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食品安全最前線 - HACCPの波

佐賀県・JA富士町は、大阪以西のマクドナルドに、ハンバーガー用のカット野菜を製造・販売する。日本マクドナルドの取引先は、肉やパン、カット野菜、ケチャップに至るまで、危害分析重要管理点(HACCP)方式のもとで製造する。病原性大腸菌O−157のかい割れダイコン問題をきっかけに、水耕栽培野菜やカット野菜は、HACCP導入を考慮する。
自主的に安全性を確保するカイワレ業者や、雑菌が多いと言われるカット野菜工場で、HACCPが浸透している。
富士町は昨年度、HACCP方式でカットレタスを約1400トン、キャベツを170トン出荷した。1986年から大阪以西の日本マクドナルド向けにカット野菜を製造しているが、HACCPがスタートしたのは96年2月のこと。日本マクドナルド側が、こういう有効な方法があると導入を持ちかけた。
カットレタスの工程を見ると、原料受け入れから製品出荷まで、約15の工程を監視・記録する。原料段階ではレタスに劣化がないが、冷蔵庫の温度は2〜5℃に保たれているか、洗いでは塩素濃度が一定に保たれているか、脱水の回転数は一定か・・・など。
特に2回の塩素水洗いでは塩素濃度などを日に3〜4回、決まった時間にチェックする。
カット野菜の値段は導入前と変わらない。人件費分の負担は増えたが、製品の安全性への信頼が増すなど「目に見えないメリットは大きい」という。
じわじわと押し寄せるHACCP方式。
今後、土耕栽培まで広がるのではという懸念もあるが、「土耕栽培では、HACCPは適されない」というのが研究者の見方だ。
土壌の研究を進める鹿児島建設技術研究所の河合達司研究員は「スプーン一杯の土の中には一億個の土壌菌がおり、HACCPは難しい」と言い切る。「むしろ作物ができてから後の段階で導入される」という。
イカリ消毒CLT研究所の寿一尾所長も「出荷場を泥のついた長靴で歩き回らないとか、汚いところからきれいなところへの流れを逆流しないなど、すぐにでもできる衛生管理が必要になってくる」と見ている。
これだけ急激に注目を浴びたHACCP。
大手スーパーなどからは、「導入していなければ商品を扱わない」と、締め出される可能性もある。
かなりの資金や、人員が必要と思われているHACCPだが、富士町の北川義輝 加工部長は「うちは、設備は何も変えていない」と打ち明ける。
鹿島建設でHACCPの設計などを担当する田中秀男建設設計部長は「かかる費用は、その工場がどの程度の衛生管理をこれまでして来たかで全く異なる」と指摘する。
現在の富士町のカットレタスの作業は、これまでとほとんど変わらない。ただ、今までは一人ひとり、異なるあいまいな基準で判断していたものを、だれかやっても変わらない客観的な基準で管理するという点で大きく違う。北川部長は「HACCP的な考え方を取り入れるだけでも、かなり違うのではないか」とアドバイスする。
雪印乳業で長年衛生管理に携わった経験を生かし、衛生管理のノウハウをアドバイスするニチメン食品食材流通部の中川論参与は「衛生を管理するのにHACCPはいい方法。承認を取る取らないにかかわらず、導入を勧めたい」と強く訴えている。