TOPICS>2000年12月

各地域における斑点米カメムシの発生及び防除対策の状況

  1. 各地域における斑点米カメムシの発生及び防除対策の状況
  2. 近年の多発生要因の解析
  3. 今後必要となる対応
  1. 各地域における斑点米カメムシの発生及び防除対策の状況
    1. 近年の斑点米カメムシ類多発生の特長
      1. 発生種の変化
        発生予察は、基本的に過去および周辺地域とのデータ比較にあることから、より高精度に発生予察を実施するためには、どの種の調査結果であるかを同定、把握することが必要である。
        現在、各地域に発生する主要な斑点米カメムシ類の種は把握されているが、近年の特徴として、発生する種類が変化していることが挙げられる。
        具体的には、東北、北陸、東海、近畿地方において、優占種が従来と比べ変化していることが報告されている。
      2. 多発生地域の拡大
        斑点米カメムシ類の発生は、近年全国ベースで増加傾向であるが、その多発の特徴として、従来問題とされた地域以外にも、多発性地域が拡大していることが挙げられる。
        具体的には、関東及び四国地方において、多発生地域が山間部から平坦地へ急速に拡大していることが報告されている。
      3. 水田周辺の多発生場所
        斑点米カメムシ類は、一般的に水田周辺から侵入することが知られているが、近年、休耕地、イネ科の地力増進作物や牧草が作付けされている転作田などで多発生していることが北陸で報告されている。
      4. 被害発生の差
        全体的には、出穂期の早い品種ほど、斑点米カメムシ類の被害が大きい。
        しかし、近年は中生品種であっても被害が増加し、その差がなくなっている地域もある。
        特に、多発した平成11年度においては、中生品種、晩生品種の被害の方が早生品種より増加したことが、近畿地方で報告されている。
    2. 防除対策の状況(適期防除がなされた事例、なされなかった事例より整理)
      1. 航空防除
        有人、無人ヘリコプターにより広域防除が実施された地域では、その他の地域に比べ被害が少なかった一方で、航空防除を取りやめた地域では、被害が増加したことから、広域一斉防除は斑点米カメムシ類の蔓延防止に、有効であることが報告された。
        ただし、有人ヘリコプターによる防除については、実施時期を発生状況に応じて見直すことが重要で、場合によっては追加防除も検討することが必要とされた。
      2. 大型防除機械を導入した共同防除
        常発地においては、大型機械を導入して一斉防除を実施した結果、被害を回避している報告がある。
        ただし、広域での普及については、コスト面などを加味した実証が必要である。
      3. 草刈り
        前年度多発した地域であっても、航空防除や通常の薬剤防除に加え、水田周辺の草刈りを実施した結果、被害は減少しているとの報告がある。
        その際、農耕地以外の河川敷などについても、関係機関と連携して草刈りが行われ、より被害が軽減している報告がある。
      4. 普及センター、JA等との連携した発生予察調査、防除指導の実施
        関係機関が連携して調査を行うことにより、よりきめの細かい予察調査がなされ、それに基づく防除が実施されたため、被害が減少している。
        斑点米カメムシ類に限らず、より多くの地点を継続的に調査し、これに基づき防除指導を行うためには、他機関と連携して実施することが効果的であることが再確認された。
  2. 近年の多発生要因の解析
    1. 気象、栽培品種、作付状況などの環境条件からみた発生要因
      1. 気象による要因
        気象条件(特に高温)は、斑点米カメムシ類の発生に対して最も大きな要因であり、以下の影響を及ぼした。
        1. 斑点米カメムシ類発生について
          斑点米カメムシ類の雑草地などでの増殖、発生時期の早期化、活動の活発化による広域分散につながった。
          ただし、近年の発生の特徴として、出穂の早晩に関係なく発生している地域がある。
        2. 水稲の生育について
          出穂期が全体的に早まり、斑点米カメムシ類の発生量が多いことも相まって、被害が拡大したと考えられる。
      2. 栽培環境による要因
        斑点米カメムシ類の発生しやすい休耕田、米の生産調整における地力増進作物、飼料作物などの面積が増加している。
        これらの場所において、斑点米カメムシ類が多発生していることが北陸で報告されており、発生要因の一つとして考えられる。
