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バスアミドはどのように効くのですか? |
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- バスアミドの土壌中での分解と作用
バスアミドは土壌中で水分によって分解され、活性成分であるメチルイソチオシアネート(MITC)となり、土壌中に拡散します。
このMITCが土壌中の病原菌のSH基を阻害し、またセンチュウや雑草種子を不活性化します。
- MITCの物理化学的性質
MITCは自然界に存在する物質で、わさびやだいこんの辛味成分アリルイソチオシアネートに近い性質があります。常温でゆっくり気化して、カラシ臭を発します。この成分が、わさびやオロシだいこんなどと同じように抗菌作用を発揮し、土壌中の病原菌や雑草の種子、土壌害虫、センチュウに作用します。
- 化学名:メチルイソチオシアネート
- 構造式:CH3-N=C=S
- 分子量:73.1
- 外観:からし臭を有する透明な結晶
- 融点:35℃
- 沸点:119℃
- 蒸気圧:20.7mmHg(20℃)
- 水溶解度:0.76g/100g(20℃)
土壌中から消失:湿土中から揮散消失する期間は
・18〜20℃で3週間以内
・6〜12℃で4週間以内
・0〜6℃で8週間以内
MITCを作り出す植物「クレオメ(セイヨウフウチョウソウ)」 |
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クレオメはあぶらな科に近縁の植物で、茎や種子を傷つけるとMITCを放出することが知られています。MITCはだいこんやわさびに含まれる辛味成分アリルイソチオシアネートの関連物質です。 |
- MITCの安全性
- 人畜安全性:劇物
- 魚毒性:B類相当*
* |
水産動植物に影響を及ぼすおそれがあるので、河川、養殖池等に飛散流入しないよう注意する。 |
- 刺激性:眼、皮膚、鼻、のどなど粘膜に作用し刺激するので吸い込まないよう注意する。
物質 |
分子量 |
融点(℃) |
沸点(℃) |
蒸気圧(Pa) |
水溶解度(%) |
ダゾメット |
162 |
104 |
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0.0004(20℃) |
0.3 |
MITC |
73 |
35 |
119 |
2130(20℃) |
0.76 |
クロルピクリン |
164 |
-64 |
112 |
3200(25℃) |
0.23 |
D−D |
111 |
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50-115 |
3500(20℃) |
0.2 |
臭化メチル |
95 |
-93 |
4.5 |
227000(20℃) |
13.4(25℃) |
水 |
18 |
0 |
100 |
2337(20℃) |
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エチルアルコール |
50 |
-115 |
78 |
5866(20℃) |
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散布機具はどのようなものがありますか? |
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バスアミドは手でも散布できますが、専用のバスサンパーを利用するとより効率的に散布できます。
路地作物など、大面積の場合はトラクターに設置する粒状散布器具を利用すると、散布と混和が一貫作業でおこなえるので、たいへん効率的です。 |
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サンソワー
(フロントタイプ) |
サンソワー
(リアタイプ) |
ロータリーソワー |
グランドソワー
(フロントタイプ) |
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土壌水分はどれくらいが適切ですか? |
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- 最適な土壌水分量
基本は最大容水量の50%ですが、砂質土壌では少なめ、火山灰土壌では多めが最適な土壌水分量です。
- 土性別のおよその目安
- 砂質土壌:最大容水量の30〜60%(含水率15〜30%)
- 砂壌土:最大容水量の40〜70%(含水率25〜40%)
- 壌土:最大容水量の60〜80%(含水率45〜60%)
- 埴壌土:最大容水量の60〜80%(含水率45〜60%)
- 土壌水分と薬害
土壌水分が不足した場合、バスアミドの加水分解が遅れるため作物を播種または定植するまでの期間を長く要します。
極端に水分が少ない場合はほとんど分解せずそのまま残るため、作物は栽培できませんのでご注意ください。土壌水分が過剰な場合も、バスアミドの分解が遅れ、播種または定植までの期間を長く要します。
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土壌混和の際にはどのような注意が必要ですか? |
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- 効果を確実にするためには、均一な土壌混和が重要です。
土壌深層にまで生息する病原菌やセンチュウに安定した効果を発揮するためには、できるだけ深層部まで均一に混和する必要があります。活性成分であるMITCはバスアミドが混和された層にほとんど留まり、下方への移動は被覆をおこなった場合でも混和した層より5〜10cm程度です。土壌中のMITCは徐々に気中に拡散して行きます。
土壌深度\土性 |
牛久土壌火山灰土含水率32.3%(サツマイモネコブ) |
埼玉土壌砂壌土含水率20.5%(サツマイモネコブ) |
栃木土壌火山灰黒ボク土含水率32.5%(クルミネグサレ) |
0-5cm |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
5-10cm |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
10-15cm |
0.0 |
4.5 |
0.0 |
15-20cm |
0.0 |
6.5 |
62.5 |
20-25cm |
0.0 |
3.0 |
332.5 |
25-30cm |
35.8 |
17.0 |
406.0 |
30-135cm |
110.7 |
108.0 |
429.0 |
35-40cm |
104.8 |
108.0 |
486.0 |
薬剤処理2週間後の3種土壌からの生存線虫検出状況
(線虫数/土壌20g)
バスアミド処理し、15cmの深度まで混和、直ちに被覆 |
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- 混和方法と効果
- 基本的な混和方法
トラクターまたは耕耘機によるロータリー耕(10〜15cm)がおすすめです。この場合もできるだけトラクターの車速を落し、ていねにに(できれば2回)混和することが重要です。
- 深層までの混和が必要な対象
深層部まで生息するなす科の青枯病・立枯病、Fusarium菌やVerticillium菌、センチュウ類など、作物が深層部にまで伸びる根菜類(やまのいもなど)。
深層部まで混和するには、できるだけトラクターの車速を落し、ていねいに2回混和をしてください。露地作物では混和方向を変えて縦横に2回混和することをおすすめします。また、葉たばこの立枯病などでは、バスアミド散布後に鋤耕とロータリー耕を組み合わせることで深層部に薬剤を処理する方法が有効です。
