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臭化メチルに代わる土壌消毒技術

2005年より臭化メチルは土壌消毒には使えません!
臭化メチル剤は、農業用には野菜類・花卉類の床土消毒、葉菜類の苗床消毒、施設野菜の土壌消毒などに幅広く使用されて来ました。しかし、国際的にフロン、ハロンと同じくオゾン層破壊物質に指定され、生産量・消費量ともに制限されており、今後は2005年に全廃することが決定されています。そこで、臭化メチルに代わる土壌消毒法をご紹介します。
果菜類・花卉類の床土の消毒
キャベツ、ネギ等葉菜類苗床の消毒
施設ほ場の土壌消毒
主な土壌処理剤の特性(適用病害虫:土壌病害、土壌センチュウ)
作物登録

果菜類・花卉類の床土の消毒

1.土壌くん蒸剤による消毒
(1)クロルピクリン剤(クロルピクリン錠剤、クロピクテープ)
<クロルピクリン錠剤>
  1. 土壌水分の目安は、湿り気があり土を握って放すと2〜3個に割れる程度。
  2. 土を30cmの高さに積み、30x30cmごとに深さ15cmの穴をあける。
  3. 1穴当たり1錠を内包装のまま施用し、直ちに覆土する。
  4. 更に30cmの高さに土を積み上げて同様に錠剤を置く。
  5. これを繰り返し最後に土を積み上げた後は上に錠剤をおかずにポリエチレン等で被覆する。
  6. 地温が15℃以上の場合、処理後10日ほど被覆し、その後ガス抜きする。できればガス抜き後、7日程放置してから使用する。
  7. 地温が15℃以下の場合、ガス抜きまで10〜14日以上、ガス抜きから播種、定植までを7〜10日以上に延長する。
  8. 錠剤使用量は1m³当たり35個。
(2)ダゾメット剤(ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤)
  1. 土に適度な水分を与え、所定量(1m当たり200〜400g)を土に散布し、均一に混ざるよう充分混和する。
  2. ビニール等で被覆する。
  3. 地温15℃以上の時は7〜14日後にガス抜きを2〜3回間隔で2回以上行う。地温12〜15℃の低温期は3週間以上被覆、ガス抜き後10日以上おいて使用する。
2.太陽熱消毒
  1. 夏場、空いているハウスの中に床土を盛り、ビニール等で被覆する。
  2. ハウスを2週間〜1ヶ月密閉させる。
  3. ハウス密閉時期:梅雨明け後〜8月下旬。
3.蒸気消毒
  1. 相当蒸発量20〜80kg/hのタテ型温水缶ボイラーを使用する。
  2. 改良したドラム缶や箱製の消毒槽に用土を詰めて消毒槽の底部から蒸気を噴射させる。
  3. 蒸気が出始めてから15〜30分後に蒸気を止め、少し冷えてから用土を取り出す。

キャベツ、ネギ等葉菜類苗床の消毒

1.土壌くん蒸剤による消毒
(1)クロルピクリン剤
(クロルピクリン、クロルピクリン錠剤、クロピクテープ)
<クロルピクリン錠剤>
・果菜類、花卉類の床土に準じる。
<クロピクテープ>
  1. 前日に十分かん水し、90cm幅でベッド状に土を盛り上げる。
  2. 畦の中央に約15cmの深さの溝を掘り、テープを1本施用し覆土する。
  3. 覆土後、直ちにポリエチレン、ビニール等で被覆する。
  4. 地温が15℃以上の時は10日後、地温が低い時は処理後20〜30日たってからガス抜きする。
テープ施用後ビニール被覆したベッド テープ施用
(2)ダゾメット剤(ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤)
  1. 土壌耕起を充分に行う。土の固まりが多いとガスが均一に広がらないため効果が不十分になる。
  2. 整地後、所定量を均一に散布して深さ15〜25cmに土壌と充分混和する。
  3. 土壌水分が足りない場合は散水する。
  4. ビニールで被覆する。地温15℃以上の時は7〜14日後にガス抜きを2〜3日間隔で行う。
  5. 地温12〜15℃の低温期は3週間以上被覆し、1ヶ月以上おいて発芽試験をしてから使用する。
2.太陽熱消毒
  1. 温湯消毒
    元肥を入れてベッドを成形した後ビニール被覆する。被覆期間は7〜8月の1ヶ月。播種する直前にはがす。
  2. 播種日から逆算して被覆する。夏の天候が不順の場合は消毒法を併用する。