        ただし、近畿では牧草について面積が減少しているにもかかわらず斑点米カメムシ類の発生が増加しており、地域によって差が見られる。これは、牧草の刈り取り等の栽培管理が水田への飛来に影響したためと考えられる。
      3. 栽培品種(体系)による要因
        近年、良食味の早生品種の作付けが増加してきており、かつ中生品種(コシヒカリなど)についても、その作付けが早期化していることから被害を受けやすくなっている。
        また、出穂期前後の高温により「割れ籾」が発生しやすい品種(ほしのゆめ等)があり、斑点米カメムシ類の被害を受けやすくなっていると考えられる。
    2. 防除の実施から見た要因
      1. 地域一斉防除の減少
        航空防除を取りやめた地域において、代替となる地域一斉防除が実施されていないこともあり、斑点米カメムシ類の被害が増加している。
        また、地上の共同防除が減少している中、共同して防除がなされた場合、被害が減少している。
        このことから、地域一斉防除の減少が多発生要因の一つとして考えられる。
      2. 気象条件による防除の不徹底
        出穂期に降雨が続いた場合、斑点米カメムシ類に限らず防除ができないことから、多発につながっている。
      3. 防除体系の問題点
        斑点米カメムシ類が恒常的に問題とならない地域では、斑点米カメムシ類以外の病害虫に重点をおいて防除が実施されている。
        このため、出穂期以前に防除が終了しており、斑点米カメムシ類の多発時には十分な効果が得られていない面がある。
      4. 斑点米カメムシ類以外の着色粒発生
        斑点米カメムシ類について、防除が行われた頻度が高い地域であっても、着色粒の発生が問題となっている。
        着色粒の発生には、斑点米カメムシ類以外の要因もあることから、より効率的な防除を実施するためには斑点米カメムシ類以外の発生要因について明らかにする必要がある。
  3. 今後必要となる対応
    1. 平成12年度から発生予察事業等で対応すべき事項
      1. 発生予察調査活動の強化
        平成5年のいもち病多発時においても、より的確な防除の実施に資するため、予察調査の充実が検討、実施された。
        斑点米カメムシ類についても、多発が予測される場合、よりきめの細かい発生予察情報を提供する観点から、調査方法(調査項目)を充実させる必要がある。
        具体的には、
        • 病害虫防除所が行う定点及び巡回調査について、見取り調査をすくい取り調査に変更することで、雑草地及び水田内の調査地点数及び回数を増加させる。
        • 上記の調査については、普及センターとの連携を図り調査地点数をできるだけ増加させる。
        • 病害虫防除員、市町村などの協力を得て行う調査は、より簡易な調査(予察灯、トラップ誘殺数調査など)を積極的に採用し、調査地点数の増加を図る。
      2. 防除指導の徹底
        • 農薬の選定について、発生している斑点米カメムシ類の種が同定、把握されていることが前提である。現在までのところ、天敵に影響が少ない農薬も知られて来ており、注意報などの発表に当たっては農薬の選定について適切に指示する。
        • 近年は、高齢化の進行などにより、地域の防除体制は共同防除よりも個人防除主体となっており、個人防除では確実に防除が実施されていないケースも見られる。
          防除指導においては、従来からの情報提供などによる活動に加え、これら個人防除の実施者に対して確実な防除が実施されるよう、その啓発活動に重点をおいていく必要がある。
      3. 草刈について
        前年度多発した地域であっては、特に、通常の薬剤防除と組み合わせ、水田周辺の草刈りを実施することによって、斑点米の発生が抑制されることが多くの県から報告されている。
        また、河川敷などの広域な雑草地については、その管理者に対し草刈りのスケジュール調整などの協力の依頼を行い、水田地域への蔓延を防止していく必要がある。
      4. 航空防除について
        航空防除は、斑点米カメムシ類の一斉防除が可能であるという面で効果が高い防除対策である。航空防除の長所を最大限活用するため、以下の点に留意する。
        • 斑点米カメムシ類の発生時期は、気象条件や水稲生育ステージに応じて変化するので、その生育ステージの把握に努め、航空防除実施スケジュールを臨機応変に調整する。
        • また、蔓延が予想される場合には、追加散布も念頭に調整する。
    2. 今後改善すべき技術的課題
      1. 発生実体の把握