- 表層部のみの混和でよい効果が得られる対象
苗床など雑草や土壌表層のみに生息する病原菌(Pythium菌やPhythophthora菌)が防除対象のもの。
土壌表層部のみ混和し、処理後のガス抜きや施肥・畦立ても表層のみ行ってください。
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散水はどのようにするのですか?また、必ずしなければいけませんか? |
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- 散水方法
小面積の場合は散水ホースや潅水チューブを利用して散水します。施設では潅水チューブ設置後注水前にビニールなどで被覆しておくと作業が簡便にできます。露地ではスプリンクラーを利用すると効果的です。
散水設備がなく散水が困難な場合は、降雨後に土壌水分が適度になった時点で使用することをおすすめします。
露地作物で、無被覆で使用する場合には、処理後の降雨を利用することもできます。
- 土壌水分の調整の方法
- 処理前に散水する方法
事前に土壌水分を整えておくと、処理後の散水作業を省け、作業を簡略化できます。ただし、高温時は土壌水分が高いとガス化がはやくなりますので、注意が必要です。
施設の場合は処理の数日前に十分に散水しておくと処理までに自然に適正な水分量になります。処理時に土壌表面が少し乾いている程度が最適な水分量です。
露地の場合は、処理までに降雨が予想されるときはそれに合わせて散水量を加減してください。
- 処理後に散水する方法
乾燥状態を勘案し、過剰にならない適切な水量を散水してください。ある程度土壌が湿っている状態(30〜40%程度)であれば、表層3〜5cm程度水が染み込むくらい散水してください。
<ポイント>
散水前に被覆作業の段取りを整えておくと、被覆作業が楽におこなえます。
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被覆は必ずしなければなりませんか? |
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- 土壌消毒の効果を確実にするために、できる限り被覆することをおすすめします。活性成分であるMITCが長く土中に留まればそれだけ効果が高まります。また、被覆は地温を高めるため、バスアミドの分解やMITCガスの移動が活発となり、効果のアップおよび薬害の回避につながります。
住宅付近で使用する場合、ガスによる危害防止のため被覆を必ずおこなってください。
- 夏季高温時での注意
夏季高温時地温が高いため、バスアミドは急速に分解し、MITCを生成します。MITCは高温時には蒸気圧が高まり、地表面から急速に揮散しています。このため、被覆をおこなわない場合、病原菌や雑草種子のMITC被爆期間が短くなり、効果が不安定になります。とくに雑草は土壌表層から発芽するため、土壌表層のMITC濃度が低くなると効果が極端に悪くなりますので、除草を目的とする場合は必ず被覆が必要です。
- 冬季低温時での注意
地温が低く場合はバスアミドの分解が緩慢となり、MITCも低温時は蒸気圧が低いため、揮散が緩慢で、土壌表面から非常にゆっくり消失していきます。バスアミドの分解が緩慢なので、MITC濃度は低いまま被爆期間が長い状態になります。低温時に被覆をおこなわなくても雑草種子に対して良好な結果が見られるのはこのためです。
病原菌に対しては高濃度のMITCの被爆が必要なものもあると思われ、必ずしも低温時は被覆をしなくても安定した効果が得られる訳ではありません。対象によっては効果が不十分になる恐れがありますので被覆することをおすすめします。地温が低い場合は処理から播種または定植までの期間が非常に長くかかるため、早めに播種または定植を予定している場合には必ず被覆を行い、地温を高める必要があります。
- 施設作物の場合
施設作物では基本的に被覆をおこなうことをおすすめします。
とくに連作が重なり、土壌病害やセンチュウによる被害が見られる場合などは効果を高めるため必ず被覆をおこなってください。
- 露地作物の場合
露地作物においても、できるだけ被覆をおこなうことをおすすめします。
低温期の使用や土壌病害虫の被害があまり見られない場合には無被覆でも使用が可能です。この場合には、被覆に代わり鎮圧・散水してMITCの揮散を防いでください。
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被覆マルチの周辺はどのように処置すればよいのですか? |
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風で飛ばされないように、またマルチの周辺からMITCガスが抜けないように、土をかぶせたり、必要な処置をしてください。ただし、完全密閉の必要はありません。 |
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被覆資材に穴があいていても大丈夫ですか? |
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効果の安定を考えると、有効なMITCガスが揮散しないようなるべく穴のないものが望まれます。 |
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被覆資材はどのようなものが適当ですか? |
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- 被覆剤は安定した効果を得るために、ビニール等ガスバリア性の高い被覆資材をご利用ください。ガスバリア性の高い資材としてバリアースター(商品名)などの「低透過性フィルム」などがおすすめです。
とくに夏季高温時はMITCの蒸気圧が高まり、土中からの揮散が激しくなりますので、ガスバリア性の高い資材をご利用ください。
ポリエチレンフィルムを使用する場合は、厚さ0.05mm以上のフィルムをご利用ください。
低温時はMITCの蒸気圧が低く、徐々に揮散するため、被覆資材による効果の差は大きくありません。比較的薄めのポリエチレンフィルムでも同等の効果が期待できます。
着色フィルムは地温が上がりにくく、播種・定植までの期間を長く要するので、低温時に短期間で播種・植付けを予定している場合は使用を避けてください。
- 被覆資材別効果
無被覆の場合は、土壌表面から気中にMITCガスとなって揮散し、土中のMITC濃度が時間とともに急激に減少します。
ポリエチレン被覆はガスバリア性が不十分ですが、ガスの揮散はわずかづつで、長期間MITCが土中に留まります。
※ポリエチレンフィルムは厚さによりガスバリア性が異なります。
夏季高温時はポリ厚0.05mm以下では被覆効果が不十分になるおそれがあります。
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施設内で使用する場合どのような注意が必要ですか? |
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- 十分な換気
施設内で使用する場合、作業中にMITCガスが充満するおそれがありますので、作業の際には必ず十分あ換気を心がけてください。とくに、夏季高温時にはガスの発生が早いので注意してください。
- 小面積での完結
連棟ハウスなどでの使用の場合、1棟または2棟ごとにバスアミドの散布→混和→散水→被覆の一連の作業を完結してください。大面積を一度に作業をおこなうと長時間を要し、作業中にガスが発生するおそれがありますのでご注意ください。
- 施設内作物への影響
同一施設内に作物がある場合は薬害が発生するおそれがあるのでバスアミドを使用しないでください。連棟ハウスで間仕切りをおこなっても薬害を生じた事例がありますので、このような使用も避けてください。
