TOPICS>2001年11月

セーフガード正式発動見送り

ねぎなどの農産物に暫定発動した緊急輸入制限措置(セーフガード)が11月8日期限切れとなる問題で、関係閣僚が10月25日、正式発動の決定を先送りしながら主要輸出国である中国との話し合い解決を目指す方針を確認した。しかし陰では、発動を巡る国内の攻防が本格化している。
話し合い路線を主導するのは経済産業省と外務省。経済産業省は中国の報復措置の標的になり、中国という巨大市場の争奪戦に後れをとりかねないと危機感を強める自動車業界の突き上げで「おしりの火がついた」(同省幹部)。正式発動すれば中国が報復を拡大する懸念もあって、外務省とともに話し合い解決への期待を持ち上げるのに躍起だ。
一方、中国がなぎなどの輸出削減に応じなければ、正式発動は当然だと主張するのが自民党農林族と農水省だ。「日本の農業を守る特別行動議員連盟」は10月26日、11月9日の正式発動を前提に交渉すべきだと決議。農水省では、「客観的な調査に基づく暫定発動のはず。正式発動しないとの日本のセーフガードは正当性を疑われ、今後の発動が難しくなる」との声が上がる。
中国は話し合い解決に同意しながらも、セーフガードの撤回を強く求め、輸出の自主削減にも反発してきた。日中間と日本国内の両方で、ぎりぎりの調整が続くことになりそうだ。
セーフガードを巡る動き
2000年 12月 ねぎ、生しいたけ、畳表の3品目で政府調査を開始。(22日)
2001年 3月 関係3閣僚が3品目に暫定発動する方針で一致。(30日)
4月 3品目に暫定発動。(23日)
6月 中国が日本製自動車、携帯電話、エアコンに報復関税。(22日)
10月 日中首脳会談などで話し合い解決の必要性で一致。
11月 暫定発動の期限切れ。(8日)
12月 政府調査の期限切れ。正式発動に関する最終判断の期限。(21日)

産地・農協、改革急ぐ

ねぎ、生しいたけ、畳表(いぐさ)の農産物3品目に緊急輸入制限措置(セーフガード)が暫定発動されて5ヶ月。輸入が大幅に減り、卸売価格は上昇した。発動期間は11月8日で終るが、本発動に移行するかは不透明だ。暫定措置の期限まで50日を切り、国内産地は競争力強化へ一層の構造改革を迫られる。

競争力強化策
群馬県の農協関係者ら約50人は9月25日、東京の銀座と新橋で県産しいたけPRとセーフガードへの理解を求める街頭活動を実施した。日本一のしいたけ生産県として宣伝ビラ3千枚としいたけ2千個を配り、都会の消費者に安全性などをアピールした。県などは生しいたけを販売しやすくするため統一規格を定めた。大きさやかさの開き具合などで四等級に分け、等級ごとに袋詰め方法などを変える。県はまた、厚木中心の栽培を菌床中心にするため九月補正予算案に650万円を計上した。ウッドチップの固まりで栽培する菌床方式は良品の発生比率が高いという。
国内1〜3位のねぎ産地である千葉、埼玉、茨城3県の経済農業協同組合連合会(経済連)は有力取引先へのリレー販売を7月から始めた。9月中旬まで茨城、9月下旬〜12月は埼玉、1〜5月は千葉が出荷の中心となり、『ほぼ一年を通じ安定供給を可能にする』(埼玉県経済連)。国産畳表の8割以上を生産する熊本県では県や経済連などが中心になって8月28日、産地強化対策協議会を設け構造調整対策をまとめた。優良品種「ひのみどり」の作付面積拡大や県内8農協市場の統合など11項目を盛り込んだ。

暫定発動の影響
農水省などによると、暫定セーフガード発動後の5〜7月の輸入量はねぎが前年同期比56%減、生しいたけが同55%減、畳表が同37%減となった。
一方、東京都中央卸売市場(計9市場)の5月以降の平均単価(1キロ)はねぎが6月を除いて前年同月を上回り、8月は90%高い378円となった。生しいたけは8月は937円で前年を2%強下回ったが、それ以外では前年を5〜27%上回った。
農水省は「セーフガードは一定の効果があった。価格も急騰とまでは言えず、消費者に大きな影響はなかったのではないか」(国際調整課)とみる。

今後の見通し
熊本県は「競争力強化に一定の猶予は必要。最長4年間の本発動に以降してほしい」(農産課)という。一方、ねぎ産地のふかや農業協同組合(埼玉県深谷市)は残留農薬のデータを消費者に公表し安全性をアピールするなど中国産への対抗策を打ち出し、「問題は自ら解決する」(営農経済部の生形藤一参与)姿勢。産地にも温度差がある。
農水省は基本的には本発動したいが、輸出産業を抱える経済産業省などの反対もあり、政府内で意思統一ができるか難しい情勢だ。

セーフガード予備軍
農水省はトマト、たまねぎ、ピーマンなど6品目もセーフガード発動に向けた調査対象にするよう政府に求めている。だが、いまのところ輸入急増や価格急落はみられない。1〜7月の輸入量はトマトが41%減、たまねぎが5%増、ピーマンが42%増。ピーマンは大幅に増えたが卸売価格も7%上昇し、「今すぐどうこういう状況ではない」(野菜課)という。
物価高につながる輸入制限は消費者の反発を招き、輸出産業の反対も大きい。次々にセーフガードが発動される可能性は薄い。