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21世紀の地球人口と食料問題に思う

地球規模の環境悪化が招く農産物の生産適地の喪失
名古屋植物防疫所長  渡辺泰考

私の最近の関心事は、21世紀の地球の人口と、これを支える食糧がどうなるだろうかということである。日本人が一生の内食べる食糧はご飯が11万杯、パン7千斤、肉が牛6頭分という。人が生きるためには一定の量が不可欠である。世界の人口の推移を眺めてみると、つい半世紀前の1950年には25億人であったものが、37年間で2倍の52億人に達し、現在では59億人に、さらに2025年には80億人に、2050年には93億人に達するという恐ろしい予測がある。果たしてこれからの爆発的な人口増加を宇宙船地球号は支えきれるだろうか、環境問題もさることながら、とりわけ食料供給が間に合うかどうかいささか気になる。
飽食日本の現状では、食料不足を予測するのは難しい状況かもしれないが、米国のワールドウォッチ研究所長のレスター・ブラウン氏等をはじめ世の識者は警鐘を鳴らしている。
世界人口分布を見ると、現在アジア地域には世界の6割を占める40億人近くの人口がひしめき合っており、世界人口問題はアジア問題に凝縮されるといっても過言ではないと思う。
FAOの統計によれば世界の栄養不足人口は、7億8千万人に及んでおり、さらに今後毎年9千万人の地球人口が増え続けた場合の食料供給の行方はどうなるのだろうか。
穀物生産に目を転じた場合、1950年代に入ってからは、世界の穀物生産量が17億トン前後(内貿易量は2億トン)と横這い状態が続いているという。地球人口が増える中で、食料生産が頭打ちになっている原因ついては色々言われているが、開発途上国の急速な都市化、工業化など人工的な要因による農地の減少が特筆される。これらの現象は日本がたどってきた道でもあり、特に中国をはじめとするアジア地域にこの傾向が強い。一方では、地球環境の悪化も影響しており、地球の温暖化現象は、降雨量の減少となり農作物の生産適地を狭めており、砂漠化現象が拡大しているという。
さらに深刻なのは水問題であり、有限の水が工業用水、生活用水と競合し、耕作不能地域が出現しているという。穀物の消費量については、開発途上国の所得と食生活の向上に伴い、肉、卵などの畜産物の消費量が拡大している。畜産物1kgの生産に要する穀物量はトウモロコシ換算で卵3kg、豚肉7kg、牛肉11kgに及ぶという。地球人口の爆発的増加に伴い、世界の穀物供給不足と食糧不安が懸念されるゆえんである。
隣国中国の穀物動向に目を当てると、1995年の輸入量が1500万トンだったものが2005年には3200万トンに倍増するという米国農務省の報告がある。わが国の穀物輸入量は概ね3000万トンで近年横這いであるものの世界的には、供給不足が懸念される。地球規模で見た場合、食料生産に余裕のある国と飢えに苦しむ国が存在し、21世紀にはその格差が益々広がるものと予測される。飢えにあえぐ世界の難民が5300万人もいるといわれる中で、世界的な食料の分配と還流がうまくいくシステム作りはないのだろうか。たとえば、ODA(政府開発資金)によるKR(ケネディラウンド)、WFP(国連、世界食料計画)などの枠組の中で各国が資金を出し、穀物余剰国の食料を購入し、食糧不足の開発途上国に援助または貸し付けるなど、いわゆる「世界備蓄制度」ともいうべき分配方式を組み立てることが出来ないものかと願っている者の一人である。最も、人口過密の国々が自国の農業生産に力を入れることが一番の解決策かもしれないが、なかなか間に合いそうにない。
地球を取巻く環境、人口、食料の関係については、一定の調和が必要といわれているが、そのバランスがいまや崩れようとしている。21世紀を迎え人類の英知がこの難局を乗り切ることを期待したい。−「日くん協たよりNo.55」より
グリーンジャパン