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土性によって効果や薬害に違いがありますか? |
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- 効果
効果面では土性による違いはほとんどありません。極端に有機物を多く含む土壌では活性がわずかに低下する傾向が認められますが、バスアミドの通常施用量では有機物を多く含む土壌でも安定した効果が認められています。また、有機物の多い土壌では薬害が出にくい傾向があります。
砕土が不十分な土壌では、土塊の中まで十分に消毒できなかったり、土塊の隙間からガスが抜け、効果が不十分になることがありますので、処理前の砕土はていねいにおこなってください。
- 薬害
バスアミドはほとんどの土性で使用できますが、有機質の少ない明るい色の砂では薬害を生じた事例がありますので注意が必要です。砂質土壌であっても、有機質の多い暗色の砂では問題ありません。耕作を何年もおこなって、有機質を十分に含む砂質土壌であれば通常どおり使用できます。重粘土質土壌ではガス抜きが不十分な場合、薬害を生じることがありますので注意が必要です。
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バスアミド使用後何日たったら作物を植えられますか? |
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- バスアミドは地温により分解の速度が異なります。また、それ以上にMITCの拡散が地温の影響を受けるので、それに伴い処理〜植付け期間を変える必要があります。
- 地温と処理〜植付け(播種)までの期間の関係(目安)
10℃以下:2ヵ月〜3ヵ月(10℃付近の地温が1ヵ月間必要です)
10℃付近:1ヵ月〜1ヵ月半
15℃〜20℃:20日以上
20℃以上:作物、土性により適宣日数を短くできます(登録を遵守ください)。
- 関東の露地を標準にした場合
4月〜9月:21〜30日程度必要です。高温の季節は登録の範囲で短くできます。
10月および3月:30日〜40日程度
11月〜2月:2ヵ月〜3ヵ月程度必要です。
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発芽テストはどのようにするのですか? |
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- 発芽テストの方法
- 発芽くん
発芽テストが簡単にできるキット「発芽くん」をバスアミドご購入先で無料で入手できます(購入先には常備していませんので、お手元に届くまでにすこし時間がかかる場合もあります)。
- 発芽テスト時の注意
- 土壌は処理層の最も深いところから採土してください。
- 採土後は蓋を開けておく時間を極力短くしてください。
- 種子は、クレソン、レタス、アルファルファなどMITCに対して感受性の高いものを用いてください。大根など感受性の低い種子を用いる場合は無処理との生育の比較が必要です。
- 無処理区は必ず設けてください。
- 調査は播種2〜3日後に行ってください。それ以後の調査は確実性に欠けます。
- 薬害が強く懸念される場合は、密封瓶中で、直接土壌に播種し、根長の抑制を観察する方法も併用してください。
- 直接土壌に播種する方法では、土壌に十分水分を与える必要があります。直接土壌に播種する方法では、無処理区が立ち枯れで発芽しない場合もあります。
- 発芽テストに適した作物種子
種子 |
バスアミドの各処理量における発芽率(%)と抑制程度 |
32 |
16 |
8 |
8 |
0mg/L |
クレソン |
0 |
0 |
30(+) |
60(-) |
60(-) |
レタス |
0 |
0 |
100(+) |
100(-) |
100(-) |
アルファルファ |
0 |
60(+) |
100(-) |
100(-) |
100(-) |
こまつな |
40(+) |
80(+) |
100(-) |
100(-) |
100(-) |
からしな |
40(+) |
70(+) |
100(-) |
100(-) |
100(-) |
はくさい |
40(+) |
100(+) |
100(-) |
100(-) |
100(-) |
だいこん |
50(+) |
100(+) |
100(-) |
100(-) |
100(-) |
※各種子の発芽を48時間で判定するために適当な温度範囲
- レタス:15〜30℃
- アルファルファ、小松菜、大根:15〜35℃
- 白菜:20〜35℃
- クレソン、からしな:25〜35℃
【だいこんの岐根の発生とレタスの発芽テスト】 |
処理区 |
処理−播種
日数 |
岐根
発生率 |
発芽試験
の発芽率 |
バスアミド
30kg/10a
ガス抜きなし |
10日 |
80% |
0 |
11 |
50 |
0 |
14 |
0 |
0 |
17 |
0 |
86 |
バスアミド
30kg/10a
ガス抜き1回 |
10日 |
17% |
0 |
11 |
10 |
0 |
14 |
0 |
0 |
17 |
0 |
100 |
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処理 |
: |
9月8日 |
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被覆期間 |
: |
10日 |
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ガス抜き |
: |
9月18日 |
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発芽試験 |
: |
密封びん中のレタスの発芽試験、
1日後調査サンプリング深度15〜20cm |
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有機物や石灰、肥料などはいつ施用すればよいですか? |
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- 完熟肥料
堆肥はバスアミド処理の1週間以上前に処理しておき土になじませておくのが理想的です。もし、バスアミドと同時に処理する場合はバスアミドの混和の妨げとならないようご注意ください。10a当たり2トン程度の堆肥同時施用は効果、薬害面とも問題ないと考えられます。それ以上の量の堆肥との同時施用はさけてください。
良質な完熟堆肥はガス抜き後の施用も可能です。
雑草種子や未熟有機物が残っているおそれのある堆肥は、ガス抜き後でなく、必ずバスアミド処理1週間以上前に施用してください。
【なす半身萎凋病に対するバスアミドと堆肥同時施用効果】 |
処理区 |
発病度 |
バスアミド20kg/10a+堆肥2トン/10a |
23.1 |
バスアミド20kg/10a |
32.1 |
堆肥2トン/10a |
100.0 |
無処理 |
100.0 |
なす半身萎凋病菌を接種した圃場に麦わら・麦がら完熟堆肥とバスアミドを同時処理、混和後0.02mmマルチし、そのままガス抜きせず定植した。 |
- バーク堆肥
バーク堆肥はバスアミド施用1週間以上前に混和しておくか、ガス抜き後に施用してください。極端な多量施用はバスアミドの効果をわずかに減ずる傾向がありますが、通常施用量ではほとんど問題ありません。
【バーク堆肥多量施用圃場でのバスアミドの効果】 |
(各バスアミド処理量におけるだいこん萎黄病発病株率) |
土壌種類 |
200mg/L |
100 |
50 |
0 |
バーク堆肥多施用土 |
0% |
0 |
70 |
95 |
バーク堆肥少施用土 |
0% |
0 |
35 |
90 |
千葉県壌土(対照) |
0% |
0 |
10 |
