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臭化メチル削減への対応

農業生産現場における土壌病害虫などの防除や、農産物の貯蔵倉庫などでの害虫防除などに幅広く利用されている臭化メチルについては、1992年第4回モントリオール議定書締約国会合において、オゾン層破壊物質として指定され、平成9年(1997)の第9回モントリオール議定書締約国会合において、これまでの段階的削減スケジュールで平成22年(2010)に全廃することとされていたところを5年間前倒しして、平成17年(2005)に全廃することが決定されました。これを受け、農業生産に影響が出ないよう、適切に対応するため、関係団体、行政、試験研究機関などの関係者が、直面する課題に係る共通認識の下に連携を図りつつ、各般の対策を的確に実施しています。
1. 臭化メチルの代替技術開発と普及の取り組み
2. 臭化メチル不可欠用途について

  1. 臭化メチルの代替技術開発と普及の取り組み
     現在、臭化メチル剤の代替薬剤・代替技術の開発及び普及を補助事業で実施しています。
    具体的な例としては、既存化学物質の代替剤としての可能性の確認及び製剤化を中心に、代替薬剤の効果的使用方法、熱水や蒸気を利用する方法、太陽熱処理、土壌にフスマなどを施用して土壌を還元状態にする還元処理方法、以上の方法を組合せて処理効果を高める方法、他には大気中への臭化メチル放出抑制技術の開発などを実施している。
     代替技術及び代替薬剤の普及状況については、これまでの国が都道府県に対して行ったアンケート調査及び「臭化メチル代替技術に関する作物別検討会」(平成12年1月〜2月)などの結果から、有効な代替技術が無いクリシギゾウムシと土壌伝染性ウイルス病を除いては、技術的対応が可能であり、各主要作物とも、代替技術の確立が進んでいます。
    • 重点的取組について
       特に、クリシギゾウムシと土壌伝染性ウイルスについては、代替薬剤の開発を進めるとともに、弱素ウイルス、抵抗性台木など、薬剤以外の防除技術の開発を中心に実施する必要があり、技術会議事務局とも連携の上で対策を推進しています。
       今後は、臭化メチルから代替薬剤への転換をより強力に推進するため、開発された代替薬剤が使用現場にとって使いやすいものとなるよう、代替薬剤の刺激臭を抑制したり、より簡便で効率的な使用方法への改善も図っていく予定です。
       なお、代替技術への転換対策などに活用するため、今後とも都道府県を通じた臭化メチル使用実態調査とヒアリングなどによる補足調査により、産地ごとに作物・対象病害虫別使用数量などの把握を実施します。
    • 推進体制の整備
       農林水産省では、平成10年1月に、「臭化メチル削減計画省内対策会議」を設置し、代替技術の確立・普及をそれまで以上に急速に進めるための方策について検討を進めています。また、関係機関・団体などによる取組体制の具体的な動きとしては、平成12年2月に、関係者が問題意識を共有するとともに、緊密な連携を図りつつ、各般の対策を一体となって推進するための「臭化メチル削減対策会議」を発足させ、平成16年度末までに9回の「臭化メチル削減対策会議」を開催しました。
       また、平成13年から16年まで、農業の主な分野において、省力化や低コスト化、環境問題などの課題を解決する上で、行政、試験研究機関、普及組織、関係団体、民間企業などが一体となって取組むことが特に重要な技術を「キーテクノロジー」として位置付け、産官学一体となった「食料・農業・農村基本計画達成のための農業キーテクノロジー確立普及プログラム」に取り組み、臭化メチル削減に関する諸対策も課題の一つに組み込まれ、都道府県における臭化メチル代替技術事例の取りまとめなどを行いました。
  2. 臭化メチル不可欠用途について
     第9回モントリオール議定書締約国会合において、臭化メチルの全廃後で、農業生産上、必要不可欠な用途の使用については各国政府が申請を行い、締約国会合で承認された場合、その消費が認められることが決定されました。しかし、不可欠用途として承認されるためには、代替技術が未確立、経済的な減収が生ずるなどの条件が課されています。
    • 不可欠用途申請手続き
       平成14年5月31日、モントリオール議定書締約国会合(事務局:国連環境会議「UNEP」)の経済・技術評価委員会(TEAP)及び臭化メチル代替技術選択肢委員会(MBTOC)より、臭化メチルの不可欠用途申請ハンドブックが公開され、申請手続きの詳細が示されました。これを受け、農林水産省では、病害虫防除にかかる臭化メチル不可欠用途申請手続きを平成14年度より実施しており、平成17年度は6月中旬に国内申請受付を開始しました(締め切りは9月下旬)。提出された申請は、「臭化メチル不可欠用途申請ハンドブック(Handbook on critical use nominations for Methyl Bromide)、モントリオール議定書締約国会合(事務局UNEP)の技術・経済評価委員会及び臭化メチル技術選択肢委員会策定」に基づき、農林水産省における臭化メチルの不可欠用途使用申請書として取りまとめ、2006年1月24日までに締約国会合に提出する予定です。
     しかしながら、締約国会合決議の理念に則すと、この臭化メチル不可欠用途申請については、あくまで暫定的な措置であり、また、UNEP事務局に申請を行ったものの、締約国会合の審査において不承認となった場合は、使用を申請した年の農業生産計画や代替薬剤・技術の準備に影響を与えることとなるため、申請は締約国会合決議\/6の基準に合致する必要最小限のものについて行う必要があり、今後も引き続き臭化メチルに頼らない防除への転換のため、代替技術の開発、代替薬剤の登録拡大及びこれらの普及定着を推進する基本方針に変更はありません。
    • 前年度までの申請作物・病害虫及び申請・許可数量等
      1. 平成15年度
        平成15年度は、2005年消費分として464トン、2006年消費分として656トンの申請を実施しました。それらの申請のうち、2005年分464トンについては、締約国会合審査機関の審査を経て、2004年11月に開催された第16回締約国会合において100%の数量の消費が認可されました。2006年分についてはピーマン等の一部申請について締約国会合で合意できなかったため、申請国からの追加情報により、審査機関による再審査を実施し、2005年7月に臨時の締約国会合で決議され100%の数量の消費が認可されました(申請品目及び対象病害虫:メロン(MNSV、CGMMV)、すいか(CGMMV)、ピーマン(PMNoV)、とうがらし類(PMMoV)、きゅうり(CGMMV)、しょうが(根茎腐敗病)、くり(クリシギゾウムシ))。2005年について、平成14年度のものと合計すると、284トン+464トン=748トンになり、基準年(1991年)の日本の消費量6,107トンに対し、2005年消費の申請数量748トンは12.2%に相当します。
      2. 平成16年度
        2006年及び2007年分の申請を実施しました。2005年消費分として85トンを追加申請し、2007年消費分としては652トンでした(申請品目及び対象病害虫は15年度と同様)。
        基準年の消費量に対しては、2006年消費の申請数量741トン(15年度決議分に加算)は12.1%、2007年消費の申請数量652トンは10.6%に相当します。
        審査結果:平成16年度の申請分については、本年6月にその「中間」審査結果が締約国会合のウェブサイトに公表されました。その概要は以下のとおりです。
        1. とうがらし類(ピーマン含む)と しょうが以外は申請数量の100%を認める。
          ※とうがらし類は申請の7.5%引きで勧告
        2. しょうがは代替薬害がいくつかあるため、申請は認められない。
     植物貿易課では、中間審査結果のうち、しょうがについては申請県と協力して追加資料を作成し、6月に開催された第25回公開作業部会(於:モントリオール)において、審査実施機関に提出し再検討を求めています。今後、新sな実施機関は追加資料を含めて審査の再評価を実施し、12月にセネガルのダカールで開催されるモントリオール議定書第17回締約国会合で最終的な審査結果が決議されます。
    • 申請実施府県名
       平成15年度及び平成16年度に臭化メチル不可欠用途使用申請を行った府県とその品目は下表のとおりです。
      府県名 平成15年度申請品目 平成16年度申請品目
      秋田県
      宮城県
      茨城県
      千葉県
      埼玉県
      神奈川県
      長野県
      静岡県
      新潟県
      石川県
      福井県
      岐阜県
      愛知県
      滋賀県
      京都府
      大阪府
      兵庫県
      和歌山県
      鳥取県
      島根県
      岡山県
      山口県
      徳島県
      愛媛県
      高知県

