食品の安全性の確保を目的に規制し、「国民の健康の保護を図る」とした。一方、国や自治体に国民・住民からの意見聴取を求めている。
同委員会の設置、運営の根拠法となる食品安全基本法は2003年5月に成立。安全性確保の基本理念や国・自治体、業者の責務と消費者の役割などを定めた。農薬取締法や肥料取締法、健康増進法など関連法の改正を進んでいる。
18. 食品安全委、今日発足・・・2003/7/1 日経
消費者重視の政策をめざし、食品が健康に与える影響を評価する内閣府の「食品安全委員会」が2003年7月1日、発足する。BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)問題などで批判を浴びた縦割り行政を改め、必要な規制を農水省や厚生労働省などに勧告する権限を持つ。これに伴い農水省なども組織を改編、戦後の食糧難の中でコメ政策を担ってきた食糧庁は半世紀にわたる歴史に幕が下りる。
食品安全委は寺田雅昭・元国立がんセンター総長ら国会で承認された学者七人で構成する独立委員会。公衆衛生学などの専門家で、食品添加物や遺伝子組み換え食品、農薬の安全基準などを検証する。食品の安全性などについて科学的な分析をもとに評価した結果を農水、厚労省に伝え、必要な政策を勧告する。
初代事務局長には農水省審議官で内閣府出向中の梅津準士・委員会準備室副室長を起用する。
安全委の設立を受けて農水省は職員数280人の消費安全局を新設する。食物の残留農薬などを検査・監督する「農産安全管理課」や食品表示を監視する「表示・規格課」など六つの課で構成。
厚労省も現在の食品保健部を「食品案全部」に、医薬局も「医薬食品局」と改称、食品の安全確保に取り組む。
コメ政策半世紀、食糧庁廃止
一方で、農水省は食糧庁を廃止する。前身は1941年に食糧管理の機関として設けられた食糧管理局で、49年に食糧庁となり、コメ価格の安定のため全量管理を目指してきた。コメ離れや95年の食管法廃止で食糧庁の使命は大幅に縮小していた。職員約9300人の半分は2003年7月1日から総合食料局内に設ける「食糧部」などに移り、コメの生産調整などを担当。残りは農産物の安全管理や検査を受け待つ。

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