90 |
バーク堆肥を連年多量施用している畑の土をポットに詰め、大根萎黄病菌を接種し、バスアミドの効果を調査した。 |
- 牛糞・豚糞
堆肥化されてない牛糞・豚糞はバスアミド処理1ヵ月以上前に混和してよく土となじませておいてください。バスアミドとの同時処理はできませんのでご注意ください。
- 麦わら・稲わら
麦わら・稲わらはバスアミド処理前に土壌混和をしておいてください。
多量の麦わら・稲わらを土壌表面に施用した状態でバスアミドを散布すると、混和時にバスアミドが土壌中に均一にならないおそれがありますので、そのような使用はさけてください。
- 消石灰・石灰窒素
基本的には石灰資材はバスアミド処理の1週間以上前に施用し、土となじませておいてください。一般の酸性、微酸性土壌では100kg/10a程度であれば石灰との同時施用は可能です。
石灰窒素とは同時施用ができます。石灰窒素との同時施用は土壌病害虫および雑草に対して効果を高めることが期待できます。
ただし、pH9以上のアルカリ度の高い土壌では、バスアミド処理により薬害が生じることがあります。石灰資材(石灰窒素を含む)の施用でpH9以上にあがる可能性がある場合は同時施用を避けてください。
- 肥料
窒素、リン酸、カリ等の肥料は2回目のガス抜き時に施用してください。
ガス抜き後の施肥が困難な場合はバスアミドとの同時施用も可能ですが、その場合、アンモニア態窒素を含まない窒素肥料をご使用ください。
MITCはアンモニアと反応し不活性化するのでバスアミドと硫安などとの同時施用はおすすめできません。
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他の土壌消毒剤やセンチュウ剤との併用(同時処理)はできますか? |
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- D−D剤
できます。バスアミドを混和後にDD剤を土壌潅注してください。このような使用方法は、とくにセンチュウ害がひどい場合や、なすやトマトのように栽培が長期にわたる作物で有効です。
- クロルピクリン剤
同時処理は薬害消失までの期間が極端に長くなりますので避けてください。もし同時処理した場合は、薬害消失までの十分な期間(1ヵ月以上)を空け、必ず、発芽テストによる安全確認が必要です。
体系で使用する場合は、バスアミドを処理後ガス抜きをおこなってからクロルピクリン剤を処理してください。また、逆にクロルピクリン剤を処理してガス抜きをおこなってからバスアミド処理をおこなうことも可能です。
- 粒状線虫剤(ネマキック粒剤など)
バスアミドのガス抜き後〜植付前に使用してください。
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夏季高温時や低温時の使用にはどのような注意が必要ですか? |
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- 高温時の注意
- 効果
土壌中で急速にMITCが生成され、土壌表層から気中に揮散します。このため、表層での効果が不十分になりやすく、とくに除草効果が低下します。十分な効果を確保するためには、土壌表面の被覆が重要です。
- 薬害
水分が不足すると薬害の原因となります。高温時はバスアミドの分解およびMITCガスの揮散が速やかにおこなわれるため、水分条件が整っていれば、薬害消失までの期間は短くなります。
- 安全性
MITCガスの揮散が急激なため、とくに施設内では注意が必要です。盛夏期では早朝の涼しい時間帯に作業をおこなってください。施設の窓は必ず開放して、作業中にガスが施設内に滞留することのないようご注意ください。連棟のハウスでは、一度に全体の作業をおこなうのではなく、小面積ごとに散布から混和、散水、被覆までの作業を完結させてください。
- 低温時の注意
- 効果
土壌中でゆっくりMITCが生成され、土壌表層から少しずつ気中に揮散します。このため、低温時の除草効果は被覆した場合と無被覆の場合の効果差が少なくなります。殺菌効果は処理期間が短い場合、効果が不十分になりますが、被覆をおこなった上で処理期間が長くなれば高温時に近い効果が期待できます。
処理量
kg/10a |
5℃-7日処理
発芽/供試数 |
5℃-30日処理
発芽/供試数 |
温室-7日処理
発芽/供試数 |
40 |
1/5 |
0/6 |
0/5 |
20 |
5/5 |
0/5 |
0/5 |
10 |
3/5 |
0/4 |
0/5 |
5 |
3/5 |
0/4 |
0/5 |
2.5 |
2/5 |
1/5 |
0/5 |
1.25 |
2/5 |
2/5 |
0/5 |
0.625 |
3/5 |
4/5 |
5/5 |
0.312 |
3/5 |
3/5 |
3/5 |
- |
3/5 |
4/5 |
3/5 |
タバコ菌核病の菌核を越冬処理(低温処理)し、その後期に、5℃の低温条件でバスアミドを7日間および30日間処理し、処理後水洗した後、17℃で菌核の発芽を調査した。被覆はアルミホイル被覆。 |
- 薬害
低温時は、バスアミドの分解及びMITCガスの揮散に時間を要し、薬害消失までの期間が長くなりますので、十分余裕のある設計をしてください。播種または定植前に必ず発芽テストを行い、安全を確かめてください。
- 安全性
MITCガスの揮散が緩慢なため、比較的ガスを気にせず作業ができます。施設内では窓は必ず開放してください。
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施肥設計で注意することはありますか? |
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- 生育が旺盛になることにより問題が生じる作物では窒素肥料を2割程度減らす必要があります。葉たばこなど、窒素過多で品質が低下する作物では注意が必要です。室内試験では、バスアミド20kg使用すると窒素2kg相当分増加することが確認されています。バスアミドとクロルピクリン剤を併用する際には、窒素減肥についてとくにご注意ください。
【バスアミド処理土の窒素量の増加】 |
バスアミド(200mg/L)を処理被覆し、1ヵ月後に窒素量を分析 |
土壌 |
処理区 |
土壌中の成分量mg/L ()内は増加量 |
アンモニア態窒素 |
硝酸態窒素 |
亜硝酸態窒素 |
壌土 |
処理 |
27.6(+19.6) |
10.9(+6.4) |
1.0(-0.1) |
無処理 |
8.0 |
4.5 |
1.1 |
壌土
(殺菌土) |
処理 |
36.8(+16.2) |
6.3(+1.1) |
1.1(-0.1) |
無処理 |
20.6 |
5.2 |
1.2 |
砂土 |
処理 |
51.3(+20.4) |
12.4(-3.1) |
1.7(-0.3) |
無処理 |
30.9 |
15.5 |
2.0 |
アンモニア態、硝酸態、亜硝酸態窒素をあわせて、10a当りバスアミド20kg処理で約2kgの増加となった。 |
- 硝酸化成菌への影響
バスアミドは土壌中のアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変える働きをする細菌を減少させます。その作用は、完全滅菌した場合やクロルピクリンを使用した場合より少ないことが確認されています。
【バスアミド処理による硝化抑制(ポット試験)】 |
処理区:バスアミド200mg/L、クロルピクリン200μl/L、オートクレーブ3回。処理10日後被服除去ガス抜き、処理21日後施肥。作物は植えていない状態。 |
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Y軸目盛は乾土100g当りの各態窒素量(mg)
X軸目盛は処理後経過日数 |
- 施肥のタイミング
窒素、リン酸、カリ等の肥料は2回目のガス抜き時に施用してください。
