農政情報

種苗にも農薬履歴

「種苗法施行規則」及び「使用基準省令」の一部改正について
指定種苗と農薬の表示
苗の販売時の表示例
穀類の種子及び苗の農薬使用回数等の表示について
参考:農林水産省「指定種苗制度」
 農薬を使う場合には、決められた農薬の総使用回数を守るよう求められている。しかしこれまでは、苗を購入した場合、何回農薬を使っていたかが分からず、農家は総使用回数の順守が難しかった。
 今後、農家は購入した苗の農薬使用履歴を確認し、栽培期間中に使える農薬の使用回数を把握できる。総使用回数が5回に制限されている農薬成分が育苗期間中に1回使われている場合は、定植後にその成分は4回しか使えないことになる。
「種苗法施行規則」及び「使用基準省令」の一部改正について
  1. 趣旨
    食用農作物などに農薬を使用する際には、農薬を使用する者が遵守すべき規準を定める省令(平成15年農林水産省令・環境省令第5号。以下「使用基準省令」という。)により農薬の容器に表示されている総使用回数を遵守しなければならないこととされている。
    農業生産においては、は種から収穫までを自ら行う場合の他、種苗業者から種苗を購入し、当該種苗をもとに食用農作物等を生産する場合がある。この場合、食用農作物等を生産する者は、当該種苗段階において農薬が何回使用されたかが不明なため、その回数を含めて農薬の容器に表示されている使用回数を遵守することは困難であった。
    しかしながら、食の安全を確保するためには、その農作物等に農薬が使用された回数が重要であることから、これを確保するため使用基準省令及び種苗法施行規則(平成10年農林水産省令第83号)について所要の改正を行う。
  2. 改正の概要
    1. 種苗法施行規則の一部改正
      指定種苗を販売する場合に必要となる表示事項に、指定種苗の種苗段階で使用した有効成分ごとの農薬の使用回数を加えることとする(第23条第3項)。
      なお、併せて指定種苗を定める告示を改正し、指定種苗の範囲を拡大する。
    2. 使用基準省令の一部改正
      指定種苗を用いて食用農作物等を生産する場合には、指定種苗に表示されている有効成分ごとの農薬の使用回数と農薬使用者が使用する有効成分ごとの農薬の使用回数の合計が農薬の容器等に表示されている有効成分ごとの農薬の総使用回数を超えないように使用しなければならないこととする(第2条第1項)。
      また、水質の汚濁を防止する観点から、水田において農薬を使用する際に必要な措置を講じなければならない農薬を新たに3剤追加することとする(別表第1)。
  3. 施行期日
    1. 今般の改正は種苗業者への周知が必要なことから、公布から施行までは一定の期間が必要であること。
    2. 有効成分の観点から農薬使用者が遵守すべき農薬の総使用回数を規制することとする使用基準省令の改正が平成17年6月21日に施行されることとなっており、今般の改正をこれと異なる日に施行する場合、農薬使用者が遵守すべき規準が短期間に2回変更されることとなって、農薬の誤用を招きかねないことから、今般の改正省令の施行期日は平成17年6月21日とすることとする。
苗の販売時の表示例
■種類名「トマト」  ■品種名「桃太郎J」 ■台木「ドクターK」
[育苗期]
散布年月日 適用病虫害名 薬剤名 使用濃度
(倍率)
総使用回数
16年3月1日 疫病 ダコニール1000 1000倍 4回
16年3月8日 疫病 ジマンダイセン水和 1000倍 2回
16年3月10日 灰色かび病 ロブラール水和 1500倍 3回
※定植後に使用する薬剤の選択に必要データです。
[定植後]
散布年月日 適用病虫害名 薬剤名 使用濃度
(倍率)
総使用回数
16年4月10日 疫病 ジマンダイセン水和 800倍 以降使用不可
16年4月15日 疫病 ダコニール1000 1000倍 あと2回使用可能
16年4月20日 灰色かび病 ロブラール水和 1000倍 あと1回使用可能
16年4月25日 灰色かび病 セイビアーフロアブル 1500倍 3回
※育苗期に使用した薬剤を勘案して薬剤を選択する必要があります。
[留意点]
  1. 適用外農薬の使用は厳禁
  2. 使用倍率厳守
  3. 総使用回数以上は、使用不可
穀類の種子及び苗の農薬使用回数等の表示について
本資料は穀類についてのものですが、種苗法施行規則及び農薬使用基準省令が平成17年6月21日付けで改正施行されることに伴い、「食用及び飼料の用に供される農作物等(果樹を除く)」と「食用農作物等以外の農作物の種苗」で、農薬を使用したものはその旨等を表示(具体的な表示法は本資料を参照)する必要がありますので、御注意いただきますようお願いします。
穀類の種子及び苗に対し、「使用した農薬に含有する有効成分及び有効成分ごとの使用回数(以下「農薬使用回数等」という。)」の表示を行う場合、具体的な表示方法について何らかの様式等はありますか?