        多くの地域で、発生する斑点米カメムシ類の優占種が変化している。
        これにより、被害が遅くまで発生するようになるなど、従来の被害発生状況が変化していることが報告されている。
        これを踏まえ、地域の発生実態の把握をきめ細かく実施し、病害虫防除所などの発生予察調査、防除指導などの活動を優占種に応じて見直していく必要がある。
        その際、国が定めている発生予察調査実施基準についても、早急に改善する必要がある。
      2. 新たな技術を導入した発生予察技術の改善
        果樹カメムシ類では、集合フェロモンの導入により効率的かつ高精度な発生予察の実施が期待されている。
        斑点米カメムシ類についても、導入が期待できるフェロモン剤が存在することから、試験研究機関の協力を得て実用化に向けた検討を開始する必要がある。
        また、有効積算温度を利用したコンピューターによる発生予察が現地の発生実態と一致した旨の知見が得られており、他の地域、種類でもデータを蓄積し、その普及を図る必要がある。
      3. 防除対策の改善
        (@)の発生予察調査実施基準の見直しと併せ、要防除水準を改善することが必要である。
        また、大型機械を導入して一斉防除を実施した場合、常発地であっても被害を回避している報告がある。今後、広く普及させていくためには、円滑な導入が進むよう、天敵への影響が少ない農薬の選定を含め、技術的実証などを検討する必要がある。
      4. 着色粒発生機構の解明
        斑点米カメムシ類以外の要因によっても、着色粒の発生が問題となっていることが指摘されている。斑点米及びそれ以外の着色粒も含めて、その発生機構を解明し、被害発生に応じた効果的な対策を検討する必要がある。
    3. 今後改善すべきその他課題
      1. 関係機関との連携
        斑点米カメムシ類に限らず、より多くの地点を継続的に調査し、これに基づく防除指導を行うためには、他機関と連携して実施することが効果的であることが再確認された。
        今後、斑点米カメムシ類の種類を確実に同定するなど、高い水準により継続的に調査が実施されるよう、地域(農政局)ごとにその実施体制を検討する必要がある。
      2. 農家に対する防除啓発活動
        技術的指導については、雑草管理などの栽培管理と一体化して実施することが必要となるので、普及センターなどに対してよりわかりやすい技術指導リーフレットを作成するなど、技術的な支援を実施する。
    4. その他
      1. 水田周辺の発生源に対する防除対策の確立
        各県からの報告の他、古くから国が定めてきた発生予察調査実施基準においても、斑点米カメムシ類は水田周辺の雑草地、牧草地、麦畑などから飛来することが調査・研究により明らかとなっている。
        これまで、それら発生源については、発生予察を行うための調査対象として位置づけてきたが、近年の多発生による被害発生を踏まえ、平成12年度から国の「指定有害動物」として位置付けられたことから、これらの地域であって早急に防除が必要な発生源については、具体的防除対策(農薬防除)を実施できるよう検討する必要がある。
        平成12年度以降においては、
        • 多発生が確認されている水田畦畔、草刈りなどの管理が行われている休耕地については、これまでどおり「稲/カメムシ」に登録されている農薬を利用して防除を実施する。
        • ただし、多年生雑草が優占している休耕田については、平成12年7月11日付で登録された農薬を用いて防除を実施する。
          さらに、今後は、
        • 米の生産調整などにより、作付面積が増加している地力増進用の転作作物や、飼料作物などについても、農薬の登録拡大を支援していく必要がある。
      2. 米の検査について
        水稲うるち玄米などの検査規格のうち、着色粒については昭和49年に規格が設定された。開始当時は5等級であったが、昭和53年に現行の3等級に改められ行われている。(開始当時の3等級が現行の1等級、4等級が2等級、5等級が3等級に整理された。)
        このような中、食糧庁が平成12年4月5日に公表した平成11年産米の検査結果では、1等米比率が62.8%と、ここ5年間で最低となった。その原因の一つに、全国的に斑点米カメムシ類の被害による着色粒が発生したことが挙げられている。
        各県からの報告では、斑点米カメムシ類の多発生が懸念される場合、着色粒の発生・被害を防ぐため、複数回の農薬防除を行うことが必要であるが、コスト、労力面から実施できない地域があること、また、より環境に配慮した防除の推進の観点から防除指導に苦慮していると指摘された。