ガス抜き後の施肥が困難な場合はバスアミドとの同時施用も可能ですが、その場合、アンモニア態窒素を含まない窒素肥料をご使用ください。
MITCはアンモニアと反応し不活性化するのでバスアミドと硫安などとの同時施用は避けてください。
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隣接作物にはどのような注意が必要ですか? |
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- 施設の場合
同一施設内に作物がある場合は使用できません。
連棟ハウスをビニール等で仕切っても薬害が発生するおそれがありますので、このような使用方法も決して行わないでください。
- 露地の場合
バスアミド処理時の飛散をご注意ください。
薬剤が飛散して他の作物にかかった場合は薬害が起きる恐れがあります。風の強いときはとくに注意してください。
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効果が不十分になりやすく注意が必要な作物/対象がありますか? |
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作物 |
病害虫 |
注意点・効果を高める使用方法など |
メロン・すいか |
黒点根腐病 |
効果が不十分になりやすいので、黒点根腐病の発生が懸念される場合はクロルピクリン剤を併用するか、太陽熱消毒をおこなってください。 |
うり類・なす・トマト・いちご |
センチュウ |
栽培期間が長い場合やセンチュウ密度が高い場合は効果不足によりセンチュウ被害が見られることがありますので、D−D剤やセンチュウ防除用の粒剤(ネマキック粒剤など)を併用してください。 |
なす科(トマト・なす・ししとうなど) |
青枯病 |
青枯病は細菌による病害で、土壌深くにまで病原菌が生息しています。良い結果を得るためには、できるだけ深くまでバスアミドを混和する必要があります。
なす科野菜(なす、トマト、ししとうなど)の場合、本剤の処理に加えて、太陽熱消毒を併用すると効果的です。また、抵抗性台木を使用することも重要です。
トマト・なすでは、高薬量(60kg/10a)処理をおすすめします。 |
たばこ |
立枯病 |
立枯病は細菌による病害で、土壌深くにまで病原菌が生息しています。前年発病が認められた圃場では、収穫後できるだけ速やかに残幹を圃場から出すなど、病原菌の密度を高めないなどの耕種的防除もおこなってください。
良い結果を得るためには、できるだけ深くまでバスアミドを混和する必要があります。
登録の範囲内で多目の薬量を使用し、混和の際は鋤耕とロータリー耕を組み合わせるなど、より深層まで薬剤の効果が到達するような工夫が必要です。また、処理後被覆をおこなうとより効果的です。 |
しょうが |
根茎腐敗病 |
種しょうがによる病気の持込を避けるため、必ず無病の種しょうがを用いてください。バスアミド散布・混和後に必ず被覆をおこなってください。また、定植前や生育期にリドミル剤の併用をおすすめします。
土壌消毒をおこなっても、圃場外から病原菌の流れ込みにより発病することもありますので、雨水などの圃場内への流れ込み等にもご注意ください。 |
あぶらな科野菜 |
根こぶ病 |
バスアミドで土壌消毒をおこなっても、圃場外から病原菌の流れ込みにより発病することもありますので、雨水などの圃場内への流れ込みなどにもご注意ください。
効果の安定のために、根こぶ病防除剤(ネビジン、フロンサイドなど)の併用をおすすめします。 |
ねぎ、たまねぎ |
黒腐菌核病 |
通常の処理量(30kg/10a)では効果が不足することがありますので、病気の多い所は多目の薬量(30〜60kg/10a)での処理をおすすめします。 |
各作物共通 |
フザリウム菌およびバーティシリウム菌による病害() |
前作残渣をていねいに取り除くなど、環境の改善をおこなってください。土壌深部まで病原菌が生息していますので、多目の薬量を使用し、薬剤が深層に到達するようできるだけ深く混和する必要があります。また、効果を確実にするため、混和後の被覆をおこなってください。太陽熱消毒を併用するなど、他の防除法と組み合わせるとよい効果が期待できます。 |
フザリウム菌による病害 |
かぶ:萎黄病
だいこん:萎黄病
こまつな:萎黄病
しろな:萎黄病
きゅうり:つる割病
メロン:つる割病
かぼちゃ:フザリウム立枯病
すいか:つる割病
トマト、ミニトマト:萎凋病 |
いちご:萎黄病
やまのいも:褐色腐敗病
さといも:乾腐病
セルリー:萎黄病
ほうれんそう:萎凋病
しゅんぎく:萎凋病
花卉類:球根腐敗病、萎凋病
ストック:萎凋病
はぼたん:萎黄病 |
バーティシリウム菌による病害 |
キャベツ:バーティシリウム萎凋病
はくさい:黄化病
かぶ:バーティシリウム黒点病
だいこん:バーティシリウム黒点病
メロン:半身萎凋病 |
なす:半身萎凋病
いちご:萎凋病
花卉類:半身萎凋病
アイスランドポピー:萎縮病 |
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薬害の出やすい作物/出にくい作物はありますか? |
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- 作物によってとくに差はありませんが、一般に定植する作物は薬害症状として生育遅延が主体であるのに対して、播種する作物は発芽障害が主体となります。
- 注意が必要な作物
地下部を収穫する作物は、地上部に薬害症状が現れていなくても、地下部に薬害が発生し、収穫時初めて薬害に気が付くことがあります。
とくに、根菜類(だいこん、にんじんなど)では岐根、かんしょではいもの形状が悪くなるなどの薬害が発生することがありますので、注意が必要です。
地下部を収穫する作物は、薬剤処理後植付けまでの期間を十分に取るとともに、ていねいにガス抜きをおこなうなど薬害が出ないよう十分に注意してください。
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効きにくい雑草はありますか? |
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- 気温による除草効果への影響
一般に低温時は除草効果が高く、気温が高くなるに従って除草効果が不安定になります。
高温時はMITCが速やかにガス化し、気中に揮散するので除草効果が不十分になる傾向があります。高温時の除草効果を高めるには、バスアミド処理後速やかにていねいに被覆をおこなうことが重要です。被覆資材はできるだけ厚めのものが望ましく、ガスバリア性の高い資材ほど効果的です。
低温時はバスアミドの分解及びMITCの拡散がゆっくりおこなわれるので、雑草種子がMITCに長時間接触することになり、高い除草効果が期待できます。また、地温10℃以下では被覆がない状況でも比較的安定した除草効果が認められます。
- 雑草種子の状態と除草効果
雑草種子が休眠状態の場合、バスアミドの除草効果は低くなります。反対に種子が吸水し、発芽状態にある場合は高い効果が得られます。バスアミド処理前にあらかじめ圃場の土壌水分を雑草の発芽に適した状態にしておくことが、除草効果を高めるポイントです。
- 被覆と除草効果
除草効果を確実なものにするためには、雑草種子をできるだけ長くバスアミドの活性成分(MITC)に被爆させることが重要です。
そのためにはバスアミド処理後、表土を被覆する必要があります。
とくに高温時は短期間にMITCが揮散するので、ガスバリア性の高い資材で被覆することをおすすめします。
秋冬期の地温の低い時期では、MITCの揮散が緩漫なため、被覆と無被覆での効果差が少なくなります。
- 薬量及び被爆期間が効果に及ぼす影響
