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高機能食品の開発で食卓から健康に

  1. 高ビタミン類ホウレンソウ
    植物の生理作用で成分を強化する研究も進んでいる。岩手県の東北農業試験場・低温ストレス研究室は、寒さを利用してホウレンソウの栄養素をアップした。ホウレンソウを低温にさらし、植物が持つ生体防御作用を働かせて、ビタミンCやビタミンE、β−カロチンを増やした。
    冬場のホウレンソウが、甘くなるのを調べたのがきっかけだった。分析した結果、糖分のほか、ビタミン類もアップしていることがわかった。ビタミンCは84.6%、ビタミンEは36.0%、β−カロチンは16.1%、それぞれ増加した。
    同研究室の青木和彦研究員は「人間と同様、植物も体内に過酸化物質が増えると、枯れたり、病気になったりする。寒さなどのストレスから身を守るためには、過酸化物質を除かなければならない。それで、抗酸化物質のビタミン類が必要になる」と推測する。糖分が作物体内の水分低下で濃縮されるのとは違い、「植物自らが積極的に増やしていることがうかがわれる」という。
    ビタミンC、ビタミンE、β−カロチンは、生体内で抗酸化物質として働く。相互作用もあり、「過酸化物に合うことで壊れてしまうビタミンEを、ビタミンCが守る。ビタミンEとβ−カロチンも守り合う」。それぞれが増加することで、機能性の強化も期待できる。同農試では、そのメカニズムを解明し、冬場以外の成分強化や他の農産物への応用など、栽培技術の確立に向け、研究を進めている。
  2. 交配によるきのこの機能性強化
    きのこ類に、発ガン防止や制がん作用があることはよく知られている。その有効成分をさらに高めるというのだから、まさに「鬼に金棒」。
    タカラアグリ(滋賀県草律市)が開発した「SUPERやまびこしめじ」は、発がん抑制物質のβ−グルカンを、現行品種の約3倍にした。β−グルカンは、ブドウ糖分子が多数結合したもの。腸を刺激して老廃物の排泄を早めると同時に、がん細胞への抵抗力を強くする働きがある。ネズミを使った実験では、がん抑制に有効なことが確認されている。
    「機能性や品質にすぐれた、野生のブナシメジ数十株を交配した。数千株の菌核を作り選び抜いた」との説明だ。東京薬科大学の測定では、β−グルカン量は1mg中、従来品が633μgに対し、「SUPERやまびこしめじ」は1876μgに強化されている。
  3. アントシアニン増強サツマイモ−肝機能障害を改善
    食品の機能性を高めるには、育種方法、生育環境など、いくつかの手法がある。交雑育種で、サツマイモの成分強化をしたのは、九州農業試験場・甘しょ育種研究室の山川理室長。果肉が紫色の品種に含まれるアントシアニンに着目し、それを大幅に強化した「アヤムラサキ」を開発した。
    アントシアニンは、ポリフェノールの一種。がんや老化の原因とされる活性酸素を除いたり、抑制したりする抗酸化作用がある。さらに、肝機能障害の改善や高血圧予防効果も期待されている。正常細胞が異常細胞になるのを抑える働きもある。山川室長は「サツマイモは、もともと優れた栄養食品。さらに機能性を加えれば最強になる」と開発意図を話す。
    普通の交雑育種で、サツマイモの潜在能力を引き出した。十品種の親を元に5000の個体を作ったが、その一つが「アヤムラサキ」。「山川紫」と「知覧紫」をかけて作った「九州109号」を母、「サツマヒカリ」を父にした。「サツマヒカリ」はアントシアニンを含まないが、それが成分強化の種になっているのが面白い。
    アントシアニンは、普通のムラサキサツマイモの7〜8倍に増加した。ミネラルも多くなり、黄色品種のサツマイモに比べ、カルシウムは3倍、マグネシウムは2倍になった。「機能成分は高まっても、生産性や収量が悪ければ意味がない。それもクリアしている」という。
    現在、研究機関と連携し、高血圧やアルツハイマー病の予防、肝機能障害改善で、臨床試験をしている。肝機能障害を持つ試験場の職員に「アヤムラサキ」ジュースを飲ませた結果では、障害の指標になる血液中のGTO、GPT、LDHレベルの低下が見られた。
    「将来的には、治療効果もある食品を開発するのが夢」と山川室長。当面は、科学的なデータをそろえ、病気予防などの効用が表示できる「特定保健用食品」の許可を取ることを視野に入れる。