施設ほ場の土壌消毒

1.土壌くん蒸剤による消毒
<臭化メチル代替薬剤→下の表を参照>
<ダゾメット剤と太陽熱消毒との併用処理>
  1. カスタード微粒剤のハウス内散布例
    土壌を耕起してダゾメット剤を均一に散布、充分混和する。
  2. その後、太陽熱消毒を行う。
  3. 1ヶ月密閉した後、被覆を除去し、ガス抜きを2回以上行う。
2.太陽熱消毒
  1. ハウスを密閉、湛水する。
  2. ハウス密閉の時期は梅雨明け後〜8月下旬、期間は20〜30日間。土壌に有機物(10a当たり稲わら1〜2t、石灰窒素100〜150kg)を施用してから耕し、60〜70cmの小畦を立て、古ビニールなどで土壌全面をマルチする。
  3. マルチ後は畦間に湛水し、ハウスを密閉する。
3.温湯消毒
  1. 土を均一に砕いて耕し、消毒予定地全面をポリフィルムで被覆する。その下に散湯器を設置し、ウインチでけん引きする。
  2. 土1m²当たり約300g以上の熱湯が必要。けん引速度は1時間当たり2.3〜2.4mで、10aの処理には約4日かかる。
  3. 肥料分が流亡するので、土壌診断をして施肥量を検討する。
  4. マルチ後は畦間に湛水し、ハウスを密閉する。
温湯消毒 温湯消毒機械
<ダゾメット剤とホスチアゼート剤との体系処理>
・ダゾメット剤はネコブセンチュウへの効果がやや劣るのでホスチアゼート剤との
体系処理を行うと効果的である。

主な土壌処理剤の特性(適用病害虫:土壌病害、土壌センチュウ)

商品名 有効成分 毒性 使用量/10a 使用方法
キルパー カーバムナトリウム塩30% 普・A 40g かん注・被覆・ガス抜き
センチュウは原則として被覆不要
ガスタード微粒剤
バスアミド微粒剤
ダゾメット98% 劇・A 20〜30kg 混和・被覆・ガス抜き
クロルピクリン
ドロクロール
クロルピクリン99.5%、80% 劇・C 20〜30g かん注・被覆・ガス抜き
クロルピクリン錠剤 クロルピクリン70% 劇・C 1錠/1穴 錠剤施用・被覆・ガス抜き
クロピクテープ クロルピクリン99.5% 劇・C 1100m テープ施用・被覆・ガス抜き
ソイリーン クロルピクリン42%
D-D50%
劇・C 30g かん注・被覆・ガス抜き
ディ・トラペックス油剤 メチルイソチオシアネート20%、D-D40% 劇・B 30〜40g かん注・被覆・ガス抜き

作物登録

商品名 果菜類 葉菜類 根菜類 花卉類
キルパー きゅうり、トマト、すいか、メロン、なす、ピーマン、いちご キャベツ、ほうれんそう、はくさい しょうが、かんしょ、にんじん、こんにゃく、かぶ、だいこん、ごぼう、さといも
ガスタード微粒剤
バスアミド微粒剤
きゅうり、かぼちゃ、トマト、すいか、メロン、なす、ピーマン、いちご、さやえんどう キャベツ、ほうれんそう、はくさい、ねぎ、らっきょう、みょうが、しろな、しゅんぎく、しそ、みずな、こまつな、たまねぎ、にんにく しょうが、かんしょ、にんじん、こんにゃく、かぶ、だいこん、ごぼう、さといも、ばれいしょ、やまのいも ばら、チューリップ、フリージア、ゆり、りんどう、せんりょう、つつじ、カーネーション、きく
クロルピクリン
ドロクロール
きゅうり、かぼちゃ、トマト、すいか、メロン、なす、ピーマン、いちご、えんどう、マメ類、とうもろこし ほうれんそう、はくさい、ねぎ、らっきょう、みょうが、しろな、しゅんぎく、しそ、みずな、こまつな、たまねぎ、レタス、アスパラガス、セルリ、うど しょうが、かんしょ、にんじん、こんにゃく、かぶ、だいこん、ごぼう、さといも、ばれいしょ、やまのいも りんどう、カーネーション、きく、しゃくやく、ぼたん、ストック、百日草、宿根かすみ草
クロルピクリン錠剤 うり類、トマト、ピーマン、なす、いちご、マメ類 あぶらな科野菜、ほうれんそう、レタス、セルリ、アスパラガス、ねぎ、たまねぎ にんじん、ごぼう、ばれいしょ、かんしょ、さといも、やまのいも、こんにゃく きく、カーネーション
クロピクテープ きゅうり、かぼちゃ、トマト、すいか、メロン、なす、ピーマン、いちご ほうれんそう しょうが カーネーション
ソイリーン
ネマクロペン
きゅうり、かぼちゃ、トマト、すいか、メロン、なす、ピーマン、いちご ほうれんそう しょうが、かんしょ きく
ディ・トラペックス油剤 きゅうり、トマト、すいか、メロン、なす、いちご キャベツ、はくさい、ほうれんそう、らっきょう、にんにく にんじん、だいこん、こんにゃく、やまのいも カーネーション、きく