雑草は被爆期間が短いと高薬量でも発芽能力を維持しますが、被爆期間が長い場合は低薬量でも発芽能力を失います。除草効果を高めるには、被爆期間が長くなるように処理方法を工夫する必要があります。
雑草名 |
各被爆日数における発芽阻止最低量 |
1日 |
2日 |
4日 |
8日 |
メヒシバ |
>20kg |
>20kg |
10kg |
5kg |
スベリヒユ |
>20 |
20 |
5 |
5 |
イヌビユ |
>20 |
20 |
10 |
5 |
ブタクサ |
>20 |
5 |
2.5 |
2.5 |
シロザ |
>20 |
20 |
10 |
5 |
アカザ |
>20 |
20 |
10 |
5 |
バスアミドを所定量処理した密閉容器に、雑草種子を入れ、所定日数後に取り出し、ポットに播種し70日後の発芽を調査。 |
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よい効果を得るためにはどのような方法がありますか? |
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- 基本を大切に
バスアミドの効果をより確実にするためには、基本的な作業を確実におこなうことが大切です。
土壌病害・センチュウに対して高い効果を得るには薬剤を均一に深く混和することが重要です。また、有効成分を土壌中に長く閉じ込め、消毒効果を高めるために被覆をおこなってください。高温時にはできるだけガスバリア性の高い被覆資材を使用してください。
さらにガス抜き時には、混和時より深くガス抜きをおこなわないように注意し、未消毒の土壌を作土内に持ち込まないような工夫が必要です。
- 栽培環境の改善
圃場の栽培環境の改善は薬剤による土壌消毒と同じくらい重要です。具体的には、前作の残渣の除去、良質な堆肥・有機質肥料の施用や無病苗の使用、また抵抗性品種の導入や抵抗性台木の利用、さらに輪作や対抗植物の利用などにより土壌病原菌やセンチュウの密度を低下させることが重要です。
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太陽熱消毒併用 |
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- なす科の青枯病やいちごの萎黄病・炭疽病など防除が困難な病害やセンチュウ防除に安定した効果が期待できます。夏場に施設が空く作物に適しています。薬剤の効果と温熱の効果の両方が働きます。多量の水を圃場に潅水するので、有効成分も深層まで届き、通常処理では効果が不十分になりやすい対象にも高い効果が期待できます。石灰窒素を併用することにより効果が安定します。
- 土壌の整地
- 均一散布
- ロータリー混和(2回)
- 小畦立
- 潅水チューブの設置
- ビニール被覆
- 湛水(うねの肩まで十分に湛水します)
- 密閉(20日以上ハウスを密閉します)
- ガス抜き
- 施肥・畦立
- 植付
- 作業時の注意
夏季高温時の作業となるため、できるだけ早朝の涼しい時間帯に作業が終了するように作業計画を立ててください。また、土壌水分が多いと作業中にMITCガスが発生してきますので、土壌をできるだけ乾燥させてください。
- 熱効率を高めるため、必ず小畦を立ててください。また、圃場より水が流出しないようにし、暗渠は必ず閉めてください。
排水のよい圃場や地下水位の高い圃場ではとくに注意してください。圃場の水が完全になくなるまで暗渠の出口は開けないでください。
- 湛水後は自然落水とし、再湛水はしないでください。
- 処理後ハウスは密閉して、最低30日は放置してください。
- 太陽熱を併用すると作物の吸肥力が増大するので、土壌診断を行い、施肥量を加減してください。
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表層処理 |
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- たまねぎの苗木の除草に効果的な方法です。薬剤を播種床の表層に処理し、表層部のみをガス抜きすることで、雑草が発芽してくる土壌表層部を集中的に消毒します。深層部までの混和作業が省け、また処理から播種までの期間が短いので作業性が向上します。
- 苗床表層処理(使用時期4月〜10月)
・・・苗床の雑草防除が主目的の場合
- 土壌の整地
- 施肥・畝立て
- 均一散布
- レーキで混和
- 散水
- 表土を被ふく
- レーキでガス抜き(最低2回)
- 播種
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センチュウ剤併用処理 |
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センチュウによる被害が激しい場合、バスアミドとD−D剤や粒状センチュウ防除剤(ネマキック粒剤など)を組み合わせることにより高い効果が期待できます。
バスアミドの併用によりセンチュウ防除効果のみならず、作物の品質、収穫も大幅に改善された事例もあります。
また、センチュウ密度を下げ、土壌病害の感染経路を立つことにより、土壌病害の発生を減らす効果も期待できます。 |
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【バスアミドとD−D剤の組み合わせによるだいこんのセンチュウ防除】 |
D−D剤とバスアミド微粒剤の薬量と防除効果(無被覆) |
処理薬量
(10a当たり) |
キタネグサレセンチュウ数
(土壌50g中) |
だいこん被害度 |
バスアミド(kg) |
D−D(g) |
処理前 |
収穫後 |
ネグサレ指数 |
0 |
0 |
49.7 |
38.0 |
62.8 |
0 |
15 |
49.7 |
9.0 |
36.6 |
0 |
30 |
49.7 |
4.3 |
33.5 |
0 |
50 |
49.7 |
1.0 |
22.7 |
5 |
0 |
65.7 |
3.7 |
37.2 |
5 |
15 |
65.7 |
1.3 |
18.3 |
5 |
30 |
65.7 |
0.7 |
11.8 |
10 |
0 |
61.3 |
8.7 |
46.5 |
10 |
15 |
61.3 |
0.0 |
3.8 |
10 |
30 |
61.3 |
0.0 |
1.3 |
20 |
0 |
62.3 |
0.0 |
4.0 |
20 |
15 |
62.3 |
0.0 |
0.6 |
20 |
30 |
62.3 |
0.0 |
0.0 |
|
(注)被害度指数は被害程度を0〜4の5段階で調査し、指数算出式で計算した。 |
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【収穫だいこんの被害】 |
処理区 |
被害株率(%) |
被害度指数 |
バスアミド微粒剤(15kg/10a) |
85.3 |
37.5 |
D−D(15L/10a) |
44.4 |
12.4 |
D−D(50L/10a) |
28.2 |
7.3 |
バスアミド15kg+D−D15L |
23.1 |
6.1 |
無処理 |
91.6 |
41.6 |
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石灰窒素併用処理 |
|
バスアミドを使用する際に、同時に石灰窒素を10a当たり60kg〜100kg程度併用することで、除草効果やセンチュウおよび各種土壌病害に対する効果の向上が期待できます。
とくに、ねぎやにんにくの除草やセンチュウ防除、あぶらな科の根こぶ病、萎黄病、きゅうりの苗立枯病(Pythium菌)防除などでよい結果が得られています。 |
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【使用例】 |
作物 |
対象 |
ねぎ、にんにく |
雑草、センチュウ |
