農薬情報/農業と環境>臭化メチル削減計画
臭化メチル代替技術作物別検討
---現状と今後の課題---
- 花卉類分科会(キク、ユリ)
- ウリ科分科会(スイカ、メロン)
- なす科、いちご等分科会(トマト、いちご)
- 全体のまとめ
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- 花卉類分科会
- 現状
- キク
露地、施設ともに、主な対象は一年生雑草、立枯性病害、センチュウの防除である。
ポットマムの鉢土対策としては、代替薬剤の利用、蒸気消毒、無菌培土の購入などの対策が普及しつつある。ただし、蒸気消毒にあたっては、機械のコストが高いため、国や県の補助事業を有効に活用するという取組が必要になる。
切り花生産における対策としては、代替薬剤利用のほか、一部地域でこれまでも田畑輪換が行われてきており、この場合、特段土壌消毒を行わなくても土壌病害・雑草は防ぐことができている。しかし、近年農家の高齢化が進み、実施が難しくなってきている。
- ユリ
一年生雑草、疫病を主体とした土壌伝染性病害の防除が対象であり、代替薬剤による消毒や蒸気土壌消毒が有望である。
しかし、年に2〜3作の場合は、現在登録のある薬剤では、低温期を中心に処理期間が長くなるため、作型の維持が困難であるほか、蒸気消毒機についても機械のコスト高や処理機関が長いという課題がある。
- 今後の課題
花卉類については、全般的に臭化メチルを代替する技術はほぼ揃ってきているが、これら技術を普及・定着するにあたっては産地の条件に応じた対応の選択ができるよう代替薬剤の適用拡大をさらに進める必要があるほか、代替薬剤使用時にはその特性をよく理解した上で効果的に使用すること、また、蒸気消毒などを推進するためには、補助事業の有効利用や集団利用などの検討が今後必要となる。
- ウリ科分科会
- スイカ
- 現状
苗立枯病、つる割病、黒点根腐病、ネコブセンチュウ、雑草防除などが主な対象であり、苗床の蒸気消毒、本圃の代替薬剤(クロルピクリン剤、ダゾメット剤など)の使用などが普及しつつある。
つる割病に対しては、接ぎ木栽培による防除効果は確実に得られている。他の病害、センチュウについてもそれぞれに効果の高い薬剤や防除技術は揃ってきている。
- 今後の課題
代替薬剤は、臭化メチルに比べて低温期を中心に処理機関が長いため、作期の調整や生産者が希望する作期に適応できるよう多様な技術開発が必要である。
CGMMVが多発生した場合の処置法の決め手は、現時点では存在しない。
現在、なかなか臭化メチル離れが進まない農家は、かつて本ウイルスによる被害の経験がある農家が中心である。罹病株の早期抜き取りや資材の消毒など蔓延予防対策は現在では着実に行われているが、臭化メチル全廃後に、本ウイルスが多発生した場合の対応策を確立することが今後の大きな課題である。
- メロン
- 現状
つる割病、黒点根腐病、えそ斑点病が主な対象であるが、つる割病については、抵抗性品種、接ぎ木の利用が既に広く普及している。黒点根腐病、えそ斑点病については、代替薬剤の使用が進んでいるほか、えそ斑点病には太陽熱消毒、接ぎ木栽培が普及しつつある。
静岡県の温室メロンでは、ガラス温室での隔離床栽培が行われており、蒸気消毒が利用できるため臭化メチルは使用されていない。また、種子消毒(乾熱処理)の徹底でCGMMVの発生を予防しているほか、発生を想定した弱毒ウイルス利用体制も整備されている。
- 今後の課題
スイカ同様、臭化メチル全廃後に、CGMMVの蔓延予防対策及び多発生した場合の対応方法を確立することが今後の大きな課題である。
- ナス科、いちご等分科会
- トマト
- 現状
育苗床土処理では、苗立枯病、ウイルス病が重要な対象である。臭化メチル削減に伴い、市販倍土の購入や苗の購入により対応するケースも増えている。代替薬剤の普及も進んできている。
本圃での萎ちょう病、根腐萎ちょう病、青枯病、センチュウ対策としては、太陽熱消毒、ダゾメット剤処理と接ぎ木の組合せ、クロルピクリン剤と接ぎ木の組合せなどでの対応が進んでいる。
地域によっては、センチュウ対策としてトマト作付け前にギニアグラスの栽培・すき込みを行うことで効果を得ている。ただし、センチュウ密度が高い場合にはセンチュウ剤処理と組み合わせる必要がある。太陽熱消毒についても、処理期間中の気象条件によって薬剤による補完防除の必要もあり、状況に応じた対応が必要である。TMVについては、抵抗性品種、抵抗性台木の利用で、高い効果を得ている。
- 今後の課題
品種(完熟型中玉品種)によっては、ウリ科同様、臭化メチル全廃後に、TMVが多発生した場合の対応方法を確立することが今後の課題である。
- いちご
- 現状
主要な対象は、育苗圃場での一年生雑草、萎黄病、炭そ病、センチュウ対策である。徐々に、代替技術に変わりつつあるが、育苗方法を変更(ポット育苗への転換)することが土壌病害対策面でも有効である。また、隔離ベッドでの育苗を今後進めたいという県もある。
代替薬剤では、クロピクテープ処理の効果が安定しており、徐々に普及が進んでいる。
本圃での萎黄病、センチュウ対策としては、太陽熱消毒、ダゾメット剤処理が行われている。
- 今後の課題
クロピクテープ剤のマルチ畦内処理を進めるためには、処理機械が各地域の圃場条件に適応できるような形により改良されると、より普及が進むと思われる。
- 全体のまとめ
各作物とも、代替できる個別技術はほぼ揃ってきている。
しかし、さらなる普及・定着にあたっては、低温期における作期の調整や作期に適用できる土壌消毒技術の開発、育苗・栽培法の改良などを検討するとともに、実証展示をより強力に実施していく必要がある。
また、技術的には、CGMMVの予防対策および多発生時の対応策の確立が特に重要である。
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