- どうしていつもの除草剤で効かなくなったの?
- 気象条件や水管理、散布時期などにより除草剤の効果は左右されますが、いま問題になっているのは「きちんと使っているのに残ってしまう草、効かない草」です。東北農業試験場が調べたところ、「広葉、カヤツリグサ科の防除を同一系統のスルホニルウレア(SU)混合剤に頼った結果」がその原因とされています。つまり「同じ除草剤を毎年使う」ことが、「その除草剤に効かない草」を淘汰圧によって増やしてきているのです。もともと効いていた除草剤では防除が困難になった草、それを「除草剤抵抗性雑草」といっています。殺菌剤や殺虫剤の使い過ぎ、連用による「耐性菌」「抵抗性害虫」の出現と同じ現象と考えて良いでしょう。
- スルホニルウレア系除草剤(SU剤)とは?
- 低薬量で広範囲の草に効く薬剤。人にも安全、環境への影響の少ないことでも評価が高い。ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロンなどが代表的で、これらを含有する各種一発混合剤があります。
- 「除草剤抵抗性雑草」っていったい何なの?
- 例えば、ひと口アゼナといっても九州に生えているものと、東北に生えているものとでは葉の形、草丈、花の咲く時期など生態的、形態的にいろいろ異なります。一枚の田んぼに生えているものの中でも条件によって違いがあります。それらの中で除草剤に効かない形質を持った雑草(バイオタイプ)のみが生き残ってきました。
- いま使っている除草剤に問題があるの?
- 一部の「SU混合剤で効かなくなった草」としてクローズアップされている代表はアゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナ、アゼトウガラシ、キクモ、ホタルイ、ミズアオイなどです。いずれもSU剤に対して抵抗性を示すことが確認されています。この「SU抵抗性雑草」、とくにアゼナ類が東北を中心とした各地で増加し、水稲農家の皆さんを困らせる存在になっているのです。SU剤は効果、安全性に優れた薬剤でこれを主体とする各種一発混合剤が急速に普及しました。そして、それら一部の薬剤の連用が結果として「SU抵抗性雑草」の発生を招いてしまったと考えられます。山形県遊佐町の現地調査(東北農業試験場)でも、アゼナ類が多発しているのは多くが一部のSU混合剤を連用(1回処理)した田んぼでした。一方、毎年除草剤の種類(SU抵抗性雑草に効く成分を含有した)を換えたり、「初期剤+SU混合剤(SU抵抗性雑草に効く成分を含有した)」または「初期剤+中期剤」の体系除草をしている田んぼでは発生が見られていない、とのことです。
- 「効かない草」はこれからどうするの?どうすればいいの?
- 「SU抵抗性雑草」としてはアゼナ類・イヌホタルイのほか、ミズアオイといった強害雑草があり、今後他の草種でも出てくるだろうと予想されています。また、アゼナ類などはこのままほうっておけば、農機具や用水などを介してどんどん広がっていくことが心配されます。
したがって、これらの状況をよく把握し、事前に対処する必要があります。現在のところ北海道、東北、北陸を中心とした寒地・寒冷地地域で「SU抵抗性雑草」が問題化していますが、今後関東以西の早期栽培地帯(二毛作を除く)でも発生の危険性があります。
- 「SU抵抗性」は遺伝するの?
- ミズアオイでの抵抗性種と感受性種の交配実験の結果は下図のとおりです。
すなわち、感受性種同士の組み合わせ(交配)でできた子供(雑草)はすべてのSU剤で枯死しましたが、他の組み合わせでできた子供は抵抗性を示し枯死せず、ミズアオイの場合は優性遺伝すると考えられました。したがって、ミツバチなどの昆虫が花粉を媒介することによって種子ができる雑草では、抵抗性種の花粉が運ばれ、他所の田んぼでもSU剤に抵抗性が発生する可能性が考えられます。
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