キャベツ、はくさい |
根こぶ病 |
だいこん |
萎黄病 |
きゅうり |
苗立枯病 |
いちご |
炭疽病、センチュウ |
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- 石灰窒素は肥料成分として働きますので、施肥設計に注意してください。
- 高pH土壌で石灰窒素を併用した場合、薬害消失までの期間が長くなるおそれがあります。
- 石灰窒素は飛散した場合、とくに稲に激しい薬害がでるので注意してください。
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還元消毒併用処理 |
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【土壌還元消毒法】
土壌中にふすまや米ぬかを大量(1〜2t/10e)に投入、混和し、湛水状態を保つことで土壌を還元して消毒をおこなう方法。
バスアミドと米ぬかやふすまを同時処理した場合、還元状態に達するまでにやや期間を要しますが、酸化還元電位を測定した結果からは十分に還元状態になることが確認されています。
同時(または併用)処理により還元消毒効果とバスアミドの消毒効果の両方が期待されます。 |
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クロルピクリン剤体系処理 |
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うり科の黒点根腐病やなす科の青枯病などバスアミド単剤では効果が不十分になりやすい対象にはバスアミド処理ガス抜き後にクロルピクリン剤を処理することで効果の安定をはかれます。
また、こんにゃくの根腐病が多発する場面でクロルピクリン剤とバスアミドの体系使用で高い効果が得られてます。 |
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【使用例】 |
作物/対象 |
使用方法 |
うり科/黒点根腐病
なす科/青枯病 |
バスアミドまたはクロルピクリンいずれかをまず処理し、ガス抜き後にもう一方の剤を処理する。 |
こんにゃく |
秋冬期にバスアミドを処理し、春先にクロルピクリンを処理する。 |
|
体系の場合は必ず、クロルピクリン剤またはバスアミドの薬害が消失してからもう一方の薬剤を処理してください。 |
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|
クロルピクリン剤との隔年交互使用 |
|
バスアミドは土壌の深層部への消毒が不十分になりやすく、またクロルピクリン剤の深層処理は表層部の消毒が不十分になる傾向があります。土層の表層から深部まで生息する病原菌に対して、バスアミドとクロルピクリン剤を隔年交互に使用することにより、全域の消毒が期待できます。また、一方の薬剤だけでは効果が不足する病害の蔓延防止も期待できます。 |
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作物 |
対象 |
推奨使用方法 |
なす、トマト、ミニトマト、とうがらし類、いちご |
青枯病、萎凋病、萎黄病 |
太陽熱消毒併用
還元消毒併用 |
たまねぎ(苗床) |
雑草 |
表層処理 |
なす、トマト、ミニトマト、うり類、いちご |
センチュウと土壌病害の同時防除 |
センチュウ剤併用 |
ねぎ、こねぎ、にんにく、あぶらな科作物 |
雑草、根こぶ病 |
石灰窒素併用 |
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センチュウへの効果はどれぐらいありますか? |
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バスアミド(MITC)のセンチュウへの基礎的な活性は高いことが確かめられています。しかし、土壌深層部のセンチュウに対して薬剤の効果が届かないことおよび残渣中のセンチュウに対する効果が劣ることなどから残渣がなく、センチュウ専用のくん蒸剤に較べて効果は劣ります。センチュウ被害が予想される場合は、バスアミドとセンチュウ防除剤を組み合わせてご使用ください。
バスアミドとD−D剤の組み合わせは、バスアミドが土壌表層部のセンチュウに効果が高いことから、D−D剤の欠点である表層部の効果不足を補うことで、より高い効果が期待できます。
被爆日数 |
処理量 |
幼虫接種における検出幼虫数
/土壌20g |
卵塊接種における孵化幼虫数
/1日/10卵塊 |
1 |
40kg/10a |
0.0 |
0.0 |
20 |
0.0 |
0.0 |
10 |
0.0 |
0.0 |
5 |
0.0 |
0.0 |
0 |
28.0 |
45.5 |
2 |
20kg/10a |
0.0 |
0.0 |
10 |
0.0 |
0.0 |
5 |
0.0 |
0.0 |
2.5 |
0.0 |
0.0 |
1.25 |
21.5 |
44.0 |
サツマイモネコブセンチュウ対象。幼虫に対する効果は、幼虫接種土にバスアミドを処理し、一定日数被爆させ、生存幼虫数を調査。卵塊に対する効果は卵塊をナイロンモスリンにつつみ、バスアミド処理土に一定日数被爆させた後に取り出し、孵化・脱出幼虫数を調査した。 |
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効果的な使用方法 |
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センチュウ剤併用 |
: |
|
を参照 |
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太陽熱消毒 |
: |
|
を参照 |
|
混和深度 |
: |
|
を参照 |
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効果不足の原因にはどんなことがありますか? |
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- 薬量・混和の不十分
十分な効果を発揮するには、適用内容に沿った使用薬量・方法をおこなうことが重要です。バスアミドを均一に散布し、混和の際はできるだけ深く、丁寧に混和することが必要です。不均一な散布や混和は効果不足の原因になるばかりではなく、薬害の原因にもなりますので十分な注意が必要です。
- 被覆の有無
被覆をおこなわない場合は十分な消毒効果が発揮されず、効果不足を起こすことがあります。とくに、夏季高温時には活性成分のMITCが土壌表面からすぐに揮散するので、雑草に対して効果不足になります。確実な効果を出すには必ず被覆を行うようにしてください。
- 前作残渣の放置
圃場内に残された前作の羅病残渣を適切に処理していない場合、病原菌やセンチュウなどが組織中に残り、土壌消毒の効果は半減します。前作の残渣は栽培終了後できるだけ速やかにていねいに除去してください。除去が困難な場合は、組織を十分に腐熟させてください。また、雑草についても同様に前作に発生した雑草をそのまま混和せず、除草剤を散布するなどして雑草密度を減少させておいてください。
- 汚染土壌の持込・再汚染
せっかく土壌消毒をおこなっても、病気やセンチュウに汚染された土壌や資材を持ち込んだり、消毒が十分に行き届いていない下層の土壌を処理土に混ぜたりすると効果が下がったり、かえって病害が激しくなるおそれがありますのでご注意ください。
- 羅病(汚染)苗の持ち込み
病害虫やセンチュウ羅病(汚染)苗に対しては土壌消毒の効果はまったくありません。それどころか、羅病(汚染)苗が感染源となって圃場全体に広がるおそれがありますので、必ず病気やセンチュウに冒された苗を持ち込まないようご注意ください。
- 環境の悪化