      長崎県
      熊本県
      大分県
      宮崎県

      鹿児島県
      くり

      くり、ピーマン

      くり
      くり
      くり
      くり
      くり
      くり
      メロン
      くり
      メロン、すいか、ピーマン、きゅうり
      くり
      くり、メロン
      くり
      くり、メロン、きゅうり
      ピーマン、とうがらし類、しょうが
      すいか
      くり
      くり
      くり
      くり
      くり
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      とうがらし類、きゅうり、しょうが
      メロン
      くり、すいか、メロン、しょうが
      くり、メロン
      くり、メロン、すいか、ピーマン、
      とうがらし類、きゅうり、しょうが
      メロン
      くり
      くり
      くり、ピーマン
      くり、メロン
      くり
      くり
      くり
      くり
      くり
      くり
      メロン、きゅうり
      くり
      メロン、すいか、ピーマン、きゅうり
      くり
      くり、メロン
      くり
      くり、メロン、きゅうり
      ピーマン、とうがらし類、しょうが
      くり、メロン、すいか
      くり、メロン
      くり、メロン
      くり
      くり
      くり
      くり、メロン、すいか、ピーマン、
      とうがらし類、きゅうり、しょうが
      メロン
      くり、すいか、メロン、しょうが
      くり、メロン
      くり、メロン、すいか、ピーマン、
      とうがらし類、きゅうり、しょうが
      メロン、ピーマン
      申請府県数 28 30
    • ナショネル・マネージメント・ストラテジー(臭化メチル削減戦略)
       平成16年3月にモントリオール(カナダ)で開催された第1回特別(臨時)締約国会合では、各国は臭化メチル使用に関する基本方針である『National Management Strategy』、を策定し、今後の不可欠用途臭化メチルの認可数量等はその内容を検討した上で承認することが決定しました。
      『National Management Strategy』の内容
      1. 臭化メチル不可欠用途の消費を減らす努力
      2. 代替方法の開発普及などを促進して代替方法への転換を促す努力
      3. 不可欠用途申請数量を減少あるいは全廃するために、開発された代替方法の普及状況あるいは近い将来使用される可能性のある代替方法に関する情報
      4. 臭化メチルの放出を最小限とするため実施している方法
      5. 代替方法が開発された時に臭化メチルを全廃するために進めている戦略、特に調査研究の実態
       このナショナル・マネージメント・ストラテジーについては、臭化メチル削減対策会議及び不可欠用途申請県など関係者と協議して策定することとし、「臭化メチル削減戦略」への対応として、2005年以降の申請(予定含む)都道府県に対し削減対策の策定状況等の調査を行ったところです。