農政情報

コメ王国新潟、構造改革に挑む

減反選択制を提起
---農家「自己責任」に不安も---
日本経済新聞・・・2002/07/22
コメ政策の抜本見直しへ、新潟県は稲作農家の全員参加を基本とするコメの生産調整(減反)を選択制に変える改革案を打ち出した。この考えは食糧庁の「生産調整研究会」の中間報告にも反映され、全国的な議論を巻き起こしている。県内では歓迎の声の一方で、提起された「農家の自己責任」には戸惑いや不安も広がっている。
1970年代から始まったコメ減反政策は完全に行き詰っている。今年も過去最大の101万fの減反をしているが、コメの消費量の落ち込みから価格下落に歯止めがかからず、農家には閉塞感が募る。
「今のままだと本当にやる気のある次の農業の担い手が育たない。自らの意思と工夫でやれる余地を作るべきだ」。平山征夫知事は政策見直しの理由をこう解説する。
県提案は、減反実施を農家の自主判断に任せ、減反農家には米価下落の際の補償を現在より厚くする一方、不参加農家は支援しない方式だ。価格の8割(一部は9割)まで保証する現在の「稲作経営安定対策(稲経)」に代わり、価格の95%まで保証する新たな経営安定対策を求めている。
その後、食糧庁の生産調整研究会は6月28日、「売れるコメづくり」を基本に、減反を農家の選択制にし、過剰コメ処理も自己責任とするなど、政府の関与を薄めて市場原理にゆだねる中間報告をまとめた。
研究会の議論には県の 三浦哲郎 技監が参加、平山 知事も中間報告の前に、食糧庁に県案の実現を要望した。三浦 技監は「農家にも自己責任が求められるのは時代の流れ。新潟米の品質を高める努力が必要だ」と話す。
新潟県内で2001年度に減反未達成だったのは八市町村。県は今年、未達成市町村に対し、農林関係の公共事業を原則不採択にする方針を伝えた。その一つ、豊浦町では町や農協等でつくる「水田農業確立推進協議会」が未達成農家に負担金要求や公共事業削減を示唆する文書を配布し、波紋が広がった。同町の減反不参加農家(51)は「減反が農家同士を疑心暗鬼にしており、選択制は歓迎できる」と話す。
コメ流通も、計画流通米(政府米と自主流通米)制度が揺らいでいる。小売・卸業者などが農家と直接取引きする計画外流通米(自由米)が急増し、2001年産のコメ生産量に占める計画流通米の割合は初めて50%を切った。
全国的に有名な「魚沼コシヒカリ」の産地、十日町市の専業農家、宮内 賢一さん(51)は収穫したコメの8割を東京の百貨店に直販している。
「買い取り額は計画米に稲経の補てんを加えた額より高い水準」と話す。
品質の高いコメを作り、独自の販売ルートを持つ農家にとって、計画流通米を前提としたコメの価格保証制度は、保険料を払ってまで加入するだけの魅力がないのが実情だ。さらに現行制度では、余剰米の保管費用も計画米出荷者が負担する仕組みになっており、計画外米との競争条件の不公平感をさらに助長する結果となっている。
平山 知事は県の提案が実現した場合、稲作が収益性の高い農家に集約されて「県全体のコメ所得は増加する」と言う。
だが、これまで減反を推進してきた農協関係者には「国の役割・責任が後退する」「裏切り行為だ」との批判も根強い。
今回の改革案は、一筋縄でいかないコメ政策の複雑な事情や矛盾も改めて浮き彫りにした。「売れるコメづくり」を目指す構造改革の成否は、コメ農家の不安をいかに和らげ、経営者としての自覚と責任感を植え付けるかにかかっている。
参考:「農政情報」→「コメが普通の商品になる−政策転換、先物上場に道