圃場外から汚染された土壌や雨水が流れ込むような環境の場合は、土壌消毒をおこなっても十分な効果は発揮されません。
また、河川などから潅水をおこなう場合にも、他の圃場から流れ込んだ病原菌を持ち込むおそれがありますのでご注意ください。
作物の栽培に不適な栽培環境(日照、気温、温度、施肥量、微量要素の欠乏や過剰など)で、作物にストレスがかかると作物の持つ抵抗性が低下し、病気に冒されやすくなります。好適な栽培環境を整えることが重要です。
- 羅病性の品種の栽培
病害やセンチュウに抵抗性をもたない品種(または台木)を栽培すると、発病が激しくなるおそれがありますので、羅病性の品種の栽培はできるだけ避け、抵抗性品種を作付してください。
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薬害にはどんな原因がありますか? |
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- 水分条件
バスアミド処理時に土壌水分が不足するとバスアミドの分解が遅れ、薬害の原因となります。また、バスアミド処理後圃場が連続的に過湿状態の場合もバスアミドの分解及びMITCの拡散が悪くなり、薬害の原因となります。
- 混和
混和が不十分な場合、局部的に薬害の起こる恐れがあります。混和が不十分な場合は効果面でもマイナスとなりますので、ていねいに混和してください。
- 薬害消失期間
十分な薬害消失期間を確保せずに播種又は定植を行うと薬害発生原因となりますのでご注意ください。
地温により薬害消失までの期間は異なります。地温15℃以上の場合は通常バスアミド処理後3週間程度で播種または定植ができます(作物により使用基準がありますのでそちらを優先してください)。地温10℃から15℃では、通常1ヵ月程度の薬害消失期間を必要とします。
- ガス抜き
播種または定植前にガス抜き(土壌混和)をおこなう必要があります。最低2回のガス抜きをおこなってください。施肥や畝立て作業と兼用することは問題ありません。
- 薬害病状
処理条件
薬害甚:MITC90ppm(バスアミド30kg処理直後相当)
薬害強:MITC30ppm(バスアミド10kg処理直後相当)
はくさいはMITC200ppm以上の条件
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キャベツ薬害甚(左) |
きゅうり薬害強(左) |
トマト薬害甚(左) |
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ししとう薬害強(左) |
キャベツ左から無処理、薬害強、薬害甚 |
はくさい播種11日後
薬害甚(上)無処理(下) |
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安全に使用するためとくに注意する点は何ですか? |
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- 作業時の注意
作業時の服装は、不浸透性手袋、長靴、長ズボン、長袖の作業着、吸収缶付防護マスク(活性炭入り)を着用してください。ズボンの裾は長靴から出してください。
作業に際しては、風向きに注意して他の作物や、圃場外に薬剤が飛散しないように注意してください。
施設内で使用する場合は、作業中は施設を開放してください。夏季高温時に使用する際は、とくに換気に注意し、できるだけ早朝に作業を開始し、気温の高くなる前に作業が終了するよう心がけてください。
連棟ハウスで使用する場合は、小面積ごとに散布から混和、散水、被覆までの作業を完結させてください。
作業後はかならずすぐ手足を洗い、体を洗い流すとともに衣服を着替えてください。また、作業当日はビール、お酒などアルコールは飲まないでください。
公益財団法人日本中毒情報センター |
大阪(365日、24時間対応) |
072-727-2499 |
つくば(365日、24時間対応) |
029-852-9999 |
- 近隣民家への注意
圃場が住宅と隣接している場合は使用しないでください。また、近くに住宅や畜舎などがある場合は、薬剤が飛散しないように注意するとともに、ガスが揮散しないように処理圃場は被覆をおこなってください。
- くん蒸中立ち入り禁止
くん蒸中の施設には立ち入りしないように注意してください。やむを得ず施設に入る場合は、事前に施設を開放して十分換気をしてから入室してください。
- ガス抜き時の施設の開放
ガス抜き時に施設に入る場合も、事前に施設を開放して十分換気をしてから入室してください。
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作業中に気分が悪くなったらどうすればよいですか? |
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速やかに施設外または処理圃場より風上に移動して静養してください。病状が続くようであれば、医師の手当てを受けてください。 |
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作業後に気分が悪くなったらどうすればよいですか? |
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新鮮な空気がとおる場所で安静にしてください。病状が続くようであれば、医師の手当てを受けてください。 |
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作業後にかゆみが生じたらどうすればよいですか? |
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副腎皮質ホルモンなどの軟膏を塗ると病状が改善します。病状が続くようであれば、医師の手当てを受けてください。 |
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オゾン層に影響がありますか? |
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バスアミドはオゾン層に影響を与えるような物質を含んでいません。オゾン層に影響がありませんので安心してご利用いただけます。 |
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臭化メチルの代わりに使用できますか? |
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バスアミドは臭化メチルの代替薬剤として多くの場面でご利用いただいています。しかし、臭化メチルとは性質が異なりますので、すべての場面で代替できるわけではありません。代替場面で初めてご使用の際は、関係指導機関の指導を受けてください。
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バスアミドの粒子サイズは大きく(細かく)なりませんか? |
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粒子の大きさは分解速度や効果と関係しています。バスアミド微粒剤はもっとも分解しやすく、土壌中に均一に分散しやすい粒子サイズに作られています。
バスアミド散布に際し、粒子が細かく撒きづらいなどのご指摘をいただくことがあります。弊社でもサイズを大きくする研究をしておりますが、大きくすると薬害が強くなり効果が下がる傾向があります。
現在の粒子サイズを変えることは上記のような理由で困難な状況です。
適切な散布器具(Aを参照)を使用することにより、簡便に均一な散布が可能になります。これらの散布器具をご利用下さい。 |
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