指定種苗については、種苗法(平成10年法律第83号)及び同法施行規則等に定められた表示事項を適切に表示いただく必要がありますが、表示を行う種苗業者の利便性を考慮し、特に様式等は定められておりません。
農協の育苗センターで育苗した種苗を組合員農家に配布する場合も、農薬使用回数等の表示の対象となりますか?
今回の種苗法施行規則の改正により、「食用及び飼料の用に供される農作物等の種苗であって、農薬を使用したもの(改正種苗法施行規則第23条第3項第1号)」全てが農薬使用回数等の表示の対象となります。
従って、農協の育苗センターで育苗した水稲苗も農薬使用回数等の表示を行う必要があります。
具体的な表示の方法については、次の回答をご参照下さい。
農協の育苗センターで育苗した種苗を組合員農家に配布する場合において、育苗箱1箱毎に農薬使用回数等の表示を行う必要がありますか?例えば、
@1箱毎には表示せず、農薬使用回数等を明記した書類を組合員毎に配布する、A育苗センターの目に付きやすい場所に「α成分を含む農薬を○回使用しました」のような表示を揚げる、等の方法をとることはできないでしょうか?
JAの共同育苗施設で育苗した苗を組合員農家に販売する場合であっても、農薬使用回数等の表示を行う必要がありますが、種苗法第50条第1項では、包装への表示、証票の貼付のほか、「掲示その他見やすい方法」をもって行うこともできるとされています。
このため、お問い合わせのような方法や、種苗の納品書又は出荷伝票等に農薬使用回数等を表示する方法でも問題ありません。
いずれにしても、種苗を利用する農家等に対し、種子段階及び育苗段階における農薬使用回数等を正しく伝達いただくよう、よろしくお願いします。
床土や育苗箱の消毒剤についても農薬使用回数等の表示の対象となりますか?
農薬の使用回数については、「農作物等の生産に用いた種苗のは種又は植付けから当該農作物等の収穫に至るまでの間(=生育期間)(農薬取締法施行規則第7条第2項第4号)」において、農薬の容器に表示された「生育期間において農薬を使用することができる総回数(=総使用回数)(同規則第7条第2項第5号)」を超えて農薬を使用しないこと(農薬を使用するものが遵守すべき規準を定める省令第2条第5項)とされております。
また、この「生育期間」には、「は種又は植付けのための準備作業」を含むこととされております(同規則第7条第2項第4号)。
当省消費安全局農産安全管理課農薬対策室の見解としては、
@床土の土壌消毒は、は種又は植付けのための準備作業に当たる(従って農薬使用回数等の表示が必要)、A育苗箱の消毒は、は種又は植付けのための準備作業には当たらない(従って農薬使用回数等の表示は不要)、とのことであります。
なお、考え方の詳細については、消費安全局農産安全管理課農薬対策室に確認してください。
原原種や原種など、種子生産に用いられる種子や種苗についても農薬使用回数等の表示を行わなければならないでしょうか?
今回の種苗法施行規則の改正により、「食用及び飼料の用に供される農作物等の種苗」に対する農薬使用回数等の表示を義務付けることとしていることから、この趣旨に則し、「種苗法の規定に基づき指定種苗を定める等の件(平成11年1月13日農林水産省告示第32号)」についても改正し、指定種苗の範囲を拡大することとしております。
具体的には、従前、穀類については「稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆の種子」と指定されていたところ、改正後は「穀類の種子及び苗」とされる予定です。
お問い合わせの原原種や原種は、穀類の種子及び苗ではあっても、食用に供される農作物等には当たらないことから、農薬使用回数等の表示は必要ありません。
しかし、指定種苗であることに変わりないことから、農薬使用回数等以外の表示は、これまでどおり必要です。
穀類の種子及び苗における農薬使用回数等の表示については、誰が指導・監督を行いますか?
種苗法に規定された農林水産大臣の権限に属する@表示基準の遵守勧告、A指定種苗についての命令、B生産等基準の遵守勧告及び勧告に従わないものの公表、C報告の徴収等の権限については、同法第55条第1項及び同条第2項の規定により、都道府県知事及び地方農政局長に委任されております。
具体的には、@一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて主要農作物の種苗を販売する種苗業者に対する権限は都道府県知事(施行令第5条第1項及び第2項)、A一の地方農政局の管轄区域内にのみ営業所を設けて指定種苗を販売する種苗業者に対する権限は地方農政局長(施行規則第28条第1項及び第2項)に、それぞれ委任されております。
このため、都道府県知事、地方農政局長及び農林水産大臣(種苗管理センター)が、それぞれ分担・強力し合いながら、種苗業者に対する指導・監督を行うこととなります。

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